二人のイレギュラーとの戦い
俺たちは二手に分かれ、イレギュラーの親玉であるロートとブラウを倒す事になった。俺が倒すのは赤黒い奴のロートで、アルベルトはもう一人の青黒い奴であるブラウだ。
互いに構えを取り、いつでも戦闘に入れる態勢になる。
『――ロート、こいつらを殺す前にちょっとだけいいですかァ?』
戦う直前、ブラウが何かを思いついたようだ。こんな時にどうしたんだ、一体?
『どうした?ブラウ』
『どうせ殺しあうなら、場所を替えた方がいいと思いましてェ。こんなせまっ苦しい場所でやるよりは外に出てやった方がいいと思いませんかァ?』
どうやらこいつは外で俺たちと戦いたいらしい。確かにここで戦えば余計な被害が出てしまうし、外でやれば邪魔は入らないので効率はいいが…。しかし意外だな、敵がそんな提案をしてくるなんて。
『ふん、いいだろう。どうせこいつらの死に場所が変わるだけだ』
『へっへっへっ、ありがとうございますゥ。…という訳でお前たち、一旦外へ出ましょうかァ。場所はこの町から出てすぐにある平原ですよォ』
俺たちはブラウの案に乗り、町から出て戦う事になった。まだここで戦っているクリム達が心配だが、無事にやり遂げてくれる事を祈ろう。…大丈夫だ、彼女たちはそう簡単にやられはしない。
俺はそう信じ、外へと向かった。
『到着ですよォ。ここでなら邪魔者は入りませんので、思う存分殺しあう事が出来ますゥ。へっへっ、我ながら素晴らしいアイデアだと思いませんかァ』
俺たちは外に出て、平原へと到着した。ここには建物が一つも建っておらず、人や生き物の気配は俺たち以外全くない。
…しかし、わざわざここで戦おうとするなんてこいつらは一体何を考えているんだ?単純に正々堂々と戦いたいだけなのか、それとも何か企んでいるのか…。得体の知れない奴等の事だ、念の為に用心した方が良さそうだな。
『――戦う前にルールを確認しよう。この勝負はお互い一対一での勝負となる。俺と戦うのはそこのチビ、その隣にいるガキはブラウと戦って貰う。何を使っても構わん、全力で俺たちと戦え』
『ま、全力で戦った所で俺たちに勝てる確率はゼロに等しいんですけどねェ。ひっひっひっ、まあせいぜい俺たちを楽しませて下さいよォ?』
この二人組は俺たちがどんな戦い方をしようと、絶対に負けないという自信を持っているようだ。そうなるとますますこちら側も負ける訳には行かないな。
『ルールは理解出来たか?小僧共。理解出来たのならさっさと始めさせて貰うぞ』
「ああ、十分理解出来たぜ。ナオトも今の話をちゃんと聞いてたよな?」
勿論だ、と俺は答えた。ルールを理解出来ないほど俺は馬鹿ではない。ロートとブラウは今の俺たちの会話を聞いて納得したのか、戦う構えに入る。俺たちも剣を構え、戦闘態勢に入った。
『…よかろう。ならば、これより殺し合いを始める。行くぞ、ブラウ!」
『合点ですよォ!』
ついに親玉との戦いが始まった。俺とアルベルトは全速力で奴等の所まで走り、そのまま高くジャンプをした。
俺は剣を勢いよく振り、そこからビームを放出させる。ビームは奴の胴体を貫き、それをまともに食らったロートの身体は真っ二つに分かれていく。…だが、手ごたえは全く感じない。
『ふん、その程度で俺を倒せると思っていたのか?おめでたいチビだ』
俺を嘲笑った後、真っ二つになった自分の身体を元通りに治していく。まるで逆回しした映像を見ているかのようだった。くっ、やはりこの程度でやられる奴では無かったか。
となると、こいつを倒すには前に戦ったケージや変身したダミアンのように全身ごと粉々にしなければならないようだ。それしか他に方法はない。
『――では、今度はこちらから行くぞ!』
ロートは自分の腕をトゲのように鋭くさせ、こちらに向けて殴りかかってきた。俺はその攻撃を咄嗟にかわす。
その後、奴はもう片方の腕も鋭くさせてまた俺に殴りかかってきた。だが、スピードはさっきよりも早い。――駄目だ、これは避けられない!そう判断した俺は、持ってた剣を使い攻撃を何とか防いだ。
『ふん、この俺の攻撃を防ぐとは…。お前はただのチビでは無さそうだな』
当然だ、俺は今までに手強い相手をたくさん倒して来たからな。この程度で怯む俺ではない!
『ならば、俺も少々本気を出すとしよう。――はあっ!!』
ロートは叫び声を放つと、それと同時に背中から鋭いトゲが次々と飛び出して来た。その後トゲは一斉に伸び始め、俺のいる所へ襲い掛かって来る。あれに刺されたらただでは済まないぞ…!
俺は咄嗟に剣を振り、そこから出したビームでトゲを全部切断させた。
『…ほう。この攻撃もお前には届かないようだな。やはりお前はただのチビではないようだ』
「ああ、俺は今まで色んな強い奴と戦って勝った事があるからな。…それに何度も言うけれど、俺はチビじゃないって!」
『悪かったな。ならば、一つだけ聞いておこう。お前の名前は何というのだ?』
「ナオトだ」
『…なるほど。神の力をその身に宿しているナオトというのはお前の事だったんだな』
何?こいつ、何で俺の事を知っているんだ!?俺はロートの発言を聞いて思わず驚く。
「お前、何で俺の事を知っているんだ?誰かから聞いたのか?」
『ああ。お前の事については既にあの方から聞いてある。「本来ならば人間が持つ事はないはずの、神の力を手にしたナオトという少年が我々イレギュラーたちを脅かしている…」と』
…どうやら俺は、敵側から既に存在を知られているらしい。これはマズいぞ、敵に俺の事を知られてしまっては今後の生活に大きく影響を与えてしまう。奴等を全員倒さない限り、ギルド生活を送る事は困難になりそうだ。
とにかく、まずはこいつらを倒して町の平和を取り戻さないと。それが最優先だ。
『では、そろそろ続きを始めようか。向こうでブラウも頑張っているのでな』
向こうではアルベルトがブラウと死闘を繰り広げている。今の所、勝負は互角のようだ。頑張ってくれアルベルト、俺も頑張るからさ…!




