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イレギュラーの親玉を探せ!

 俺はアルベルトと一緒に、町中に現れたイレギュラーたちを次々と倒していった。町を回って奴等を倒すのはフェスティの時に既に経験しているので、どうって事はない。ただ…数が多すぎるんだよなぁ、これが。俺たちが今いる付近は大分落ち着いてきたが。


「ぜえ、ぜえ…。ナオト、俺たちは後どれだけこいつ等を倒せばいいんだ?」

「そんなの知らないよ。とにかくたくさん倒せば、その内騒ぎは収まるはずだろ」


 アルベルトはたくさんのイレギュラーを倒し続けていたので、息切れを起こしている。その一方で俺は未だに疲れは見えてこなかった。…これも神の力のおかげ、なのだろうか?俺がこの世界に来たばかりの頃、ファングから逃げている時にも同じ事を思っていたけど。


「たくさん倒せばって、お前もうちょっといい考えとか持っていないのかよ?だらしねえなぁ」

「し、仕方ないだろ。俺考えて行動するの苦手なんだからさ。そういうアルベルトこそ何かいい考えを持っているのか?」

「俺か?うーん、そうだな…」


 アルベルトは顎に手を当てて考えていた。…これでいい考えが浮かばなかったらアルベルト、お前も人の事言えないぞ。


「…ナオト、前にフェスティで奴等と戦った時を覚えているな?」

「ああ、覚えてるけど…。それがどうかしたのか?」

「ほら、闘技場であいつ等の親玉と戦っただろ。そいつに勝った時、町から一斉にイレギュラーが消えて行った。…俺が何を言いたいのか分かるな?」

「えっと、要するに今回もその親玉を探して倒せばいいって事なんだな?」

「ご名答。よく分かってるじゃないか」


 なるほど、今回もそいつを探せばいいんだな。ゲームとかでも魔物のボスキャラを倒したら一緒に手下が消えていくように、イレギュラーの親玉を倒せばほぼ無限に湧いてくる奴等を止める事が出来るという訳だ。

 ただ、今回もそのパターンで行けるかは分からないが…。まあ、ここは騙されたと思って彼の案に賛成するとしようか。


「よし、それじゃあさっさと奴等の親玉を探そうぜ。ナオト」

「分かった!…で、どうやってそいつを探しに行くんだ?」

「こういう時はだな…。あの一番高い建物のてっぺんまで登るんだよ」


 アルベルトは向こうに見える、時計塔を指差しながら言った。…あそこのてっぺんまで登る、だって?そんな無茶な。


「ええと…本気で言ってるのか、アルベルト?」

「ああ、本気だ。あそこまで登ればこの町の景色が良く見えるし、イレギュラーが町のどの辺にいるのか全部お見通しになるって訳さ」

「は、はあ…。というか、アルベルトは高い所に登る事は出来るのか?」

「当たり前だ。ガキの頃から高い所に登るのが得意だったからな」


 そ、そうなのか。アルベルトって木登りが得意だったんだな。俺とは正反対だなぁ…。実を言うと俺、高い所はあまり得意じゃないし登るのも下手だったりする。あの時計塔のてっぺんに登るのかと想像したら少しだけ怖くなってきた。


「どうしたんだよナオト。体、震えてるぞ?」

「えっ?ああ、大丈夫だよ…。とにかくそこまで登ってみよう」

「ふーん。まあいいや、さっさと行こうぜ」


 アルベルトは不思議そうに俺の事を見ながら、時計塔の所へと走っていく。…まさか、俺が高い場所が苦手だというのに気づいてしまったか?だとしたら何だか恥ずかしいなぁ。

 とにかく、俺は彼についていき時計塔へと向かった。そこに到着するとすぐ中へ入り、階段を上がっていく。しばらく上り続けていると、やがて塔の上に到着した。うわぁ、凄い眺め!ここから町の景色が良く見えるぞ。


「よし、何とか無事にたどり着けたな。じゃあ更にこの屋根の上を登っていくぞ。落ちないように気を付けるんだ」


 アルベルトはそう言い、屋根の先端を掴みスムーズに登っていった。凄い、何のためらいもなく登っていったぞ。やはり俺とは育ちが違うんだろうな。


「よっ…と。ナオト、お前も早く来いよ!」


 そ、そう言われてもな…。だがここで逃げては男としてのプライドが傷つく。俺は勇気を振り絞り、屋根の先端にしがみついた。だがアルベルトのように上手く行かず、そこにしがみついたまま宙ぶらりんな状態になっていた。こ、怖い…!


