146『まだひとりぼっち』
やくもあやかし物語
146『まだひとりぼっち』
……あんがい広いんだ。
ベッドと机の間の、ちょっと谷間のような床に転がっている。
いつもはね、一人用の座卓っていうかテーブルがあって、テーブルの上には、宿題とか読みかけのラノベや、ちょっとだけ残ったスナックとか。
座卓で勉強やら読書やら、ただボーっとしていたりする。
ときどき横を向くと、目の高さの机の上にチカコと御息所のコタツがあって、二人も、ボーっとしてたり、なんかしてたり。
で、ときどきのときどき、なにしてんの? とか声を掛ける。
ときどきのときどきには、わたしの座卓に移ってきて話しかけてくる。逆に、わたしが机のへりにアゴを載せて「ねえ、なにしてんの?」とか声を掛ける。
その周りには、アノマロカリスやら黒電話やら他のいろいろのフィギュアやらグッズやら、そういうのが、チョッカイ出したり出されたり。
けっこう賑やかで、ちょっと前までは「もう、うるさいなあ」と感じるほどで、部屋は狭く感じたもんですよ。
それが、みんな神保城に行っちゃって、チカコにいたっては行方不明……ううん、チカコのやつ、本当は皇女和宮だった。
正確には、和宮の左手首。
将軍様にお嫁に来る時に、左手に願掛けして――せめて、左手首だけでも青春させて欲しい――とお願いした。
ちょうど二丁目断層のところだったんで、二丁目断層が聞きいれて、百六十年ほどして、わたしのところに来た。
そのチカコも行っちゃって、わたしの部屋は、ちょっと寂しいよ。
むう
アニメの甘えん坊キャラみたく口を尖らせてみる。
なにもリアクション返ってこない。「こどもみたい」とか「あれで可愛いつもりよ」とか「アハハ(^_^;)」とか、わたしの部屋の住人は返してくれたもんだけどね……。
メイデン勲章改・Ⅱを睨んでみる。こないだも試してみたけど……今回もダメだ。わたし一人神保城には行けない。
グーーーー
おなかが鳴った。
どっこいしょ……舌切り雀のお婆さんが、つづらを背負う時みたいに掛け声かけて起き上がる。
「ええと……」
八犬伝カップ麺を漁ってみる。
まだ五個残ってる。
賞味期限は切れてないんだけど、蓋に書かれた文字が薄れて、ほとんど読めない。
仁 義 礼 智 忠 信 孝 悌
仁と義は食べたから……ま、いいや。
お湯をかけてメイデン勲章改・Ⅱをのっける。スマホのタイマーを4分に設定。
カップ麺の蓋を押えるためのフィギュアがMamazonに出ていたのを思い出す。
面白いけど、あれを考えた人は、きっと私以上に部屋を広く感じる人だったんだろうなあ……とか思う。
コンコン
あと10秒というところで、窓ガラスを叩く音がする。
こういう場合は、たいていあやかしで、めんどくさいこと持ちかけられる。
でも、この時は、ちょっとだけドキドキして窓辺によってみる。
こんにちは
窓の向こうで、口の形で挨拶してくれたのは……え、だれだっけ?
色白、黒髪の美人さん……あ、里見さんのお嬢さんだ!
いつもは、飼い犬の八房が来るので、すぐにはピンとこなかった。
それに、里見さんのお嬢さんと目を合わせるのは初めてだったしね……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子 俊徳丸 鬼の孫の手 六条の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王




