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温泉での一幕

今回は前半がナオト視点、後半からクリム視点で書かれています。

 一日の疲れを取る為、ホテルで一泊する事になった俺たち。中に入って受付の人にチェックインを済ませた後、ホテルのスタッフから自分たちが使う部屋へと案内された。

 俺たちが使う部屋は二つ。一つが俺とアルベルトの使う部屋で、もう一つが女子勢全員が使う部屋だ。

 早速、俺とアルベルトは部屋の中に入る。部屋の中はとても綺麗で、それを見た俺たちは思わず声を上げた。


「――うわあ、すっげぇ!」

「こりゃまた豪華な部屋だなぁ。俺たち二人が使うには勿体なさすぎるぜ」


 部屋に入ってまず最初に目に入った物は、二人用の大きなベッドだった。それを見た俺は真っ先にベッドへダイブする。ベッドはふかふかで、一度その中に入ってしまえばもう二度と起き上がれないんじゃないかってくらいに心地よい。

 俺はしばらくそれに釘付けになってしまい、しばらくそこから動かなかった。


「…おーい、ナオトー?先に風呂に入ってるぞー?」


 アルベルトの一声で俺は勢いよく起き上がる。そうだった、温泉に入るんだったな。いつまでもこんな事をしてる場合じゃない、早くそこへ向かわねば。




「ふーっ、極楽極楽」


 俺とアルベルトは風呂場に行き、体をしっかりと洗った後お湯に浸かった。温かくてとても気持ちいい。一日の疲れが一気に取れそうだ。

 そういや俺、昔はよく親と一緒に温泉に行ってたっけ…。それを思い出したら何だか元の世界が恋しくなってきた。


「くぅ~、温泉ってこんなに気持ちいい物だったなんてな。これなら何時間でも入れそうだぜ」


 アルベルトが大きく伸びをしながらそう言う。…彼の発言から察するに、温泉に入るのは生まれて初めてなのだろうか。俺は意外に感じた。


「アルベルトって温泉に入るのは初めてなのか?」

「ああ、そうさ。俺んちは貧乏とまでは行かなくても裕福な家庭じゃなかったから、こういう場所に行く事は無かったんだ」


 へぇ、アルベルトの家庭事情ってそんな感じだったのか。だったらいい経験になったんじゃないかな。


「しっかし、お前って本当にお人好しだよな」

「何がだよ?」

「ほら、さっきお前があの偵察兵を殺した犯人を見つけるまでこの町に残るとか言ってただろ?前に魔物に囚われたお姫様を救出に向かった事といい、お前って一度も知り合った事のない奴の為によくあそこまで頑張れるよなーって思ってさ」


 そういう事か…。確かに彼の言う通り、親しい関係でもない人の為に行動に移す事は他人からすれば変に感じるかもしれない。俺って昔からそういう人間だって親や友達からよく言われてたからな…。あはは。


「だから俺、そんなお前を見てて時々不安になるんだよ。そんな調子でやってたら、いずれ敵にやられてしまうかもしれないって」

「…アルベルト、俺の事を心配してくれているのか?」

「当たり前だろ?お前は俺たちの戦友なんだ。俺たちはそんなお前を目の前で失いたくないって思ってる。それが例え、怒りんぼうのクリムであろうとな。…だから、あまり無茶はするなよ。いいな?」


 俺が目の前で敵にやられてしまうのを見たくないって事か。分かったよ、アルベルト。…でもきっと大丈夫。万が一、敵にやられそうになっても今の俺には『神の力』があるからな。俺は今までその力を使って様々な困難を乗り越えてきたんだ、だから今回も――問題なく行けるはず。俺は自分の右腕を見ながら、心の中でそう思った。




「――うーんっ!あったかくてとても気持ちいいわね~」


 あたしはナラ、フリント、ミントと一緒に仲良く温泉に入っていた。さっき、ナオトが「この町に残る!」って言ってた時は呆れたけど…。ま、おかげで気持ちいい温泉に入る事が出来たから許してあげるわ。


「本当ですね、クリムさん。それにこうやって皆さんと一緒に入る事が出来て、私嬉しいです♪」

「私もよ。またいつか機会があったら、皆で温泉に入りたいわね」

「あたしもー!今度はナオちゃんと一緒に入り――」

「駄目よ。混浴でもないのに異性同士で入ろうとするのは」


 ミントはあたしの言葉を聞いてぷーっと口を膨らませる。全く、相変わらずこの子はナオトの事が気になっているのね…。


「じゃあ私が今度ナオト君と一緒に温泉に入るってのはどうかしら?きっと喜んでくれるはずよ」

「だーかーらー、駄目に決まってるじゃないのっ!あんたも何言ってんのよ!?」

「ふふっ、冗談よ。そんなに怒らなくたっていいじゃない」


 あたしは声を荒げながらフリントに向かってそう言った。…やれやれ、こいつも何言ってんのかしら。いい歳なんだから少しは恥じらいという物を自覚しなさいよ…。


「…にしてもあんたたちって、ナオトの事よほど気にいっているのね」

「当たり前だよ!ナオちゃんは命の恩人だもんっ」

「私もミントちゃんと同意見ね。それにナオト君って、結構可愛い所もあるし」


 そういやこの二人、ナオトに助けられたんだったわね…。でも赤の他人に一度助けられたからといってそう簡単に好きになれるもんなのかしら?あたしには理解出来ないわ。…それとも、理解出来ていないあたしが馬鹿なの?


「ナラ、あんたにも聞きたい事があるんだけど。あんたもあいつに対して好きって感情があるのよね?」

「はい、勿論ですよ♪」

「じゃあ一つ質問していい?あんたはナオトのどういう所が好きなのか言ってみて」

「えっ、どういう所がですか?…うーん、色々ありますけど、一番はやっぱり誰にでも仲良くしようとする所ですね。私って臆病だから、ナオトさんのそういう所が羨ましいなぁって思って」


 なるほどね。確かにあいつは初対面の人であろうと、仲良く接しようとするし。戸惑いという物が一切ないというか。そこが見ていて時々不安になったりするんだけど…。


「うんうん、あたしもそう思うよ!それにね、ナオちゃんの側にいたらどんな悪い奴が現れてもすぐにやっつけてくれるって安心感があるの」

「そうね。…ねえクリムちゃん。私たちはこの先、イレギュラーとかいう奴と戦う機会が増えるかもしれないでしょ?でもナオト君だったらどんな形のイレギュラーが来ようと、それを一人で全部倒してくれそうな予感がするの。これは私の勘だけどね」


 それは流石に彼を持ち上げすぎじゃないの…?確かにあいつは強いけど、あたしたちと歳はほぼ変わらないただの人間よ。何でもかんでもナオトに任せたら、いずれ命を落とす危険性もある。だからあたしたちが同行して、ナオトを精一杯サポートしないといけないわ。困った時はお互いに助け合うって、ナラもよく言ってるしね。


(それがいいでしょ?ナオト…)


 あたしは向こうに見える夜景を見ながら、心の中でそう呟く。皆はそんなあたしを気にも留めず、楽しそうに会話をしていた。

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