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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
42/161

42『妹ニクを読み返す』


やくもあやかし物語・42


『妹ニクを読み返す』     





 ―― 今夜は早く寝た方がいいですよ ――



 妹ニクの第一巻を手に取ったところで黒電話が鳴った。受話器を取ったら交換手さんが、そう言って切れてしまった。


 アノマロカリスのお腹から妹ニクの女子キャラが出てきて、久々に妹ニクの文庫を読んでみようと思ったのだ。


「せっかく読む気になってんのに」


 読む気満々で、ポテチの袋も開けてしまっていたので、交換手さんの忠告を無視して読むことにした。


 何度も読んだ妹ニクなので、二時間もあれば最初の大団円まではいけるだろう。太一が妹の幸子を庇ってお父さんにフルボッコにされる。そいで、幸子が何年かぶりで「あ、ありがとう」ってお礼を言うんだ。


 ここ大好き。


 たとえ肉親でも、言葉にしないと気持ちなんて伝わらない。


 恥ずかしがりながらでも、むちゃくちゃ抵抗があっても、たとえ蚊の鳴くような声でも口にするのが大事なんだ。


 ここを読むと、とても気持ちが暖かくなる。


 集中して読んでいると、妹ニクフィギュアたちが近づいてきている。


 最初は本立ての前に一列に並べていたのが、気が付いたら焚火を囲むように半円形になって、いっしょに文庫を読んでいる。「あ、ありがとう」のところでは、幸子フィギュアが真っ赤になって、他のキャラがニコニコしている……あれ? クミンがいないぞ。


 ガチャリ


 ドアの開く音がした。振り返ると、等身大になったクミンが立っている。むろんミルミルのコスプレ。


「おめーな、文庫読んで追体験なんかしてんじゃねーよ」


「な、なによ」


「メモだよ、メモ」


 ミルミルが魔法少女のロッドを振ると、目の前にメモの文字が浮かんだ。


―― お金は払ってある、受け取りにいくといいよ ――


「ずっと子ネコは待ってんだ、行ってやれよ」


「だって、何年も前だよ」


「んなのかんけーねーよ、お金は払われってから、行ってやれえー!」


 音もなくジャンプすると、わたしの首を跨ぐようにして絡みついてきた。


「わ、わーっふぁ!わーっふぁ(;゜Д゜)!」


 ミルミルのお股で口と鼻を塞がれたのでフガフガとしか言えないけど、なんとか意味は通じたようだ。


 プハーーー


 窒息しそうになったところで、ミルミルが飛びのいた……と思ったら姿が消えた……と思ったら、机の上、クロエの横、フィギュアに戻って立っていた。


 ポテチを摘まんだまま突っ伏して寝てしまっていた。右の腕に涎の痕。わたしってば、自分の腕で窒息しかけていたんだ。


 ペットショップに行ってみよう……そう決心して歯を磨きに行った。




☆ 主な登場人物

•やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

•お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

•お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介

•お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

•小出先生      図書部の先生

•杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

•小桜さん      図書委員仲間


 


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