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俺って天才!?

 剣の練習が終わり、次はクリムから魔法の練習を受ける事になった。


「それじゃ、魔法の練習を始めるわよ。まず魔法というのはね、全員が使える物じゃないの。生まれつき魔法を使える『素質』があるかで決まるワケ」

「実は私も魔術師に憧れて魔法の練習をしていた時があったんですけど、何度やっても出なくて…。だから魔術師になるのは諦めて剣士になったんです」


 ふーん。魔法は全員が使える訳じゃないのか。まあこの世界にいる人間誰もが使えたら、今よりも文化は大きく異なっていたのかもな。

 どっかの映画みたいに、魔法学校とか普通にあったりして。


「で、なんであんたに魔法を教えるのかというと、昨日あたしたちと出会う直前にあんたの片手からエネルギーのような物が放出されたって話をしてたじゃない?」

「ああ、そういえばしてたな」

「だから私、ナオトさんにも魔法が使える『素質』があるかもしれないって思ったんです」

「そういう事。最初は疑問に思っていたんだけど、あんたが本当に魔法を使えるかどうか確かめてみようと思ったの」


 …正確に言えばあれは魔法ではなくて『神の力』なんだけどな。まあそんな事をクリムに言う訳にはいかないが。

 それでも、魔法を使える素質があるかもしれないと言われて俺はやる気が湧いてきた。剣と魔法を同時に扱える人間になれたら凄く格好いいだろうなぁ。


「練習を始める前に、手本としてあたしが魔法を出して見るわ。しっかりと見てなさい」


 クリムが実際に、俺の目の前で魔法を披露してくれるらしい。魔法を見るのはこれで二回目だが、今度はどんなのを見せてくれるんだろう。俺はドキドキしてきた。

 クリムは杖を出すと、それを上にあげた。クリムは目をつぶり集中している様子を見せる。そして、勢いよく目を開いた瞬間に杖を前に振って――


『ファイア!』


 彼女の掛け声と共に、杖の先端から火球が放たれた。火球は一直線に飛び、そのまま地面へと落ちた。


「す、すっげぇ…」


 俺はその光景を見て思わず声が出てしまった。ファンタジー物ではよく見かける炎の魔法だが、まさかこの目で実際に見れるとは今まで思ってもいなかったからだ。

 さすが剣と魔法がポピュラーな世界。こんな事を言うのもなんだが、俺この世界に来て本当によかった。


「とまあこんな感じね。それじゃあ、次はこの魔法よ」


 クリムはさっき出したファイアの他にも、色々な魔法を披露してくれた。天から雷を落とす『サンダー』、冷気の弾を放つ『アイス』、水の球を放つ『ウォーター』、風を起こす『エアー』。

 どれも見てて興奮するものばかりだった。


「凄いよ、クリム!あんなにたくさんの魔法を出せるなんて!」

「ふふん、凄いでしょー?何たってあたしは超一流の魔術師だからね!これくらい朝飯前よ」


 クリムは得意げにそう言った。俺もあれくらい魔法を出せるようになれたらいいなぁ。


「それじゃあナオト、次はあんたの番よ。あたしと同じようにやって見て。魔法を出す時は、心の中で出したい魔法をイメージすれば出るわ」


 次は俺の番だ。俺は剣を鞘から出し、それを上にあげて――うん?ちょっと待って。俺はここに来て大事な事に気づいた。


「クリム!そういや俺、杖を持っていないんだけど大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。あんたの持ってる剣でも魔法は出せるわ。ただ、杖に比べれば威力は下がるけどね」


 …剣から魔法を出すなんて聞いた事がないぞ?なんかご都合主義だなー。まあいいや、とにかく今は魔法を出す事に集中しよう。

 俺は剣を上にあげ、目をつぶり心の中で出したい魔法をイメージした。どれから出そうかしばらく悩んだが、まずはファイアから出してみるか。RPGでも最初に取得する魔法はファイアってイメージが強いからな。

 俺は心の中でファイアの魔法をイメージし、剣を勢いよく前に振る。


『ファイアー!』


 俺は出したい魔法の名前を思い切り叫んだ。――と、その時だった。


 ボォォォォォォォッ!!!


「え、ええっ!?」


 予想外の出来事が起こった。俺はクリムと同じようにファイアをイメージしたはずなのに、剣の先端から火球ではなく火炎放射のような物が放たれたのだ。

 何が起こったのか全然分からず、俺はただ困惑していた。


「ちょっ、ちょっと何あれ!?ナオトが今出してたのって明らかにファイアじゃないわよね!?」

「は、はいっ!確かにそうですね…」


 俺は後ろを振り返ると、二人が茫然しているのが分かる。やはり二人からしても予想外の出来事だったようだ。…というか、今のって何?

 俺は疑問に思ったのでクリムに聞いてみることにした。


「なあクリム、いま俺が出したのってファイア…だよな?」

「ち、違うわよ!あれはファイアの上位魔法である『バーニング』よ。あんた、ファイアすら取得出来ていないのに何でいきなりバーニングを放てたの!?」


 聞きたいのはこっちの方だよ…。まさか俺も、いきなりあんな凄そうな魔法を放てるだなんて思ってもいなかったし。

 とりあえず、もう一度同じ魔法を出してみよう。もしかしたら今のはまぐれで出てしまったのかもしれない。


『ファイア!』


 俺はもう一度出したい魔法の名前を叫ぶ。そして…。


 ボォォォォォォォッ!!!


 …またファイアじゃないのが出てきたよ!何なんだ?俺の体に何が起こっているんだ!?まさか俺は、いきなり初日にしてクリムの実力を超えてしまったというのか!?

 二人はまた俺の事を見て茫然としていた。…その目で見られると、正直辛い。俺が何かやらかしたみたいで。


「と、とりあえずあんたにも魔法を出せる『素質』があるというのは分かったわ。でもまさか、いきなり上位魔法であるバーニングを放てるなんてね…。あたし、あれを取得するのに結構苦労したのに」


 どうやらクリムは、この魔法を取得するのに時間がかかったらしい。そんな魔法を初日で取得してしまったって事は…。もしかして、俺って天才!?


「ナ、ナオトっ!魔法を出せたからといって浮かれている場合じゃないわよ!練習を続けるわ、次は他の魔法も出してみなさいっ」


 クリムは明らかに動揺を隠しきれていない。俺はそんな彼女を見て少し気の毒に思いながら、魔法の練習を続ける事にした。

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