表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/120

強制退場!?

『グヒヒッ、次は誰がオラに攻撃をしてくれるんだな?』


 グローボが俺たちに挑発をしてくる。それを聞き、ミントが真っ先に乗り出した。


「…その丸いお腹、あたしのクロスボウで撃ちぬいちゃうよ!」


 クロスボウを構え、そこから矢を放つ。矢はグローボの腹めがけて一直線に飛び、そのまま奴の腹に命中した。


「やった!命中したよ、みんな!」

『グフッ、オラの腹が風船に似ているから矢を刺せば破裂すると思っていたんだな?考えが甘いんだなっ!』


 グローボはそう言うと、自分の腹を使って刺さった矢をはじき返して来た。矢は再び一直線に飛び、こっちへと向かってくる。


「わわ、危ないっ!」


 俺たちは飛んできた矢を寸前でかわす。かなりの勢いで飛んできたから、当たればかなり痛そうだ。


「あ、危なかったぁ~。ごめんねみんな、役に立てなくて」

「気にする事はないわ、ミント。今度はあたしの魔法であいつをやっつけてみせるわよ!」


 今度はクリムが前に出ると、杖を構えて魔法を唱えた。


『ブリザード!!』


 クリムの杖から無数の冷気が放たれる。クリム、いつの間にそんな魔法を覚えていたのか。


「物理が直接効かないなら、まずはこの魔法であんたの身体ごと氷漬けして…!」


 クリムは懸命になりながら魔法を出し続ける。ブリザードの冷気は強く、近づいたら俺たちも巻き添えを食らいそうだ。

 しかし、グローボが氷漬けになる気配は全くない。それどころか奴はクリムにどんどんと近づいていく。…まさか、これも効いていないのか?


『おっと、言い忘れていたがオラにその程度の魔法は効かないんだな』


 グローボがクリムにそう言った瞬間、足を大きく踏んで強い衝撃を起こした。


「きゃあっ!」


 その衝撃でクリムは吹っ飛ばされ、壁に強く叩きつけられる。


「ク、クリムさんっ!」


 それを見て、ナラが急いでクリムのいる所へ走っていく。あの様子だと、クリムは相当なダメージを負ったに違いない。…くそっ、俺の仲間によくも!

 俺は怒りを露わにしながら、剣を構えて奴の近くまで向かう。


「おい、お前!今度は俺が相手だっ!」

『うん?今度はお前さんかい?…悪いけど、オラはお前さんみたいな男には興味がないんだな』

「はぁ!?お前、こんな時に何を言っているんだよ!つべこべ言わずに俺と戦え!」

『そうは言われても、オラにはオラなりのこだわりって物があるんだな。こだわりという物はお前さん達人間にも存在しているんだろう?それこそ、オラのように女にしか興味がないとかな…。グフフッ!』


 さっきから訳の分からない事言いやがって…。さっきも思ったが、こいつは明らかに俺たちを舐めているな。それだけ負ける気がしないという自信を持っているんだろう。実際、フリント達の攻撃が全く効かなかったからな。


『それに、お前さんみたいな『神の力』を持ってる奴と相手するなんて分が悪いしな。とにかくお前さんには消えて貰うよ』

「お前、俺がその力を持ってる事を知っているのか――って、うわっ!?」


 突然、俺の足元から紫色の触手みたいなのが出てきた。その触手は俺の下半身をがっしりと掴んでくる。くっ、全く身体が動かない!これじゃあ奴に近づいて攻撃する事すら出来ないぞ。


「な、何なんだコイツは…!?」

『それはお前さん達と戦う前にあの方から授かった、言わばオラの相棒みたいな物なんだな。諦めろ、お前さんの力ではそいつから逃れる事は出来んよ』

「くそっ、こんな物、こんなもの…!」


 俺は必死になってこの触手をほどこうとする。しかし奴が今言ったようにそれから逃れる事は出来ず、身動きが取れない状態だ。


「ナオト、今助けに行くぜ!」


 何も出来ないでいると、後ろからアルベルトが俺の事を助けに来てくれた。頼むアルベルト、この触手を何とかしてくれ!


