森で出会った不思議な女の子
今回はミント視点。
「――ふぅ、これで全員倒せたよね」
あたしは地面に倒れているたくさんのオークを見ながらそう言った。あたしは今、依頼で森に出没しているオークたちを倒したところ。
オークは昔読んだ本に書いてあった通り汚くて、見ているだけでも嫌な気持ちになったけど…。でも自分が強くなるためだもん、我慢しないと。それに昨日出会ったトロールに比べればそんなに怖くはないし、ね。
…そう言えばオークって女の人を襲う習性があるって話も本で見た事があるけれど、あたしを見つけても何故か知らんぷりしてたな。どうして??
(とりあえず、証拠品を取らないと。…えっと、確か牙を引っこ抜けばいいんだよね?)
あたしを襲わなかったのがちょっと気になるけど、でもそのおかげで楽に倒せたからいっか。あたしは倒れているオークに近づいて、口に生えている牙を引っこ抜く。…うわっ、口から嫌な臭いがする!普段どんな物食べているんだろ?
嫌な匂いに何とか耐えながら、牙を抜いてそれを鞄の中に入れる。
「…これでおしまい!さ、早くギルドに戻ろっと!」
目的が達成出来たので、あたしはこの森から出る事にした。今頃みんなはどうしているんだろ。神父さんの情報について少しでも集められたのかな?
あたしはそんな事を思いながら戻ろうとすると――。
「わ、わわっ!あなた誰?」
突然、あたしの目の前に黒い服を着た髪の長い女の子が立っていた。あたしと同い年かもしくは年下…なのかな、どう見ても小さな子供。そんな子がどうしてこんな危ない場所に?
ちょっと不気味な印象がある子だけれど、話しかけてみよう。
「ねえ、こんな所で何をしているの?一人でここにいたら危ないよ?」
「…私なら大丈夫よ。そんなあなたこそ、一人で森に入るのは危険だと思わないの?」
「あ、あたしは大丈夫だよ!これでも立派…じゃないけど、冒険者の一人なんだから」
「そう。その割にお仲間は見かけないようだけど」
「今はいないけど、ちゃんと仲間はいるよ!ナオちゃんに、クリム姉ちゃんに…」
「あなたの言うナオちゃんとは、ナオトの事を言っているのね」
「うん、そうだよ。あの人はね、とーっても強くて頼りになる――ってナオちゃんの事知ってるの!?」
あたし、ビックリしちゃった。まさかこの子がナオちゃんの事を知っているなんて思ってもいなかったから…。
「ええ、知ってるわ。彼の本名は藤崎直人。こことは異なる別の世界から来た少年で、借り物の力に頼っていい気になってる人間よ」
え…どういう事??本名とか、別の世界とか、借り物の力とかいっぺんに言われても全然分からないよぉ。
「ねえ、それってどういう意味なの?あたしに分かりやすく教えて!」
「それを悠長に教える時間はないわ。知りたいのならば、本人から直接聞いてみる事ね」
「何よそれー、いじわるぅ。じゃあ、あなたは何しにここへ来たの?」
「――『情報』を伝えに来たの。あなたとそのお仲間にとって有益になる情報を」
情報…?何だろそれ、すっごく気になるなぁ。とにかく聞いてみよう。
「あなたたちは今、一人の男を探している。それは間違ってないわね?」
一人の男…。それって、まさかあたし達が今探している神父さんの事かな?
「う、うん。あたし達ね、神父さんを探しているの」
「やはりね。…その男の名は、ロレンツォ。ノーヅァンのハーシュと呼ばれる町にある教会で神父を務めている人物」
「それで、そのロレンツォって人は今どこにいるの?それが分からないから今まで困っていたんだ」
「彼は今、ノーヅァンの遥か彼方にある遺跡で身を潜めているわ」
「えっ、それって本当!?嘘は付いてないよね?」
「事実よ」
女の子は嘘を言っていないみたい。…でもどうしよう?知らない人の話を鵜呑みに信じてはいけないって、あたしが冒険者になる前日にお母さんが言ってたけど。うーん。でも今は少しでも情報が欲しいしなぁ。
あたしが悩んでいると、女の子は何も言わずに向こうへと歩いていく。
「あっ、待ってよ!どうしてあなたはナオちゃんや神父さんの事について知ってるの?」
「…いずれ分かるわ。その時にあなたが生きていれば、の話だけど」
女の子はそう言うと、突然パッと消えてしまった。…えっ、今のもしかして魔法!?ナオちゃんやクリム姉ちゃんと同じようにこの子も魔術師なのかな?でも武器は持っていなかったし違うかも。
本当に不思議な子だったなぁ。見た目はあたしとほぼ同い年くらいなのに凄く落ち着いてたし、ナオちゃんや神父さんの事も知ってるようだし…。
(もしあの子の言ってた事が本当だとしたら、凄い収穫だよ。早く町に戻らないと!)
とにかく、あたしはあの女の子の言ってた事を信じる事にした。そう思いながら森を出ようとした、その時――。
「ひゃあっ!今度は何!?」
突然、地面から黒い物が次々とあたしの前に飛び出して来た。丸い形の物、人間の子供のような形をした物、犬みたいな形をした物…。それはあたしもよく知っている、イレギュラーだった。
ああもう、早く皆に話したい事があるのに!あたしの邪魔しないでよーっ!




