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ナラからのプレゼント

 次の日が経過した。昨日は昼寝をしていたから眠れるか少し不安だったものの、意外とすんなり眠る事が出来た。俺はベッドから起き上がってカーテンを開けると、日差しが強く差し込んでくる。今日もいい天気のようだ。

 今日は本格的に別世界での生活が始まる日でもあり、俺が冒険者デビューを果たす日だ。今日はどんな出来事が俺を待っているんだろうか。俺は期待を胸に膨らませながら、支度を整えて部屋から出た。

 階段から下りて居間に向かうと、クリムとナラが朝ご飯を用意して俺を待っていた。


「おはよー、ナオト!もう朝ご飯は出来てるわよ」


 テーブルには、今日の朝ご飯が置いてあった。メニューはトーストパンに目玉焼き、サラダにスープ。至って普通の朝ご飯だ。このご飯もクリムが作ってくれたのだろう。

 俺は席についていただきますをし、朝ご飯を食べ始めた。…うん、美味い。やはり朝に食べるトーストパンは格別だ。それに、目玉焼きも。

 そういや、目玉焼きといえばこの家には醤油は置いていないのかな?出来れば醤油をかけて食べたかったけど…。いや、それ以前にこの世界に醤油という物は存在するんだろうか。


「うーんっ、やっぱり朝ご飯に食べるトーストパンは美味しいわね~!」


 クリムも俺と同じ事を思っていたようだ。俺は思わずふふっとなった。


「そういやナオト、今日はどんな日か覚えてるわよね?」

「ああ。今日は俺が冒険者になる日で、ギルドに入る前に俺を鍛えてくれるんだろ?」

「正解。朝ご飯を食べ終えたらすぐ出かけるから、しっかり準備をしなさいよ」


 昨日も同じ事を思っていたが、クリムはツンツンした性格だから厳しく俺を鍛えそうで何か怖いんだよなぁ。ちょっとだけ不安だ。


「あ、ナオトさん!出かける前に、あなたに渡したい物があるんです」

「渡したい物って?」

「それは…。後でのお楽しみです♪」


 ナラは俺に渡したい物があるそうだ。一体どんな物なんだろう?俺はそれを楽しみにしながら、朝ご飯を食べ続けた。

 そして全員朝ご飯を食べ終えると、ナラは急いで二階へと向かっていった。


「ナラ、どうしたんだ?」

「ほら、さっきあんたに渡したい物があるって言ってたでしょ?それを持ってくる為に自分の部屋に行ったのよ」

「なるほど」


 しばらく経って、ナラが一階に下りてきた。ナラは両手に何かを持っている。細長くて、鞘に収められている何かだ。

 …まさか、これって剣?


「ナラ、それって…剣、だよな?」

「そうです。これは私が冒険者になったばかりの頃に、初めて自分のお金で買った物なんですよ」


 ナラが両手に持っていたのは、俺の予想通り剣だった。この剣は彼女が初めて自分のお金で買った記念すべき物らしい。


「もしかして、その剣を俺に渡すつもりなのか?」

「はい。ナオトさん、武器持っていないんですよね?丁度使わなくなった剣があったから、あなたにあげようと思っていたんです」

「それはありがたいけど…。でも、俺が使っちゃっていいのか?俺、今まで武器を使った事なんか殆どないし。下手したら壊してしまうかもしれないよ」

「大丈夫ですよ!その剣はちょっとの衝撃では簡単に壊れないようになっていますし、それにナオトさんなら大切に使ってくれるって信じていますから」

「ナオト、せっかくただで武器が貰えるのよ?少しはありがたく思いなさいよ」


 …二人にそこまで言われると、ここで断ったらまずいよな。絶対に。素直にその剣を貰った方がよさそうだ。


「あの…。私の使ってた剣では、不満ですか?」


 気が付くとナラは悲しそうな顔で俺を見つめてくる。や、やめてくれ。俺は女の子のそういう表情に弱いんだ。だからその剣、俺が貰うから許して。


「わ、分かったよ。その剣、俺が大切に使うからさ。だからその悲しい顔をやめてくれ」

「ナオトさん、本当に使ってくれるんですか!?ありがとうございます!」


 俺がそう言うと、ナラはたちまち明るい表情になった。ふぅ、とりあえず一安心。ここでナラを悲しませてしまったら、後でクリムに叱られるだろうからな。


「この剣は初心者でも手軽に扱える剣なんです。だから、ナオトさんでもすぐに使いこなせると思いますよ」


 ナラはそう言い、俺に剣を渡した。剣の重さは思ったよりも軽い。確かに、これなら俺でもすぐに使いこなせそうだ。


「それからナオトさん、剣を持ち歩く時は必ず腰に差して下さいね。差し方は分かりますか?」

「ああ、何となく」


 剣を腰に差すのは、俺が小さい頃に玩具の剣でやった事があるから何となく分かる。俺はナラから貰った剣を自分の腰に差した。


「それじゃあナオト、ナラ、用は終わったみたいだしそろそろ出かけるわよ!」


 俺たちは準備を整えると、すぐに家から出た。




 俺たちは町の北側にある空き地の方へと向かった。空き地は広々としており、ここなら誰にも邪魔されずに鍛える事が出来そうだ。


「それじゃあ、これからここであんたをビシバシ鍛えるわよ。まずは剣を使う練習からね。ナラ、剣の指導はあんたに任せるわ」

「分かりました!それではナオトさん、よろしくお願いしますね!」

「ああ、こちらこそよろしく」


 俺はナラから、剣の使い方について色々教えて貰った。鞘から剣を抜くやり方や、剣の振り方、剣のしまいかたなど…。ナラは親切にやり方を教えてくれた。

 俺が剣の使い方を練習する度に、ナラは「その調子です!」とか「今のは良かったですよ~!」と褒めてくれる。少し照れるが、やはり人から褒められると気分もいいしやる気も上がる。俺、ナラのような優しい女の子に出会えて本当に良かった。

 ただ、クリムはそんなナラを見て少し不満げのようだ。


「ちょっとナラ、あんたナオトに甘すぎじゃないの?もう少し厳しく指導した方がいいわ」

「うーん…。でもクリムさん、指導する時には厳しくするよりも優しくした方が、相手も安心できるしやる気も出ると思いますよ?」

「そうかしらねぇ…。あたしはそう思わないけど」


 やはりクリムとナラの性格や考えている事は正反対らしい。…ある意味、いいコンビだ。


「でもナオト、初めてにしてはいい線いってると思うわ。今のあんたなら小型のモンスターを倒す事くらいは出来るはずよ」

「はい、私も同感です。私なんか剣を上手く使えるようになるまで三日間はかかりましたから」


 ナラは剣をまともに使えるようになるまで三日間かかったのか。それを初日で出来たって事は…。もしかして、俺って剣を扱う才能があるのかも。


「とりあえず、剣の練習は一旦ここで終わりです。次は魔法の練習をしましょう。クリムさん、お願いします!」

「了解。ナオト、あたしはナラと違って甘くはないから覚悟しなさいよー?」


 クリムは黒い笑みを浮かべながら俺にそう言ってきた。…正直、不安しかない。だけどこれも人と関わる上で大事な事なんだ、逃げずに頑張ろう。

 俺は自分にそう言い聞かせ、魔法の練習を受ける事にした。

またまた投稿が遅くなってすいません!

今後もこういうのが続くかもしれないです…。

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