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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
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05『マップメジャー・1』


やくも・05『マップメジャー・1』   





 今日も図書委員の仕事だよ。



 図書委員の仕事というのは放課後の図書室当番。


 中学の図書室というのは司書の先生が居ない。


 いちおう図書部というか図書係の先生がいて、いちおう責任者なんだけど、管理責任ということだけでカウンター業務とかは図書委員が交代で当番に当たっている。


 男女二人一組の当番なんだけど、女子の当番が三日連続で休んでいる。


 それで、繰上りだかなんだか分からないんだけど「小泉さん、わるいけどお願い」ということで頼まれてしまっているんだ。


 転校して来て間がないわたしはアドバンテージが低くって、断ることはおろか、嫌な顔もできない。



「今日もよろしくね」


 相棒の男子にはあいさつしておく。転校生は過不足のない笑顔と挨拶が大事なんだ。ほどよく、付かず離れずを心がける。


「今日もよろしく」に「ね」を付けて、さりげに距離感を詰めている。精一杯の工夫。「今日もよろ~」とか、前の学校じゃ言ってたけど、さすがにねえ……。


 男子は杉野君という。


 男子はシフトが違って、杉野君とは最初の一日だけいっしょのはずだった。


 

 暖房が故障しているせいだろうか、放課後の利用者は少ない。


 文芸部の子が三人本を借りていったら開店休業状態。


 杉野君はカウンターに並んでラノベを読んでいる。


 規則では、図書係はカウンターに座っていなければならない。でも、閉館まで杉野君と並んで座っているのは気づまりだ。


 図書室のマニュアルを読んでみる……やったあ(^▽^)/ 図書係は適宜図書室内の見回りをする云々……とある。


「ちょっと見回りしてくるね」


「あ、うん……」


 ラノベに集中して杉野君は生返事。


 ゆっくりと見回った。


 奥の書架の横に八段ほどの引き出しがある。上から二つ目が少し出ていたので閉めようと手を掛ける。


 いっぱいの地図と時計みたいなのが入っているのに気付いた。


 地図は国土地理院発行の、ちょー真面目地図。お勧めのお店とか観光スポットとかは絶対載っていない、公民の授業のように退屈。その下にも種類の違う地図がありそうなので探ってみる。


 いっぱいある中に、この街の地図が目に留まる。


――けっこう広いんだ――


 通学路しか知らないので、他の地図よりは興味が出てくる。


――でも、これはなんだろう?――


 時計みたいなのが気になる。



「ね、これなんだろう?」



 杉野君に示した。


「わ!?」


 よっぽどラノベに集中していたのか、ビックリさせてしまった。


「あ、ごめん。おどかしちゃったね」


「ううん、いいよ。えと、近くで見せてくれる」


 カウンターの所まで持って行って、杉野君の前に置く。


「ああ、マップメジャーだよ」


「マップメジャー?」


「下の方に車が付いてるだろ、これで地図の上をなぞるんだ道路とかね。するとメーターに実際の距離が出るんだよ」


「杉野君、詳しい!」


「あ、ああ、実はいま読んでるラノベに出てくるんだ」


 ラノベのページをめくって挿絵を見せてくれる。女の子の手に同じマップメジャーが握られている。


 ちゃんとネタバラシをするところは、ちょっと好感。


 使い方までは詳しくないようで、二人であーだこーだいじくる。


 最初に地図の縮尺を入力することが分かって、けっこう便利なものだと分かる。


 地図に載っている学校の敷地を計ってみる。正確に間口150メートルと出てくる。


 次に、例の崖道を計ってみる。


 なんと108メートルと出てきた。てっきり100メートルと思っていたのに。



 無意識に、障害となる道を短く思ってしまったんだろうか?



 だとしたら、苦難を小さく見るわたしって、ちょっと健気で前向きってことになる……かなあ?


 

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