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一難去ってまた一難

「――それで、その液体は既に取り除いたんですよね?」


 俺は監察医に、遺体の体内に付着していた液体の事を聞く。


「ああ、当然だ。それに私は今まで色んな遺体を解剖してきたが、あのような物を見るのは初めてでね。解剖が終わった後、すぐそれを調べて同じ物がないか調べてみたんだ」

「その液体と同じ種類の奴は見つかったんですか?」

「それなんだが…。奇妙な事に、一つも当てはまるのが見つからなかったんだよ。本来ならばこの世界中に存在していない物だったんだ」


 やはりそうなるか。…ふと、俺は以前お城へ来た時にシャルルが言ってた事を思い出した。「イレギュラーという魔物は本来ならば世界中のどこにも存在しない、新種の魔物だ」と。あの話と、今監察医が言った事には一つの共通点がある。『世界中のどこにも存在していない』という所だ。

 もしかしたら、イレギュラーとあの紫色の液体は何か関連性があるかもしれないな。


「…あれ?先生が言ってるその紫色の液体って、確かナオト君が偵察兵を倒した際に出てきたって言ってたわ。そうよね、ナオト君?」


 フリントの言う通り、俺があいつを倒した時にも同じのが飛び出して来た。そこが謎なんだよな…。まさか監察医がわざわざあれを元に戻したとは考えられないし。


「何、君がそいつを止めてくれた時にも同じ物が出てきたのか?」

「はい、そうです。この目でしっかりと見ましたので、間違いではありません」

「…妙だな、一つも残らず取り除いたはずなのに。まさか、私の知らない間に誰かがそれをまた遺体の中に入れたとでも言うのか?君たちはその事について何か知ってるかね?」


 当然、誰も知るはずがない。俺は監察医の質問に答えられず、ただ黙っているしかなかった。


「ふむ、どうやらこの中で知ってる人は誰もいないようだ」

「す、すいません…。あれを初めて見たのはつい最近なので、俺たちもよく分からないんです」

「いやいや、君たちが謝る必要はないよ」


 とりあえずここは話題を変えよう。えーと…そうだ、あの液体って身体のどの箇所から出てきたのかそこも気になるな。それについても聞いてみよう。


「先生、ところであの液体は身体のどの部分にあったんですか?」

「あれはもともと彼の左胸部…つまり傷口の深い部分で見つけた物だ」


 傷口の深い部分…そう言えばあの遺体、胸の部分から血が流れていたんだよな。


「左胸部って言うと、肺のある所ね。念の為に聞くけどあの兵士の死因は自殺ではないのよね?」

「ああ。死因は他殺だと既に判明されているよ。鋭い刃物が、肺に深く刺さったのが原因で死亡したという説が有力だ」


 クリムが兵士の死因について聞いてきた。俺の予想通り、彼は何者かによって殺されたようだ。そうなると殺した犯人が何者なのかが重要になる訳だが…。


「やはり殺人なのね。じゃあ、あの傷口の所に入ってた液体は刃物に仕込んであった物なのかしら?」

「そこまでは分からん。肺に刃物の欠片が埋まっていれば犯人の特定は出来たかもしれないが、それすらも無いからな。残念ながら現時点ではお手上げ状態だ」

「…結局、何も分からないままなのね。これじゃあ犯人は捜しようがないわ。どうするの?ナオト」


 どうするの、って言われてもな…。まあもともと犯人を捜すって言ったのは俺だし、責任は取らないと。でもここは皆にどう言えばいいだろうか、うーん…。


 ――コンコンっ。


 そう悩んでいると、後ろから扉をノックする音が聞こえてきた。叩き方から察するに何やら急いでいるようだが、何だろう?

 監察医はそれに気づいて扉を開けると、そこには一人の看護婦が息切れを起こしながら立っていた。


「どうしたんだ、そんなに慌てて」

「はあ、はあ…。お、お話し中失礼します!そ…外に黒い化け物が現れて町の人を襲っているんですっ!」

「な、何!?町に化け物が現れた!?」


 黒い化け物…まさか、イレギュラーか!?くっ、せっかく落ち着いたと思ったのに今度はこいつ等が町中に現れたのか。急いで町の人たちを助けに向かわねば!


「ナ、ナオちゃんっ!その化け物って…」

「ああ。間違いなくイレギュラーだ。早く外へ出よう!」


 俺たちは急いで部屋から出て、外に向かって走り出す。


「――ま、待ってくれ!君たちが今言ったイレギュラーというのは何かね!?詳しく教えてくれ!」


 その途中で監察医が俺たちを呼び止める声が聞こえたが、それを無視した。…先生、ごめんなさい!それについて話をすれば長くなりそうだから。

 病院から出て外に行くと、町中で様々な形をしたイレギュラー達が町の人を襲っている光景が見えた。どうやら早くも町は大パニックに陥っているようだ。


「マズいわね…。どうやら既に被害は大きくなっているようだわ」

「そのようだな。くそっ、これじゃあフェスティの二の舞だぜ」


 アルベルトの言う通り、フェスティで魔物が大量に現れた時と同じ状況になっている。…にしても、イレギュラーはあちこちで現れて一体何がしたいんだ?単に俺たち人間に恐怖を味あわせたいだけなのか、それとも別の目的があるのか…。

 何はともあれ、奴等をこのまま放っておく訳にはいかない。


「皆、ここは前回のフェスティの時と同じように各自別々になってあいつ等を倒すわよ。分かってると思うけど、途中でイレギュラーに襲われてる人を見かけたら絶対助けるように。いいわね?」


 俺たちはクリムの言う事に従い、以前と同じくばらばらになって行動を取る事にした。町の皆、待っててくれ。今俺たちが助けに向かうから…!

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