124『アキバ上空青龍戦・2』
やくもあやかし物語
124『アキバ上空青龍戦・2』
見渡す限りの闇なんだけど、ところどころ薄ボンヤリと明るくなっているところがある。
その薄ボンヤリは、息づくようにフワフワと大きくなったり小さくなったり、明るくなったり暗くなったり。
まるで、その薄ボンヤリに命があるような感じさえする。
「青龍の夢は、まだ形にはなっていないようね」
わたしもアキバ子も薄気味悪さに息を飲むだけなんだけど、さすがは御息所。
人の夢に中に潜り込んで、人を呪い殺すだけのことはあって、平然と観察している。
「いま、不届きなこと思ってたでしょ(*`へ´*)」
「ううん、そんなことない。頼もしいって思ったんだから(^_^;)」
「あのボンヤリしてるのは、青龍の願望よ……衝動と言ってもいい。でも、まだハッキリしてないのよ。いずれ、色を持って明るく輝きだして形ある夢になっていく……でもね、青龍って名乗るぐらいだから、自分の姿かたちにはハッキリしたイメージを持っているはずよ。それを見つけて」
「見つけたら、どうなるんですか?」
「見れば、あいつも自信をもって形にするわ。夢は、人に見られて成長するものなのよ」
「なんとなく分かるような気がします。アキバもそうです。人に見てもらって、認め合ってテンション上がっていくもんですから」
「そうよね、コスプレのレイヤーさんたちって、もろ、そうだし。同人誌とかゲームとか、そうだよね」
「そう、承認欲求! それは、妖の中にもある! しっかり探して!」
「うん!」
「はい!」
「あ、あれだ!」
探せと言う割に、いちばん最初に見つけたのは御息所だ。
さすがに夢のエキスパート! 褒めてあげようかと思ったけど、御息所にとっては触れてほしくないところでもあるんだろうと思ったので止める。
その薄ボンヤリは青白く明滅しているんだけど、明滅の真ん中に糸くずみたいなのがあって、それがウネウネしている。
理科の実験で見たミジンコや青虫のイメージなんだけど、三人で見ているうちに姿がハッキリしてきた。
先っちょが膨らんで頭になり、手足のようなものも出てきて、頭には角が生えて、小っちゃな龍になった。
ピカ!
まぶしい( >д<)!
アノマロカリスが気が付いて、そのボンヤリを体で隠そうと突進してきて、重なったところでスパークが起こって、周囲が真っ白になってしまう。
「やっぱり龍だったな」
御息所は平気で目を開けていたので、悠然と腕組みしたままだ。
アノマロカリスは、元の十倍はあろうかという立派な青龍に変貌を遂げていた。
「思っていた通りでしたね」
「で……あれを、どうやってやっつけろって言うの?」
「コルトガバメントでしょ」
「気楽に言わないでよ、第一形態のアノマロカリスには効かなかったのよ」
「だから、本性である青龍の姿にしたんでしょ」
「あ、ああ」
「御息所……ひょっとして、龍の姿にするところまでしか考えてなかった?」
「そんなことはないわよ。本性に変身させれば、やっつけられるんだから、あとは吸血鬼の胸に十字架の杭を打ち込むようなものよ。さっさとやんなさいよ!」
「で、でも……」
青龍は、大きくて、キラキラ力強くて、とても、コルトガバメントでやっつけられるようには思えなかった。
ギラ(⚙♊⚙)
ヒエエエエエエ!
いっしゅん青龍の目が光って、三人揃って縮みあがってしまった。
「さっさと、やんなさいよ!」
「ああ、こっち見てますよおおおお!」
「早く!」
「う、うん!」
ドギューーーーーーーン!
ビビりながらも思いを込めたせいだろうか、銃口から弾丸が飛び出し、真っ直ぐに青龍の眉間に飛んで行くのが見えた。
シュルルルル
銃身に刻まれたライフル(線状)によって旋回運動を加えられ、白い煙のエフェクトを纏いながら銃弾は、青龍の眉間に命中!
チーーーン
え?
銃弾は、釣鐘にパチンコ玉が当たった程度の音を響かせてはじき返されてしまった。
グオオオオオオオオオオオオ!
キャーーーーーーーーーーー!
真っ赤な口を開けて、青龍は、あたしたちめがけて飛びかかってきた!
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子