「おいおい、お前ってガキの頃から木登りやった事ないのか?しゃあねえな、俺の手に捕まれ!」


 アルベルトは俺に向けて手を伸ばして来た。俺はその手を掴み、彼に思い切り引き上げてもらう。そのおかげで、何とか俺もてっぺんにたどり着く事が出来た。


「ふぅ、ありがとな。アルベルト。お前がいてくれて助かったよ」

「いいんだ。困った時はお互いに助け合うのが俺たちの信念だしな。…よし、それじゃあこっから奴等の親玉を探して見ようぜ」


 アルベルトはそう言うと、鞄から双眼鏡を二つ取り出した。いつの間にそんなもん持ち歩いていたんだ?まあこれで遠い所を見渡す事が出来るな。

 俺は双眼鏡を使い、周りを探る。その途中でクリムとナラ、フリントとミントが奴等と戦っている所を見かけた。四人もこの騒ぎを収めようと、一生懸命になりながらやっている。その様子を見て俺たちも頑張らなきゃという気持ちになった。


「どうだ、ナオト?そっちは何か見つけたか?」


 アルベルトが俺に聞いてくる。そんな事言われても、この町は広いからなぁ。そう簡単に親玉を見つける事なんか…ん?ちょっと待て、あれはなんだ?


「アルベルト、あれ!あそこに誰かいる!」

「なんだ?何か見つかったのか、ナオト…あっ!?」


 俺は町の入り口付近に、二人組の人物を見つけた。その二人組は体格が不自然に大きく、近くにある一軒家の建物とほぼ変わらないサイズだ。それに色は一人が全身赤黒い感じで、もう一人が全身青黒い色をしている。

 …あいつら、明らかに普通の人間じゃない。俺はそう確信した。


「おいおい、何なんだあいつら!?どう見てもサイズ感がおかしいし、それに色もなんか禍々しいし…。まさかあの二人組もイレギュラーか?」

「その可能性があるな。とにかくあいつらに近寄ってみよう」

「分かった。じゃあ、ここから降りるぞ」


 アルベルトは立ち上がり、てっぺんから飛び降りようと準備をしていた。…ちょっと待って、まさかそこから一気に飛び降りるつもりなのか?


「待ってくれ、アルベルト!俺ここから飛び降りる勇気が全然ないよ」

「何だよ、お前は登るだけじゃなくて降りるのも苦手だというのか?根性ねえなぁ…。じゃあ、俺の背中につかまれ」


 俺はアルベルトの背中にしっかりとつかまった。小さい子供でもないのに誰かの背中につかまるというのは変な感じだが…。とにかくこれでいいんだな?


「よし、それじゃあ俺にしっかりつかまってろよ!――とうっ!」


 アルベルトが掛け声を言ったと同時に、てっぺんから一気に飛び降りた。こ…怖い怖い怖いっ!地面に落ちるーっ!!


 ――ドスンッ!!


 俺とアルベルトは地面に勢いよく着地した。


「無事に着地出来たな。…おーい、ナオトー?大丈夫かー?」


 俺は突然地面に飛び降りた事で恐怖に陥り、しばらく放心状態になっていた。そんな無茶な事しなくても、普通に時計塔にある階段から降りればいいのに…。まあその方が手間がかからないんだろうけどさぁ。


「は、は~い。大丈夫で~す…」

「…やれやれ、今はこんな所で伸びてる場合じゃないってのに。さっさとあの二人組がいる場所まで行くぞ」


 俺はすぐ正気に戻ると、急いであの二人組がいる場所まで向かった。

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