『…おっと、お前さんもここから消えて貰うよ。さっきも言ったようにオラは男には興味ないんだな』


 しかし、アルベルトも触手に捕まってしまい身動きが取れなくなってしまう。


「くそっ、俺とした事が…!は、離しやがれコラッ!」

『グハハッ、無駄無駄。さぁて、お二人にはご退場願うんだな!やれ、お前達!』


 グローボがそう言った途端、触手は俺達を建物の入り口に目掛けて強く吹っ飛ばす。その勢いで俺達は外へ放り出されてしまった。幸い地面は雪だったので、そこまでダメージは大きくなかったが。


「ゲホゲホ…。ア、アルベルト大丈夫か?」

「ああ、こんくらい平気だぜ。それよりもあいつのいる場所まで戻らねえと」


 アルベルトは再び建物の中へ入ろうとした。しかし――。


「い、いでっ!?」


 中へ入ろうとした瞬間、アルベルトは突然何かにぶつかってしまったようなリアクションを取る。


「どうしたんだ、アルベルト?」

「な、何が起きたのか俺にもさっぱりだ…ってなんじゃこりゃ!?」


 アルベルトが驚いた声を出す。そこにはいつの間にか、紫色の壁らしき物が建物全体を覆うように立ちはだかっていた。近づいてよく見ると生き物のように蠢いているのが分かる。…まさか、これもイレギュラーなのか?


「くそっ、あのデブ野郎こんなもんまで出して来やがったのか!?邪魔だ、道を開けやがれ!」


 アルベルトは持ってる大剣を使い壁の一部を壊そうとする。しかし、それが壊れる気配は全くない。かなり頑丈のようだ。


「ちっ、俺の力でも歯が立たねえって訳か。…なあナオト、お前の能力であれを壊す事は出来るか?」

「分かんないけど…。とにかく、やって見るよ」


 俺はそう言うと、剣を構えてそれを勢いよく振りビームを放った。ビームは壁に直撃…したが、壊れる気配は全然ない。それでも俺は諦めず、何度もビームを放つ。


「せいっ!やあっ!どうだっ!」


 だが、何度やっても壁はビクともしなかった。…くっ、この力を以ってしても駄目なのか。


「駄目だ、全然歯が立たないよ」

「マジか。…じゃあ、お前がいつもイレギュラーを倒す際に使ってるあの魔法でドカンと壊す事は出来ねえか?」

「いや、それは絶対に駄目だ。建物ごと壊れてしまう」


 俺の魔法は神の力の影響で、クリムが使ってる魔法よりも威力が遥かに高い。その為、壁自体を壊す事は容易いだろうがこの建物も壊れてしまうのは目に見えていた。

 もはや打つ手は無しか…あっ、そう言えば!


「そうだアルベルト、ワープならあの中に入れるかもしれない!」

「なるほど、その手があったか!強引だがそれを使えば行けるかもしれねえな。よし、早くそれを使おうぜ」

「ああ。じゃあ、俺の肩に掴まって」


 アルベルトが俺の肩に触れたのを確認すると、俺はワープを唱えて例の画面がたくさんある空間に入り込む。えーと、あの建物の中は…あった、あったぞ!俺は画面にグローボが映っているのを見つけた。

 俺は早速その画面に触ろうとした。が――。


「「ぐあっ!!」」


 画面に触った瞬間、突然見えない何かに弾き飛ばされてしまう。気が付くと俺達は元の場所へと戻されていた。


「な、何だよ今の…?まさかワープに失敗したってのか?こんなの初めてだぜ」

「ああ、俺も初めてだ。もしかしたらたまたまの可能性もあるからもう一度だけやってみよう」

「そうだな。よし、もう一度だ」


 俺はもう一度ワープを使い、さっきの空間へ行きグローボがいる画面に手を触れる。しかし、さっきと同じようにまた弾き飛ばされ強制的に戻されてしまう。


「くそっ、またかよ!一体何が起こっているんだ?こんな事ってあり得るかフツー?」

「確かにあり得ない。今までワープをたくさん使ってたけど、一度も失敗した事は無いからな」

「ワープを使っても入れないとかどうすりゃいいんだ!俺達に出来る事は何もねえのか!?」

「落ち着いて、アルベルト。ここで騒いでも何も起こらないよ。…今俺たちに出来るのは、クリム達があの化け物に負けないよう祈る事だけだな」

「…ちっ、しょうがねえな。俺もお前と同じく祈っておくぜ。ま、あいつ等が負けるなんてあり得ないけどな」


 アルベルトの言う通り、クリム達は俺に負けず劣らずかなりの実力者だ。今までもこの戦いを無事に生き延びてこれたんだし、今回もそうに決まっている。…だから皆、俺達の代わりに頑張ってくれ。俺は心の中でそう祈った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