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謎を解き明かす旅へ

 俺たちは路地裏から出ると、すぐ町の人に死体があるという事を通報した。町の人はそれを聞いてすぐに救急隊を呼び、彼らが到着すると同時に兵の亡骸を運んでいった。遺体は『モルグ』と呼ばれる、死体を一時保管する施設に移送されるようだ。

 町は死体が見つかったという事で騒ぎになり、野次馬たちがその様子を駆けつけに行っていた。どの世界に行ってもこういうのは変わらないんだな。


「あたしたちが探してたあの兵士、まさかあんな変わり果てた姿で見つけてしまうなんて…。王子様やお姫様がその事を知ったら悲しむわね」


 救急隊に運ばれて行く兵を見ながら、悲しそうにクリムがそう言った。彼女の言う通り、この出来事をシャルルとベアトリスに話せば絶対に悲しむだろう。そう考えると俺はやるせない気持ちになる。せめて無事な状態で見つかって欲しかった…。

 くそっ、一体誰が彼をこんな目に遭わせたんだ?


「これからどうするんだ、クリム?最悪の形ではあったが一応兵を見つけ出す事は出来たし、フェスティに戻って報告でもするか?」

「…そうね。それじゃあナオト、あんたのワープでフェスティまで一気に向かうわよ」


 クリムはフェスティに行くよう俺に催促する。ベアトリスから頼まれた依頼はあくまでも『ノーヅァンに向かった偵察兵を探す』事だから、それが達成された以上もうここに用はない。…だけどあの兵が殺された理由が分からないまま帰るのだけは絶対に嫌だ。

 ここまで来たら、この謎を全て解き明かしたい。フェスティに戻るのはその後でも遅くはないはずだ。


「…ごめんクリム、もう少しだけこの町にいてもいいかな?」

「何よ?依頼は終わったんだし、ここにはもう用はないでしょ」

「そうだけど…でも俺、気になるんだ。あの兵は誰に殺されたのかという事がさ。皆もそれが気になってたりするよな?」


 皆は俺の発言を聞くも、ただ何も言わずに黙っていた。何だか気まずい空気だ…。

 しばらくするとクリムが口を開き、俺にこう言った。


「…あんたね、お姫様から頼まれた依頼は何かちゃんと聞いてたの?あたしたちのやる事は行方不明になった兵を探す事であって、その兵を殺した犯人を捜す事じゃないわ。これ以上調べても時間の無駄になるだけよ」

「確かに時間の無駄になるかもしれないよ。だけど、どうしても自分の手で真相を知りたいんだ。そうすればスッキリした気持ちで帰れるし、それに…俺は死んでしまった彼の仇を取りたいんだ」


 俺の発言を聞き、また皆はしばらく黙り込む。やはり俺の意見には賛成できないという事なのだろう。俺っていつもそうだ、無謀な事を言って皆を困らせる事がしょっちゅうある。

 やはりここはクリムの言う事を素直に聞くべきか…。


「あ、あたし…ナオちゃんについていく!」


 そう諦めかけていた時、突然ミントがそう言ってきた。


「ちょっ、ミント?あんた、ナオトと一緒にこの町へ残るつもりなの?」

「うん!あたしもナオちゃんと同じ事考えてたんだ。あの人は何も悪い事していないのにどうして死んじゃったのか、理由を知りたいの。だからあたしもこの町へ残る!」


 ミントは俺と同じ事を考えていたようだ。だから俺と一緒にこの町に残ってくれるらしい。相変わらずいい子だ…。


「わ、私もミントちゃんと同じですっ!私、あの兵士さんを殺してしまった人の事絶対に許せないって思ってますから!私もこの町に残ります!」

「私も皆と同じよ。モヤモヤした気持ちで故郷に帰るのだけはごめんだしね」


 ナラやフリントも、ミントに続いてこの町に残ってくれるようだ。性格は違えど、考えている事は皆同じなんだな。俺はそれだけでも嬉しかった。


「アルベルト、あんたはどうなの?」

「えっ、俺?そうだな、俺は別にそういうのには興味ないし、お前たちとここで別れてクリムと一緒に…」

「絶対に嫌よ。あんたと二人きりになるとか」

「…へいへい、そう言うと思ってたぜ。だったら俺もナオトたちについていくとするよ」


 アルベルトも一緒に来てくれるようだ。これで残るはクリムのみとなった訳だが、はたして彼女も来てくれるだろうか?


「クリムは俺たちと一緒に来てくれないんだよな?フェスティに戻る事を優先してるようだし」

「…本当ならそうしたい所よ。でもこの流れであたしだけ別行動を取るなんて事したら、空気読めない人みたいに思われるじゃないの」

「と、いう事は…」

「しょうがないから、あたしも一緒についていくわ。ありがたく思いなさい」


 クリムは渋々ではあるものの、他の皆と同じくこの町に残ってくれる事になった。…やった、全員来てくれたぞ。こんなに嬉しい事はない!


「みんな…どうもありがとう!」


 俺は皆に感謝の言葉を言った。俺って本当、仲間に恵まれている気がするなぁ。改めてそう思う。

 こうして、俺たちは犯人を捜すためにこの町へしばらく留まる事になった。




「――皆、もう暗くなってきたわ。今日はこの辺にしときましょ」


 俺たちはあれから町を探索し、兵を殺した犯人を捜していた。しかし結局、それらしき人は一人も見当たらない。気が付いたらもう辺りはすっかり暗くなっていた。

 しょうがない、犯人捜しは明日に持ち越しか…。


「分かったよ。…ところで、今日はどこで寝るんだ?」

「この町には確か温泉付きのホテルがあったはずよ。…ほら、あそこ!」


 クリムが指差した方を見ると、そこには立派な外観のホテルがあった。…それに、温泉付きだって?俺はそれを聞いてテンションが上がりそうになる。


「なあ、ここに温泉が付いているのか?」

「そうよ。以前この町へ来た時にそこで泊まった事があるけど、あそこの温泉はとても気持ちが良かったわ~。ナラもそう思うでしょ?」

「はい♪ナオトさんたちも是非入った方がいいですよ。あそこに入れば今日の疲れは全部吹き飛んでしまいますから!」


 それは是非ともここに泊まりたいな。それに温泉に入るのなんて滅多にない事だし。フリントたちも今の言葉を聞いて、とても楽しみにしている様子だ。

 俺たちは一日の疲れを取りにホテルへ泊まる事にした。

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