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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
24/161

24『体重大事件・4』


やくもあやかし物語・24


『体重大事件・4』   




 お守り石のお蔭か、妖怪メイドは付いてこなかった。



 家に帰ってお風呂掃除。


 いつもより念入りにやる。


 お爺ちゃんが町会の寄合で遅くなるってお婆ちゃんが言ったし、からだ使うことで妖怪メイドを頭から追放したかったし。


 そして……からだ使ったら少しでもダイエットになる?……あ、ちょっと頭をよぎっただけだからね、あくまで、お爺ちゃんにきれいな一番風呂に入ってもらいたいからなんだよ(^_^;)


 額に汗するくらいにお風呂掃除して、廊下のハカリに片足を載せる。


 カチャリ


 片足だけで、針が十キロを指す……グヌヌ……全身乗っかろうかと迷っていたら玄関が開く気配!


 カシャン(;^_^!


 慌てて足を下ろして玄関へ。


「おかえり、お爺ちゃん。きょうは念入りにお風呂掃除やっといたからね」


「ちょうどよかった、ホレ」


 お爺ちゃんは丈夫そうな紙袋を突き出した。


「なに?」


「田中さんからもらったんだ、プレステ5を買ったんで古いのが余ったって。やくもにあげよう」


「え、プレステ4!?」


 プレステ4は持っていたけど、引っ越しの荷造りの時に壊してしまってご無沙汰していたのだ。


「ありがとう、お爺ちゃん!」


 お守り石のご利益だろうか、さっそく部屋に戻ってプレステ4を据え付ける。お風呂の方からお爺ちゃんの鼻歌が聞こえる。陽気なお爺ちゃんは、よく鼻歌を歌ってるけど、今日はいつもより楽し気だ。わたしがむちゃくちゃ喜んだからだ。こんな喜び方、社交辞令ではできないもんね。タイミングがすごく良かった、思わずお地蔵さんの方角に手を合わせる。


 プレステ4ではゲームもするけど、DVDのプレイヤーとして使う方が多い。


 持ってるDVDとかブルーレイは欧米のが多い。日本のアニメソフトは何万円もするけど、欧米のは何千円で買える。字幕の処理とかの問題はあるんだけど、気にしなければ断然お得だ。


 でも、欧米のは普通のプレイヤーでは規格が合わなくて再生できない。そこへいくとプレステ4は欧米のソフトでも再生できる。リージョンフリーっていうらしい。棚の上に飾り物になっていたソフトから『妹が憎たらしいのには訳がある』を取り出して再生する。実に半年ぶりだ!

 メニューの中から2を選択する。幸子が太一に付き添ってもらって、初めて部活に参加するところだ。幸子は、ここで初めて玄美に出会って仲良しになる。


 コミュ力に難ありの二人が仲良くなるには部長や太一の尽力があるんだけど、お互いイキイキと罵りあえるほどの仲良しになる。いつものように膝小僧を抱えながら観る。気持ちがとても暖かくなる。


 とつぜんフリーズした。


 部長と黒美が校門に向かって、幸子と太一が手を振っているところ。


 あ、あれ(;'∀')


 中古だからかなあ……残念に思っていると、フリーズした佐伯兄妹の前にメイドさんが現れた。


 えと……幸子と玄美がアキバに行ってメイドさんに感動するのは3、いや、4だよ。


「お久しぶりです、お嬢様(o^―^o)」


 ……え、なんでメイドさん……お嬢様って? え? わたしのこと?


「そう、やくもお嬢様のことですよ! さっきは本題に入る前に走っていかれましたから(^▽^)」


 ゲ 妖怪メイド!? 


 なんだけど怖くない。アニメの通りだし(フライングしてるけど)、めちゃくちゃ可愛いし。


「お話しておきたかったんです、太ってしまったとお悩みのようですが……」


「あ、その話題はなし!」


 ワイパーみたいに両手を振る(^_^;)


「いいえ、真実を知っていただかなければなりません。やくもお嬢様は、お太りになられたのではなく発育されたのです」


「同じことじゃ……」


「いいえ、出るところが出て、引っ込むところが引っ込んできたんです。ほら、ごらんください」


 佐伯兄妹に変わって、リアルな体形のシルエットが出てきた。


「そちらが先月、で、こちらが現在。女性らしくなりましたでしょ、むろんお嬢様のシルエットでございますよ(⌒∇⌒)」


「え、あ、そ、そう(#0#)」


「そうです、もう十四歳でございますわよ(^▽^)/」



 そうだったんだ、親の離婚や引っ越しのドサクサで忘れていたけど、わたしってば十四歳になっていたんだ!




☆ 主な登場人物


やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生


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