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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
54/161

54『桜の季節・2』


やくもあやかし物語


54『桜の季節・2』     





 擬人化しておきました(^^♪



 カチャンと切れる音まで弾んでいる、交換手さんも春が好きなんだろうか。


 擬人化の意味は見当が付いたし、家を出ると直ぐに分かった。


 お向かいの庭、桜が植わっていたところに女の子が立っている。桜色のワンピース着てホワホワと。


 髪も桜色のボブカット、ネコミミかと思ったら、先っぽの方に切れ込みがあって――あ、サクラミミなんだ――


 人を見つめたりはしないんだけど、擬人化された桜なんだと思うとヘッチャラだ。見つめても視線が合ったりしないのも気楽だ。目が合うと擬人化さんでもドギマギするだろう。よく見ると、ワンピースの所々に半ば3Dになった桜の花が見える。ワンピースも桜色なのでボンヤリ見ていたのでは気づかないんだろうけど、桜の花は生命力があるって言うのかホワホワしているので分かるんだ。口が微かに開いて何か言いそうなのも嬉しい。


 通学路のあちこちに擬人化桜。


 みんな同じワンピースを着ている。髪はショートの子もいれば、ロングの子もいる。中には初音ミクかというくらいの長さの子も居る。ロングの子たちは風も吹いていないのにホワホワと髪をそよがせている。擬人化さんそのものにエネルギーがあって、そのエネルギーをホワホワ発散させるようなそよぎかた。ときどき髪のあちこちが煌めく、煌めくの擬音はキラキラなんだろうけど、なんというか、穏やかにホワホワ煌めく。


 オーーー!


 坂道まで行くと、身の丈三メートルはあろうかという擬人化桜。そう言えば、ここいらの桜の木は大きかった。きっと古い桜なんだろうけど、オバサンやオバアサンにはなっていない。みんな女の子。わたしだって女の子なんだけどレベルが違う。ほら、たまに居るでしょ? すっごく内側から輝いてるみたいな子。例えば、アイドルの子がキラキラしてるみたいな。うん、そんな感じ。


 学校が見えるところまで来ると、正門脇に大魔神ぐらいの背丈の子。すごい迫力! 近づくと良い香り!


 ドスン!


 上ばかり見ていたのでぶつかってしまった。


「ごめんなさい」


 尻餅付いたままで謝ると、擬人化ではない女の子、あ……!?


 愛さん!


 ほら、溺れた生徒を助けて亡くなった校長先生を祈念して建てられた銅像の女の子。


「あ、小泉さん」


「ごめんなさい、ボンヤリしてたから」


「ううん、わたしも染井さんに見惚れてたから」


「染井さん?」


「この桜。学校で一番古い桜で、ソメイヨシノだから染井さんて呼んでるの。まだ三分咲きだけどオーラがとても美しくって、ついね(o^―^o)」


 照れたように微笑む愛さん。この微笑みは立派な女の子だ。ほんの一時でも女装の校長先生と思ってしまったのが申し訳ない。


 愛さんと並んで染井さんに見惚れる。


 見上げた首が痛くなってきたころに「早く教室に行きなさい!」と門番の先生に叱られる。「すみません!」と謝ると、朝礼開始一分前だ。十分以上染井さんを見上げていたんだ。昇降口に急ぐと、愛さんが、定位置に向かいながら手を振ってくれていた。先生たちには愛さんは見えないんだろう。


 下校時も擬人化さんたちを見ながら帰った。


 昼間のぽかぽか陽気で、擬人化さんたちの微笑みは大きくなって、中には小さく歌っているのもいた。


 そして気が付いた。大きさとかヘアースタイルとかは違うけど、顔がみんな同じだ。アニメの『五等分の花嫁』を連想した。


 そうなんだ、うちの近所の桜は、学校の染井さんを含めて、みんな同じ顔なんだ。


『それは、みんなクローンですから』


 交換手さんは――そんなのあたりまえ――という感じ。


 調べてみて分かった。人工的に植えられた桜の大半がソメイヨシノなんだ。ソメイヨシノは挿し木によって増えていくので、元々は一本の桜の木だったんだよ。


 まだ二三分咲きで、こんな具合。満開になったらいったいどうなっちゃうんだろうねえ……。




 


☆ 主な登場人物

◦やくも        一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

◦お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

◦お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介

◦お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

◦小出先生      図書部の先生

◦杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き

◦小桜さん       図書委員仲間

◦あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜)



 


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