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真打ち登場!

「――ふう、良かった。何とか間に合って」


 俺はナラを助ける事が出来た事に安心し、彼女に向けてそう言った。もしあと数秒遅れていたら、今頃ナラはあの丸い形をした化け物によってやられていただろう。そうならなくて本当に良かった。

 ちなみにどうやってナラを守ったのかは単純で、俺がバリアを唱えたからだ。さっきの二人組のイレギュラーと戦っていた時もそうだったが、やはりこの魔法があると心強い。


「ナラ、怪我はしてないか?」

「え…あ、はいっ!私は大丈夫ですよ!」


 ナラは照れたような表情でそう言った。俺に助けられたのが余程嬉しかったのだろうか。

 …それよりも、俺たちの目の前にいるあの化け物は一体何者なんだ?あいつもイレギュラーなのか?後、さっきこの町に向かっていったあのイレギュラーの集団はどこにいった?気になる点がたくさんある。

 とりあえず、あの目の前にいる奴の事についてナラに聞いてみるとするか。


「ナラ、あの丸い化け物は一体何者なんだ?あいつもイレギュラーか?」

「イ、イレギュラーかどうかは分かりませんが…。あれは身体が紫色に染まった人達が合体して出来た物なんです」


 紫色に染まった人達…じゃあ、あれは俺たちが探していた元人間のイレギュラーが一つになった姿だって言うのか!?

 よく見ると、あいつの身体から何かが蠢いているのが分かる。それの正体はすぐに分かった。あの蠢いているのは全員、『人間』だ。…うげっ、気持ち悪い!今までこの世界に来てから色んな敵と会ってきたけれど、あんなにグロテスクな奴を見るのは初めてだ。


「それよりも気を付けて下さい、ナオトさん!あの敵、弱点がどこにあるのかまだ分かっていないんです。私がいくら攻撃しても手応えが感じられなくて…」


 あいつの弱点がどこなのかはまだ判明していないらしい。俺はまだこいつと戦っていないからどういう事なのかは分からないが…とにかくやってみよう。

 俺はバリアを解除し、その後に剣を振ってそこからビームを放つ。ビームが直撃すると奴の身体はたちまち真っ二つになっていく。そこからたくさんの紫色の人間が崩れ落ちてきた。崩れ落ちた人達は次々と地面に倒れて行き、そのまま動かなくなる。


(うっ、気持ち悪い…でもやったのか?)


 俺はしばらく様子を伺っていると、突然地面に倒れていた人達が再び動き始めた。動き始めたイレギュラー達は一つに融合していき、さっきの丸くて巨大な姿へと変貌していく。

 こいつ等…ただ剣で斬るだけじゃ倒せないって事か。ナラの言ってた事がよく分かったぞ。


「そ、そんな…。真っ二つになってもすぐに復活するなんて」


 ナラは今の光景を見て信じられないというような声で言った。

 その後、一つになったイレギュラーの身体から手足のような物が飛び出し立ち上がってきた。立ち上がったイレギュラーは俺たちの方へとゆっくり近づいてくる。


「ど…どうするんですか、ナオトさん!何か倒せる方法はあるんですかっ!?」


 ナラは叫びながら俺にそう言ってきた。真っ二つになってもすぐ復活する化け物を止める方法…それだったら、一つだけある。さっきの戦いで経験済みだ。


「落ち着いて、ナラ!あいつを倒せる方法だったら一つだけあるよ」

「一つだけ…?それって何ですか?」

「それなんだけど…ナラ、まずはここから逃げ出そう」

「えっ、逃げ出すってどういう――」


 俺はナラの手を握り、一緒に逃げ出した。それを見たイレギュラーは徐々に速度を上げ、俺たちの事を追って来る。だが速さなら俺の方が上だ。このままなら逃げきれるはず…!


