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冒険者になりたい

 俺は部屋から出ると、階段を下りて居間まで向かった。居間からはいい匂いが漂ってくる。この世界の料理はどんな感じなんだろう。ゲテモノみたいな感じじゃなければいいけど。


「あっ、ナオトさん!さっきまで何をしていたんですか?」

「自分の部屋で寝てた」

「そうだったのね。どうりで、呼んでも来ないと思ったわ。それじゃ、皆揃った事だし晩御飯を食べるわよ」


 テーブルの上には晩御飯が三人分置いてあった。晩御飯のメニューは白米にから揚げ、サラダにスープ。…思ったより普通だ。俺は少し拍子抜けした。ま、ゲテモノが出てくるよりはずっと良いが。

 俺は椅子に座り、ご飯を食べ始めた。味の方はというと、一言で表すなら「美味い」。別の世界から来た俺でも安心して食べれる味だ。


「どう?あたしの作った料理。結構美味しいでしょー?」

「ああ。…これ、クリムが作ったのか?」

「そうよ。何たってあたしは魔法も料理も超一流なんだからね!」


 超一流かどうかはともかく、クリムの作った料理はとても美味しい。まるでお母さんの料理を食べてるようだ。クリム、将来はいいお嫁さんになれそう。

 …それより、俺は二人に聞きたい事があるんだった。


「なあ、ちょっと二人に聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「ん、何?」

「さっき二人が言ってた冒険者ギルドについてなんだけど」


 俺は冒険者ギルドに少しだけ興味がある。なので、それについて聞いてみる事にした。


「冒険者ギルドがどうかしたの?」

「俺もさ、冒険者になって二人と一緒にギルドで働いてみたいって思ったんだ」


 俺がそう行った途端、二人の手の動きが止まった。…やっぱり、今の発言はマズかったか?


「…あんたさ、言っとくけど冒険者ギルドという仕事は遊び感覚で入れるような場所じゃないのよ。それは分かってるわね?」

「あ、ああ。分かってるよ」

「あんた、今までの人生で武器を扱った経験はある?」


 当然、そんなのはない。俺はハッキリとそう言った。


「だと思ってたわ。あんた、どう見てもヘタレな男にしか見えないし」

「な、何だよヘタレって!」


 クリム、さっきも俺の事をヘタレとか言ってたな。何だか少しだけクリムに腹立ってきた。決して悪い子ではないと思うけど、ツンツンした性格の女の子ってあまりタイプじゃないんだよなぁ。

 …ふと俺は、小学校の頃にいた同級生の女の子を思い出した。あの子も、クリムみたいにツンツンしてたっけ。今何をしているのかな。


「クリムさん?そういえばさっき、ナオトさんが魔法のような物を出してたって話をしていましたよね?あれがもし魔法だとすれば、ナオトさんもきっと入れる資格があると思います」

「何かしら能力を持ってるからと言って、その力を上手く使いこなせていなければ話にならないわ」


 魔法のような物…。さっきロゴスが言ってた『神の力』の事か。確かに、それさえあれば俺だって冒険者に入れるかもしれない。

 でも俺は、あの力を上手く使いこなせる気が全くしない。あの時は偶然出せたような物だし。…それに、俺はこの力を悪用してはいけないって事をロゴスから約束されたんだ。


「それで、あんたはどうしてもあたしたちと一緒に冒険者ギルドで働きたいのね?」

「うん。その気持ちは変わらないと思う」

「一度冒険者になったら、平穏な生活を送る事は難しくなるわ。…もしあんたが今までのように平穏な道を進みたいのなら、冒険者になるという夢は諦めて別の仕事を探した方がいいわよ」


 一度冒険者になれば、平穏な人生を送る事は難しくなる。それはきっと、さっき俺が出会ったファングのような凶暴なモンスターとたくさん戦う機会が増えるという事だろう。そう考えたら、俺は怖くなってきた。

 …それでも。俺は冒険者になって、二人と一緒にギルドで働きたい。今よりももっと、二人の事を知りたいから。


「…あの、クリムさん。さっき私たちが言ってた言葉を覚えていますか?困ったときはお互いに助け合い、ですよ!」

「困った時はお互いに助け合い…。そういえばさっき、ナオトの新しい服を買う時にそんな事言ってたわね」

「クリムさんはナオトさんの事を心配しているから、冒険者に入れるのを躊躇しているんですよね?だったら、私たちがナオトさんを精一杯助ければいいんですよ!そうすればクリムさんの心配はなくなりますし、ナオトさんが依頼の途中で力尽きる事もなくなります」


 困ったときはお互いに助け合う。さっき二人が言ってた言葉だ。ナラの言う通り、この二人と一緒にいれば俺が死ぬというリスクは確実に減るだろう。問題は、クリムがそれに乗ってくれるかだけど。

 クリムはナラの発言を聞いて何やら考えている様子だ。数分後、クリムは考えが決まったのか俺にこう言った。


「分かったわ。そこまで言うのならナオト、あんたを冒険者に入れてあげる」

「本当か!?」

「ええ、本当よ。あんたとナラがあそこまで言ってるんだから、それを断って気まずい雰囲気にさせるのも悪いしね。ただ…」

「ただ?」

「これからあたしたちがあんたをビシバシ鍛えるから、しっかりとついていきなさいよっ!」


 こうして、俺は冒険者にさせてくれる許可を得る事が出来たのであった。




「今日はもう遅いから、あんたを鍛えるのは明日になってからね。今日はたくさん歩いて疲れたでしょ?ゆっくり休んで、明日に備えなさいよ」

「分かったよ。ありがとな、クリム」

「それじゃあナオトさん、おやすみなさい!」

「ああ、お休み。ナラ、クリム」


 俺たちは晩御飯を食べ終わり、そのまま自分の部屋に戻った。今日はもう遅いので、俺を鍛えてくれるのは明日になってからだそうだ。クリムはツンツンしてるから、厳しく俺を鍛えるんだろうなぁ。逆にナラは俺を優しく鍛えてくれそうだ。

 さっきも寝る前に思っていたけど、今日は色々な事があったな。明日も、今日と同じく色んな出来事が俺を待っているんだろう。不安もあるが、とても楽しみだ。

 それじゃ、明日に備えて今日は早く寝るとしよう。とは言っても、さっき寝てたから眠るのに時間がかかりそうだけど。はは。


 …それから、俺が元いた世界にいる友達や親戚、そして両親へ。俺は向こうの世界で元気にやってます。

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