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親玉登場!

 俺たちは急いであの二人組がいる場所まで駆け寄る。あいつ等がいたのは町の入り口の方だったな。


「あともう少しで奴等に会えるはずだ。…おっ、あれだな!」


 アルベルトが向こうを見ながらそう言った。俺は彼の見ている方を見ると、そこにはあの二人組がこっちへ向かっている事に気づく。


「どうするんだ、アルベルト?このままあいつらを倒しに行くか?」

「…いや、ここは一旦どっかに隠れて様子を見よう。いきなり正面から突撃しても勝ち目があるとは思えねえしな」


 俺たちは近くにある建物に隠れ、奴等が通り過ぎるのを待つ。その途中で、二人の会話と思われる話声が聞こえてきた。


『――死人の身体を使って俺たちと同じ生物を創りあげようとするとは、あの方も大胆な事を考えますなァ。ロート』

『そうだな、ブラウ。だがあの方は、生きてる生物の身体を使って人工的にイレギュラーを生み出す事は出来ないと言っていた』

『それなんですよォ。どうして、死んだ者にしか効果が出ないのか気になって仕方がないのですゥ』

『…あの方はこう言っていた。全ての生物は自らの命を捧げる事によって、より完全な姿へと進化する権利が与えられるのだ、と。つまりはそういう事なのだろう』

『本当にそうですかねェ。あんな醜い奴等が俺たちと同じだとは思いたくもありませんがァ』


 二人の会話から察するに、予想通りあいつ等もイレギュラーのようだ。身体が赤黒い色の奴がロートで、逆に青黒い色の奴がブラウというらしい。

 …それにしても、人工的にイレギュラーを生み出すってどういう事だ?本来ならばあいつ等は自然に現れた新種の魔物のはずだが。それとは別に、人の手によって造られたイレギュラーも存在するという事なのだろうか?


「あいつら何を言っているんだ?とりあえず何か企んでいるという事と、あの二人がイレギュラーの仲間だというのは分かったが」

「ああ、多分あいつらがイレギュラーの親玉だろうな。前に戦ったケージって奴のように普通に喋れるって事は、ただのイレギュラーとは違う」

「親玉か…。にしてもあいつら、どこへ向かっているんだ?ナオト、ここは奴等に気づかれないようこっそりと近寄ってみるぞ」


 アルベルトは俺にこう言ってきたが…。どうする?こっそり奴等に近寄ったとしても、いずれどこかで俺たちの存在に気づかれてしまうに違いない。それにもし途中で奴等を見失ってしまったら…。俺は今すぐにでもあの二人を倒したい。


「――ごめん、アルベルト!その案には乗らない!」

「えっ?おい、お前何を言って…」


 俺はアルベルトから離れ、急いであの二人組がいる場所まで近寄った。


「おい、そこのお前ら!ここで何をしているんだ!」


 俺は二人に向かって叫ぶ。奴等は俺の声に気づいてゆっくりと振り返った。改めて近くで見ると、かなりデカい。あと遠くで見た時には気づかなかったが、彼らの顔には大きな一つ目がギョロリと動いていた。ぶ、不気味だ…。


『…ん?何ですか、お前はァ?今俺たちは仕事中ですから、子供は引っ込んでて下さいよォ』


 青黒い色をした方…ブラウとかいう奴は、俺に向かってそう言った。一見丁寧な言葉で喋っているように見えるが、明らかに人を見下している。…俺、こういう奴が一番嫌いだ。


「そうは行かないぞ。答えろ、お前たちもイレギュラーだな!?」

『…ほっほゥ?この俺たちを一発でイレギュラーだと判断するとは、人聞きの悪いチビだと思いませんかねェ?ロート』

『ふん、そうだな。このチビはどうも見た目だけで人物像を把握しようとする性格のようだ』

『違いありませんねェ!!ひゃーはっはっはッ!!』


 …何を言っているんだ、この二人は?なんか聞いてて腹立ってきたぞ。それに俺はチビじゃなくて、ナオトだ。


『だが、この俺たちに恐れもせず話しかけた事だけは誉めてやろう。褒美として俺たちが何者なのかを教えてやる。――お前の言う通り、俺たちはイレギュラーだ。そして俺たちはその中でも高等な種族といった所だ』


 高等な種族…?前に戦ったケージと同じ奴って事か。という事は、やっぱりこいつ等が親玉!?


「この町を襲わせたのはお前たちなんだな?」

『そうだ。…正確に言えば、あの方の命令によって動いていると言った方が正しいか』


 あの方…さっきあいつ等が会話してた時に言ってた奴の事だな。前にケージも同じ事を言ってたが、あの方って本当に誰なんだよ?


「お前、あの方って誰の事を言っているんだ?」

『あの方の事ですかァ?あの方というのは、この町にあるきょう――』

『やめろ、ブラウ。相手は俺たちの敵だ、無暗に情報を教えようとするな』


 くそっ、せっかくそいつの全貌が分かるチャンスだったのに…。ロートの奴、余計な事を言いやがって。――でも、あの方という人物がこの町に潜んでいるという事だけは分かった。


『へい、すみませんでした。…とにかく、俺たちに気づいてしまった以上はお前のようなチビだろうと生かしておく訳には行きませんよォ。これがどういう意味か、もう分かりますよねェ?』

「…俺を始末する、って事だな」

『大正解~。という訳でロート、俺たちで一緒にこのガキを殺してしまいましょうぜェ』

『ふん、いいだろう。…さあ、俺たちに殺される覚悟は出来ているか?』


 殺される覚悟?当然、そんなのはある訳がない。何故ならば俺はあんな奴等に負ける気はしないからだ。俺の持つ『神の力』さえあれば、どんな敵が来ようと絶対に勝てる。

 さあ、早く親玉を倒してこの町を救うんだ!


「――おい、待ってくれよ!ナオト!」


 …とその時、後ろからアルベルトがやって来た。アルベルトは俺が勝手に言ってしまったからか不機嫌そうな表情をしている。


「まったく、お前は本当に無茶ばっかするよな。前に温泉で俺が言ってた事もう忘れちまったのか?」

「ははは…悪かったよ。でも叱るなら後でしてくれないか?今はこいつらを倒す事が優先だ」

「むっ、そうだな…。よし、だったら早くこいつらを倒そうぜ」


 俺とアルベルトの二人で、ロートとブラウを倒す事になった。これで人数は互角だ。ますます負ける気がしない。


『ほっほゥ?どうやらあのチビにお仲間がいたようですねェ。ロート、俺はあの大きな剣を持ったガキを狙ってもよろしいですかァ?』

『構わん。どっちを狙おうが、最終的に勝利すればいいだけの事だ。…という訳でそこのチビ、俺が相手をしてやる』


 俺はロートと戦う事になった。…それにさっきも言ったが、俺はチビじゃなくてナオトだ!

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