「ナ、ナオトさんっ、急にどうしたんですか!?」

「ここじゃあ奴を完全に倒す事が出来ないから、戦う場所を変えるんだ。…ナラ、俺がしたい事が何か分かる?」

「ナオトさんがしたい事…?あっ、もしかしてアレを使うつもりなんですね!」

「そういう事!飲み込みが早くて助かるよ、ナラ」


 俺はそう会話しながら、ひたすら奴から逃げていた。――とその時、後ろから何かが転がって来る音が聞こえてきた。な…何の音だ?俺は後ろを振り返る。


「お…おいおい、冗談だろ!?」


 俺はその光景を見て驚いた。なんとイレギュラーが大きな岩のように転がってきたからだ。速さはそこまでではないものの、俺を動揺させるには十分だった。

 くっ、目的の場所まで何とか間に合う事が出来るか!?俺はさっきよりも速度を上げ、奴に追いつかれないよう必死になりながら走った。


「はあ、はあ…。ナラ、まだ俺と一緒に走れるか?」

「は、はいっ!ちょっと苦しいですけど、何とか耐えますからっ!」


 そう言い合いながら走り続けていると、やがて俺たちは町の出口までたどり着く。そこから外に出て、俺たちはさっきアルベルトと一緒にイレギュラーと戦った場所である平原へと向かった。

 平原に着くと俺たちは走るのを止め、呼吸を整える。


「…ナオトさん、わざわざここまで来たのはあの魔法を使っても周囲に被害が出ないように配慮したからなんですよね?」

「そうだよ。あの魔法は俺が今まで使って来た中で一番強い奴だけど、やみくもに使えば無関係な人や建物までもを巻き込んでしまうからね。だから使いどころは限られているのさ」

「そうなんですね。…あ、ナオトさん!あの化け物がここまで来てますよ!」


 後ろを振り返ると、遠くからあのイレギュラーが俺たちのいる所へと向かっているのが見えた。ここまで追っかけてくるなんて凄い執着心だな…。まあ、そのおかげで作戦通りに行けそうなので寧ろ助かるが。


「ナラ、君は危ないから後ろに下がってて!こいつにはあの魔法を使って一気に倒すよ」

「はい!ナオトさん、絶対に成功させて下さいね!」


 ナラは俺にそう言い、後ろへ下がっていく。俺は周囲に人や生き物がいない事を確認し終えると、剣を構えて魔法を放つ準備に入った。

 ――この作戦、絶対に失敗する訳には行かない。必ず一発で成功させてみせる。俺はそう決意し、魔法を唱えた。


『バースト!!』


 剣の先端から赤い球が、イレギュラーに向かって一直線へと飛んでいく。それが奴に直撃した瞬間、爆音と共に大きな煙が立ち上った。


「ど、どうだ…?」


 俺は立ち上る煙を見ながら、イレギュラーがどうなったのかを確認する。あれだけ激しい爆発が起きたとはいえ、まだ油断はできない。さっきのロートみたいにギリギリで攻撃をかわした…なんて事もあり得るからな。

 いつイレギュラーが煙の中から襲い掛かって来てもいいように、俺は身構える。…だが、奴の気配は全くしない。やがて煙が消えると、そこには爆発の衝撃で出来た焼け跡が残っているだけで、イレギュラーの姿はどこにもなかった。


(や、やったのか…?いや、まだどこかにいる可能性もあるな)


 俺は周囲を見渡し、イレギュラーを探す。しかし奴の姿はどこにもいない。…という事は、今ので完全に倒す事が出来たって訳だな。ふぅ、よかったよかった。

 俺はイレギュラーを倒せた事で安心しきっていると、後ろからナラがやってきた。


「ナオトさーん!今のであの化け物は倒されたんですよね?」

「…ああ、恐らくな」

「よかった、無事に成功させたんですね!これで町の騒ぎも収まりそうですね」

「そうだな。…よし、皆のいる所へ戻ろう」


 俺たちは皆と合流する為に、さっきの町まで戻っていった。…それにしても、今日は連戦が続いたな。早く帰ってゆっくり休みたいよ。

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