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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
34/161

34『突然の選択肢』


やくもあやかし物語


34『突然の選択肢』     





 あとはデザートというところで電話がかかってきた。



 お母さんは「ごめん」と言いながらスマホを持って店の外へ……「あ、島田君……」という一言で職場からの電話だと分かって、気持ちを引き締める。


「わるい、会社に戻らなきゃならなくなっちゃった」


「お仕事じゃ仕方ないよ。だいじょうぶだから行って(^▽^)」


 気持ちを引き締めていたので笑顔で言えた。


 お母さんは席にもどることなく、レジでお勘定済ませて行ってしまった。


「デザート、テイクアウトできますか?」


 マスターに聞くと、快くケーキ用の白い箱に入れて持たせてくれた。


「ごちそうさまでした、今度またゆっくり来ますね(o^―^o)ニコ」


 もう一回とびきりの笑顔をマスターに向けて外に出る。笑顔は、お母さんに見せてあげようと、そのつもりになっていたんだ。


 次はデザートというときには、心の中で準備していた笑顔。


 だれかに向けなきゃもったいない……うそうそ、笑顔にしてなきゃ涙が出てきそうだったから。



 血のつながりの無いのは心細い。


 あ、ダメだダメだ……これ考え出すと底なし沼になる。


 楽しいことを考えよう……と思っても、おいそれとは出てこない。


 えと……えと……



 すると、横の路地から黒猫が飛び出してきた。立ち止まると、白猫が飛び出してきた。次に茶猫。


 三匹混ざったら三毛猫……前にもこういうシュチエーションあったなあ……そう思っていると、ほんとうに白黒茶の三毛猫が出てきた。


 すると、三毛猫が一歩前に出ると四匹揃って、ヒョイと立ち上がった。


「おう、やくも。ここでクイズだ」


 三毛が言う。


「白・黒・茶は、これからのお前の運命だ。どれか一つ選びな」


「あ……えと……急に言われても」


「優柔不断なやつだなあ、さっさと決めろ。せっかく出てきてやったんだからよ」


「「「そーだそーだ」」」


「なによ、いきなり出てきて」


「いきなりじゃねーよ、前もつづら折りのとこで出てきてやったじゃねーか。あんときゃ、まだ、おまえは猫の言葉が分からなかったからよ。でも、いまは分かるんだ、さっさと選んじまいな」


「「「選べ!」」」


 二本足で立っても、わたしの膝小僧くらいの背丈なんだけど、四匹揃って迫ってくると後ずさりしてしまう。



 ピシ イテ! ピシ イテ! ピシ イテ! ピシ イテ!


 四回音がしたかと思うと、猫たちの頭がポコポコポコポコと音がした。


「そこまでにしときな。次は手加減しないで食らわすよ」


 歩道の向こうにツインテールのメイドさんがパチンコを構え、左右非対称の笑顔で立っている。


「やばい、ずらかるぞ!」


 三毛の一言で、猫たちは四方に散ってしまった。


「突然の選択肢には要注意」


 バシュッ!


 パチンコ玉がすぐ横に飛んできて思わず目をつぶる。



 再び目を開けた時には、わたしは家の前に立っていた……。




☆ 主な登場人物


やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生


 


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