134『土星の輪から石ツブテ』
やくもあやかし物語
134『土星の輪から石ツブテ』
わたしの生活圏はめちゃめちゃ狭い。
家は三百坪もあるんだけど、ふだんの生活は自分の部屋とリビングぐらいで済んでしまう。
外に出ても、一丁目と二丁目と三丁目で済んでしまう。
一丁目が自分の家で、学校が三丁目。二丁目は、その途中で、折り返しの坂道と、その前後の道。
まあ、中学生の生活圏って、基本的に家と学校だもんね。
図書委員仲間の小桜さんや杉野は部活とかもやってるみたいで、わたしよりは世界が広いかも。
たまに、図書室の窓からグラウンド見ると、小桜さんや杉野が部活やってるのが目に入る。
二人とも、図書委員の時とは別人。元気に走ったり球を投げたりして、学校のホームページに『生徒の日常』とか『スクールライフ』の見本の写真に使えそう。
わたしは、自分の姿を写真とかに撮って愛でる趣味は無いけど、自分の部屋でくつろいでいる姿は、グラウンドの二人に負けていないと思う。それくらいの自負はある。
でも、八畳に満たない部屋でくつろいでるのと、グラウンドで元気に部活してるのとでは、次元が違って比較にならないよね。
そんなわたしが、ロケットに乗って土星に向かってる。
火星でロケットのAIが『エマージェンシ―エマージェンシー!』って叫んで、アキバからいっしょに乗ってくれていたみんなが二段目に移動。わたしも、避難しようと思ったら、ハッチが閉まってしまって、わたしだけが三段目にとり残されてしまった。
チカコと御息所はポケットにすっこんでしまっているし、アキバ子はふたを閉めてるし。ほんとに、わたし一人だよ。
「イザとなったら言ってください、空き箱の中に入れば、とりあえずアキバにはテレポできますから」
責任を感じたのか、フタをちょこっと開けてアキバ子が言う。
「う……うん」
あいまいな返事。
自分の部屋まで戻れて知らんふりしてられるならいいんだけどね、みんなが待ってる駅前広場になんか戻れないよ。
ああ、なんか、ゲロ出てきそう。
生唾呑み込んでゲロっ気を誤魔化す。
すると、耳の奥がグチュって言って、シューって音がしてきた。
鼓膜が裏返って、自分の血の流れる音が聞こえたみたいな(;'∀')。
シューーーーーシューーーーーシューーーーー
あ、これは土星の輪が回る音だ!
真空の宇宙空間で音が聞こえるってあり得ないかもしれないんだけど、ぜったいそうだ。
だって、音に合わせて土星の輪からツブテみたいなのがロケット目がけて飛んでくる。
「目をつぶらないで避けてく! 当たったら、ロケットなんかいっぱつだから!」
「避けるって……ワ!」
危ないと思ったら、ロケットが自分の体みたくツブテを避けた。
「ね、できるでしょ!」
「う、うん……」
ヒョイ ヒョイ ヒョイヒョイ ヒョイ
なんとか避けるんだけどらちが明かない。
ツブテは土星と土星の輪の遠心力で飛んでくるんだよ。
だったら、土星自体の回転を停めないとツブテは止まない!
百回くらい避けていると、土星の回転するのよりも速い力でツブテが飛んできていることに気が付いた。
思ったとたんに、土星の輪の上に犬が乗っているのに気が付いた!
犬は人間みたいに二本足で立っていて、輪の中に無尽蔵ある石ころを掴んではツブテにして投げてきているんだ。
土星の輪が回転して、向こう側に行ってしまいそうになると、反対側にテレポしてツブテを投げるって動作を繰り返している。
き、キリが無いよ……
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王




