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異形の化け物

 翌日、俺はカーテンから差し込む太陽の光を浴びて目覚めた。ここのベッドが快適だったという事もあって、昨日はすぐ眠る事が出来た。おかげで目覚めは最高だ。

 俺は服を着替え支度を済ませると、アルベルトと一緒に部屋から出る。一階のロビーに行くと、皆が俺たちの事を待っていた。


「皆、おはよう!」

「あっ、ナオトにアルベルト。おはよー!その様子だとぐっすりと眠れたみたいね」

「ああ。よく眠れたよ。クリムたちもよく眠れたかい?」

「勿論よ。…さ、皆で食堂へ向かいましょ」


 俺たちは食堂へ行き、そこで朝ご飯を食べる。それが終わるとホテルから出て、偵察兵を殺した犯人を捜しに行く事になった。彼の無念を晴らす為にも、何としてでも探さねば。


「で、今日はどんな感じで探すの?ナオト」

「決まってるだろ。町の人に聞き込みをするか、町中を駆け回って怪しい物がないか探しに行く」

「昨日もそれやったけど、結局何も見つからなかったじゃない。そんな調子でやってたら時間の無駄になるわよ」


 そうだな、クリムの言う通りだ…。昨日もあちこちを入念に探し回ったけど、結局何も見つからないまま日が暮れてしまった訳だし。こんな行き当たりばったりな計画では仲間からの信頼を失ってしまうに違いない。


「皆、何かいいアイデアとかないの?」


 俺は皆に何かいいアイデアがないか聞いてみた。クリムはそれを聞いて、呆れた顔をしながらため息をついた。俺が悪いとはいえ、恥ずかしくなってくるからこれ以上俺を責めるのはやめて下さい。


「…ねえナオト君、あそこに行ってみない?」


 と、フリントが何かアイデアを思い付いたようだ。


「あそこって、どこ?」

「病院よ。そこに監察医っていう死体を解剖して原因を明らかにさせる役割の人がいるの。その人に偵察兵の事について聞けば、何か手がかりを掴めるかもしれないわよ」


 監察医…。昔、なんかのドラマで聞いた事があるな。とにかくその人に聞けば何か分かるかもしれない。ここはフリントの案に賛成し、皆で病院へと向かう事にした。




 歩いて数分後、俺たちは病院へと到着する。外観はとても立派で、この町にある教会に負けないくらい大きな建物だ。そう言えば俺、この世界に来てから病院に行くのは初めてなんだよな…。そう思ったら何だか少しだけ緊張してきた。


「ここが病院のようね。じゃあ皆、入りましょ」


 俺たちは早速中へ入ろうとした。と、その時――。


「――う、うわあああああっ!!」


 突然、入り口から一人の男性が飛び出してきた。男性は何やら慌てているようだが、どうしたんだろう?俺は男性に声をかける。


「あの、何があったんですか?」

「ば、化け物が…病院に化け物が現れたんだ!」


 男性はそれだけ言うと、遠くへ逃げ出していった。化け物?まさか…こんな所にまでイレギュラーが現れたのか?


「あの人、病院に化け物が現れたって言ってたわね…。ナオト君、もしかしてイレギュラーの事かしら?」

「俺もフリントと同じ事考えてたよ。可能性としてはあり得るな」

「とにかく、このまま放っておけば中にいる人たちが化け物の餌食にされてしまうわ。急いで中へ入るわよ!」


 俺たちは急いで病院の中へと入っていく。中はかなりの大騒ぎで、医者や看護師、その他諸々のたくさんの人たちが一斉に入り口の方へと逃げていく光景が見えた。

 大体の人は無事に逃げ出せたようだが、まだ逃げ遅れている人がいるかもしれない。特に患者の人が心配だ。彼らは病気や怪我をしているから、逃げようにも逃げられないはず。


「予想よりもまずい状況のようね…。皆、ここは分断して行動に移るわよ。あたしとナラとミントは逃げ遅れた人たちの救出、残りの三人は病院に現れた化け物を探しに行って!」

「分かった!皆、気を付けて行くぞ」


 俺たちは病院の中を駆け回り、クリムから言われた通りに行動に移った。俺は化け物を探す役割だ。病院の中はかなり広く、あちこち探索するだけでも苦労する。一体どこに潜んでいるんだ?


『――グオオオオオッ!!』


 病院の中を探索していると、突然向こうから大きな唸り声が聞こえてきた。ゾンビのような低い声をしている。俺はその声を聞いて背筋がゾクッとした。


「ど、どこだ!?」


 俺は唸り声が聞こえてきた方へと向かう。そこには一つの扉があり、上には『霊安室』と書かれていた。こ、この中に化け物が閉じ込められているのか…?俺は緊張し、ゴクリと喉を鳴らす。――とその時、扉を強く叩きつける音が聞こえてきた。まるでここから出せと言わんばかりの勢いだ。俺はその音を聞いてビックリしつつも、すかさず剣を抜いて戦闘態勢に入る。

 俺はいつ奴が来ても襲われないように、その場から動かずじっと構えを取った。


 ――バァン!!


 大きな音と共に、扉が勢いよく壊れる。その中から現れたのは一人の人間――いや、明らかに普通の人間ではない。身体の半分が不気味な紫色に染まっていた、異形と化した男だった。

 男は虚ろな目で俺の方を見つめている。…この感じ、まさかこの人は何者かに操られているのか?だったら助けてあげないと!


『ガアアアアアッ!!』


 そう思っていた矢先、男が唸り声と共に目にも止まらぬスピードで俺の首を掴んできた。俺はあまりの素早さに呆気にとられ、持っていた剣を落としてしまう。


(く、苦しいっ…!)


 男は俺の首を力強く絞めてくる。くそっ、これじゃあ魔法を唱えて奴に反撃する事も出来ないぞ。それに首を絞められているからか、だんだんと意識が飛んでいく。

 …まずい、このままでは窒息死してしまう。誰でもいい、俺を助けてくれ――!


「――はあああああっ!」


 そう助けを願っていた途端、突然何者かが男に向かってキックを放ってきた。俺はそれを放った人物の顔を見る。こ、この人は…フリント!フリントが俺を助けに来てくれたんだ!

 男は今の衝撃で、向こう側へと勢いよく吹き飛ばされていく。何とか自由になれた…。げほっ、げほっ。俺は首元を押さえながら咳き込む。


「ナオト君、大丈夫?」

「あ、ああ。何とかな。助かったよ、フリント」


 フリントは手を伸ばしながらそう言ってきた。俺はその手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。いいタイミングで来てくれたよ、フリント。もしここで誰も来なかったら、さすがの俺でも死んでたな…。


『オオオオオ、オオオオオッ』


 向こうの霊安室からまた唸り声が聞こえてくる。どうやらあの男はまだ倒れていないらしい。


「安心するにはまだ早いようね。…ねえナオト君、さっき病院の人が言ってた化け物ってもしかしてあいつの事かしら?」

「恐らくそのようだ。フリント、油断するなよ。あいつ、さっき物凄い速さで俺に襲い掛かってきたんだ」

「分かってるわよ、ナオト君。早くあいつを止めないと!」


 そう言い終わったと同時に、さっきの男がまたこっちへ向かってくる。…今度は油断しないぞ、何としてでも止めなければ!

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