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化け物の正体

『――ガアアアアアッ!!』


 男は叫び声を放ち、俺たちの所へまた猛スピードで迫ってきた。今度は油断せず、俺はその攻撃をひらりとかわす。

 男はそのまま俺たちの方を通り過ぎ、壁に思い切り激突した。


「どうやらあいつ、あの様子だと知性はないみたいね。今がチャンスだわ!」


 フリントは今が好機だと狙い、急いで走り男に向かって飛び蹴りを放つ。――だが、男はすぐさま振り返りフリントを片手で追い払った。


「きゃあっ!」

「フ、フリント!」


 フリントは男の平手打ちに当たり、俺のいる場所まで吹っ飛ばされる。何て奴だ、平手打ちだけでもあんなに力強いというのか。俺たちのような冒険者ならともかく、あんなのを一般人が食らってしまえば一溜りもないぞ。

 そうなる前にさっさとこいつを倒さないと行けないが、どうする?もしここで魔法を使えば、俺の魔力ではこの病院もろとも崩壊してしまう。無駄な被害を出さずに済ませるには…これを使うしかない。

 俺は目をつぶり、息をゆっくりと吐く。同時に剣を持ってる方の腕に力を入れる。それをやると、片腕が強く光り輝き始めた。


『グオオオオオッ!!』


 男は再び猛スピードで迫って来る。俺はその気迫に押されず、すぐに剣を振った。


「はあああああっ!!」


 掛け声と共に剣を振ると、そこからビームが放たれる。そして、ビームは奴の身体に直撃し――そのまま貫通した。


『オ…オオッ…?』


 攻撃をまともに食らった男は、ゆっくりとうつ伏せに倒れていく。男が倒れる直前、彼の身体から紫色の液体のような物が飛び出して来たのが見えた。

 あ、あれは…!以前あれと似たような物を俺は見た事があるぞ。確か暴走したブタチビが巨大化する際、無数のブタチビが紫色の液体状に変化していたような…。

 男の身体から完全に液体が飛び出した後、彼の身体は元の姿へと戻っていった。…俺の予想通り、どうやらこの人は何者かに操られていたようだ。ふぅ、とりあえず危機は去ったか。


「いつつ…。あれ、あいつはどうなったの?」


 男が倒れたと同時にフリントが起き上がる。俺はすぐ彼女に近寄り、奴を倒したという事を報告した。


「フリント、あいつは俺が倒したよ」

「本当?…はぁ、またナオト君に美味しい所を持っていかれたわね」

「気にするなって。さっき君に助けられたからこれでおあいこさ」


 俺はフリントの手を掴みながらそう言った。その後、フリントは倒れている男の方を見る。


「この人、もしかしてさっきあたしたちを襲ってた奴と同じ人なのよね?」

「ああ。さっきフリントに言うのを忘れてたけど、そいつ霊安室って部屋から現れたんだ」

「霊安室…。という事はこの人、もう既に死んでいるのね。それを利用して、誰かがこの人を操っていたって事?」

「まだ確信はしてないけれど、恐らくな」

「…誰がやったのかは知らないけど、こんな事をするなんて絶対に許される行為ではないわ。絶対に元凶を突き止めないとね」


 フリントは男を見て、静かに怒りを露わにしていた。彼女の言う通り、罪のない人間の身体を弄ぶような事をするなんて絶対に許される事ではない。しかし誰がこんな事を…?そもそも、何が原因で魔物に取り付かれていたんだろうか。


「おーい!ナオトー、フリントー!」


 俺が考え事をしていると、向こうからアルベルトがやって来た。


「二人とも大丈夫か?そっちから大きな音がしたから急いで駆け付けたんだが…。もしかして例の化け物を見つけたのか?」

「ああ、それならさっき俺たちが倒したよ」

「そっか。…で、そこに倒れている男は誰だ?」


 俺たちはアルベルトに、この男の人がさっきの化け物に操られていたという事を話した。アルベルトは今の話を聞いて青ざめた顔になる。


「おいおいマジかよ。病院で現れた魔物の正体は、人間に取り付いていた奴だったのか?…冗談じゃないぜ、まったく」

「本当ね。…ナオト君、とにかくこれで事件は解決したし一旦クリムちゃん達と合流しましょ」

「あ、ああ。分かったよ」


 俺たちは倒れている男をそのままにし、クリムたちを探しに行った。遺体を放置するのって気が引けるが…。だからといって俺たちがあれに触れる訳にはいかないし、後は病院の人に任せておくしかないな。

 入り口に戻ると、ちょうど逃げ遅れていた人を外へ逃がすよう催促するクリムたちがいた。俺は彼女を呼ぶと、クリムはこちら側に気が付いて話しかけてくる。


「あっ、三人とも!化け物は倒して来たの?」

「倒して来たよ。…ただ、後味のいい物ではなかったけどな」

「後味のいい物ではないって、どういう意味?詳しく教えて頂戴」


 俺はクリムたちにさっきまでの出来事を全て話した。


「…要するに、魔物が死体に取り付いていたって事?」

「そういう事になるわね」

「確かに、後味のいい話ではないわね…。でもどうして既に死んでいる人が魔物に取り付いてしまったのかしら?」

「それについては何も分からないよ。あれを最初に目撃した人がいれば何か分かるかもしれないけど」

「…ナオト君、こういう時は監察医に聞いてみるといいわ。あの人だったら取り付いていた原因が何か分かるかもしれないわよ」


 そう言えば俺たち、その監察医に会いにこの病院へ来たんだったな。あの化け物を倒す事で精一杯になっててうっかり忘れそうになってたよ。よし、ならばその人を探しに行こう。

 俺たちは病院から出て、彼を探しに向かった。

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