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更なる災難

「な…なんてこった。あいつら、融合してデカくなりやがったぞ」


 アルベルトはブラウと融合し巨大化したロートを見て唖然としていた。俺も同じ心境だ、まさかあいつ等にあんな能力があるなんて思ってもいなかったから。


『はっはっはっ、驚いているみたいだな小僧共ォ?俺たちはこんな風に融合する事が出来るのだァ。名前は…そうだな、「パールス」とでも言っておこうかァ!』


 パールス…二人のイレギュラーが融合して生まれた名前。今から俺たちはそいつと戦わなければならない。融合したんだから、前よりも強さはずっと上がっているだろう。

 だが、ここで退いては行けない。例えどんなに強くなっていようが、絶対に勝って見せるんだ。


「ったく、こんな面倒な事になってしまうなんてな。こうなってしまった以上、二人で力を合わせて立ち向かうしかねぇ。分かってるな?ナオト」

「ああ。俺たちは絶対に諦めない!」


 俺とアルベルトはそう言い合い、剣を構えて戦闘態勢に入る。パールスはそんな俺たちを見て可笑しそうに笑っていた。


『くっくっくっ、意気込みだけは十分あるみたいだなァ。それが本物かどうか、確かめてさせて貰うぞォ!』


 パールスは全身に付いているトゲを次々と伸ばし、こっちに向かって攻撃してきた。…だが、そんな物は既に見切っている!


『バリア!』


 俺はさっきの魔法をまた唱えると、俺とアルベルトの周りに大きなバリアが貼られた。そのおかげで、奴の攻撃が当たる寸前に防ぐ事に成功した。


「ナオト、お前そんな魔法まで取得していたのか」

「ああ。俺たちがフェスティに行く前に色んな魔法を取得していたんだ」


 そう言えばアルベルトにこの魔法を見せるのは初めてだったな。俺は事情を説明しながら、奴の攻撃を伺う。パールスはまたトゲを使って攻撃をし、バリアを壊そうとしているつもりだ。

 その間に何か奴を確実に倒す方法を考えないと…。


「お、おいおい!ナオト、あれを見てみろよ!」

「えっ?」


 俺がそれを考える前に、突然アルベルトが向こうを指差しながら叫んだ。俺は彼が指差した方を見ると、なんと既にバリアにヒビが入っていた。…おかしい、まだこの魔法を唱えてから一分も経っていないのに!どういう事だ?


(――あっ!あいつ、前よりも動きが速くなってる!?)


 俺は何故こうなったのかすぐ分かった。そう、トゲで攻撃してくるスピードがさっきよりも早くなっていたのだ。やはりあの二人が一つになった事で、前よりも数倍に強くなっているのだろうか。

 …とにかくこのままでは危ない!こうなったら、この魔法も――!


『スライド!!』


 俺はこの魔法もまたパールスに向けて唱える。例え速さが数倍になっていようが、この魔法から簡単に逃れる事は出来ないはず…!


「ナオト!奴が消えたぞ!?」

「あ…あれっ!?」


 が、その魔法を唱えた瞬間パールスの姿がいつの間にか消えていた。まさか…魔法を食らう寸前でかわしたとでも言うのか?


「ど…どこだ!どこへ行った!」


 俺は慌てて奴を探す。と、その時――。


「う、うわあっ!」


 突然、後ろからアルベルトの悲鳴が聞こえてきた。後ろを振り返ると、そこにはパールスの片手に捕まっていたアルベルトの姿があった。い、いつの間に!


「くっ、離しやがれこの化け物!」


 アルベルトはパールスの手から逃れようと暴れるも、奴の方が力強いせいで何も出来ない状態になっていた。


『はっはー、残念だったなァ!お前の放った魔法はもう二度と食らわんッ!そしてこのガキは人質として利用させて貰うぜェ!』

「ひ…人質だって!?そんなの卑怯だぞ!正々堂々と勝負しろ!」

『くっくっ、正々堂々?俺たちは一度もそんな事は言っていないがァ…?』


 確かに、こいつ等が正々堂々俺たちと戦うなんて一言も言ってないけど…。でも今のやり方はあまりにも卑怯だ。これでは奴に手を出せない。

 どうすればいいのか悩んでいると、パールスは向こうをチラリと見た。


『…ああ、そうそう。お前たちに言うのを忘れていたが、そろそろ町には俺たちの生み出した奴等がやって来る頃だぜェ』

「ど、どういう事だ?」

『ほぉら、あそこを見てみろォ』


 俺はパールスが指差した方を見る。そこには、ぞろぞろと歩いている人間と思わしき集団が見えた。その集団は一斉に町の方へと向かっている。

 よく見るとそいつ等は身体の半分が紫色に染まっているのが分かった。…あいつ等、どこかで見覚えがある気がするぞ。まさか…?


「あ、あれは…!?」

『驚いているようだなァ?あれは人間の死体を利用し人工的に造られた存在…俺たちと同じイレギュラーさァ。町から離れた場所に墓地があったから、そこに埋まっている全部の死体を使わせて貰ったぜェ』


 さっきこいつ等の会話を盗み聞きしていた時にも言ってた、人工的に造られたイレギュラーとか言う奴か。…これはマズいぞ、町にはまだ俺たちの仲間がいる!早く助けに行かないと――!


『おおっと、俺たちを放っておいて町へと向かうつもりかァ?そんな事をしたらこの小僧を捻り殺してやるが、構わないんだなァ?』


 俺は町へと急いで向かおうとしたが、今のパールスの発言で動きを止める。…くっ、ここで逃げればアルベルトが犠牲になってしまう。だけどここで町に行かなかったらクリム達がやられてしまうかもしれない。

 どっちを取るかなんて、俺にはそんなの出来る訳がない。どうすれば…!?


「お…おい、ナオト!町の方には行くな!先にこいつを倒すのが先だ!」


 俺が悩んでいると、アルベルトが俺に向かって叫んできた。


「ア、アルベルト!でもそんな事をしたらクリム達が…!」

「大丈夫だ、あいつらはそう簡単にやられるような奴じゃないぜ!特にクリムとナラは昔から俺よりも強いからな!…だからナオト、今はこいつを倒す事に集中しろ!」


 そう言えば以前、アルベルトはそんな事を言っていた。昔からの付き合いである彼が言うのであれば…ここはアルベルトを信じよう。

 俺は町に戻るのを止め、パールスを先に倒す事にした。


『くくっ、町に向かうのは諦めるのか。ならば、第二試合を始めるとしようかァ!!』

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