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北の国『ノーヅァン』へ出発!

 アーサーさんのお店で厚着を買い終えた後、俺たちはクリムとナラに報告する為に一度家に戻った。


「ただいまー!厚着買ってきたよ!」


 俺は玄関の扉を開け、二人にそう言った。二人は既に準備を終えたらしく、手に厚着を持ちながら玄関の前で待機していた。


「皆さん、お帰りなさい!ちゃんと自分の使う服を買ってきたんですね」

「それじゃ、さっさとノーヅァンへ出発するわよ。あんた達が買い物している間に馬車を二台雇っておいたから、それで移動するわ。皆、乗る前にちゃんとその服を着るの忘れないようにね」


 俺たちは家を出て、馬車が止まっている場所へと向かった。クリムに言われた通り、乗る前に上着をしっかりと着る。これで問題ないだろう。

 馬車は二台分あり、一台はクリムとナラとアルベルト、そしてもう一台は俺とフリントとミントが乗る事になった。丁度三人ずつだ。


 ――こうして、ノーヅァンで消息を絶った兵を探しに行く俺たちの旅が始まった。




 俺たちは馬車に揺られながら、外から見える景色を眺めたり、他愛もない会話をしていた。特にミントは景色を眺めるのが大好きなのか、とても楽しそうに見ている。生き物の群れに遭遇して大きく手を振ったり、途中で通りがかった花畑を見て目を輝かせたり…。とても微笑ましい。

 クリム達も今頃は仲良く会話を繰り広げているんだろうな。あの三人は昔からの仲だし。


「…あ、そうだ!ナオちゃん、前にクリム姉ちゃんから聞いた話なんだけど、ナオちゃんってこれからあたしたちが向かうノーヅァンって所の出身なんだよね?」


 突然、ミントは俺にそんな話をしてきた。…いつ聞いたんだ、その話?確かに以前クリムとナラに北の国からやって来たとか言ったけど、あれは誤魔化す為に俺がでっち上げた嘘だからな。まあだからといって、本当の事は言えないが。

 俺はとりあえず、彼女にそうだと頷く。


「ふーん。じゃあ、もしかしたらナオちゃんのお友達や家族に会えるかもしれないね!」


 当然、それもあり得ないけどな。この世界で俺の友達や両親、親戚は一人もいないのだから。…いや、クリム達はこの世界の『友達』に含まれるか?

 そんな事を思っていると、少しずつではあるが気温が低くなっていくのを感じた。外を見ると天気はさっきまで晴れだったのに、いつの間にか曇り空になっている。この感じ…どうやら、目的地に近づいてきたようだ。


「さっきに比べて寒くなってきたわね…。そろそろノーヅァンへ近づいてきたのかしら?」

「ぶるぶるっ、そうみたいだね。…わっ、あたしの口から白いのが出てきたよ」


 ミントは体を震わせている。厚着を着ているとはいえ寒そうだ。この子、生まれて一度も寒い場所へ行った事はないのかな?


「あっ、見てナオちゃん!あれ町じゃない?」


 ミントは向こうを指差しながらそう言った。俺はその方向を見ると、大きな建物がたくさん並んでいるのが見えた。彼女の言う通りあれは町に違いない。ここに行けば消息を絶った兵に関する手がかりが見つかるかもしれないな。俺は心の中でそう願った。




 町に到着し、俺たちは馬車から降りて町の中へと入っていく。入口には看板があって『ようこそハーシュへ!』と書かれていた。ハーシュというのはこの町の名前の事だろう。

 建物は赤色のレンガで造られた物が多く、この北国にとてもマッチしている。


「ここがノーヅァンの中で最も大きな町、ハーシュよ。この町では毎年冬になると、協会に行って歌を歌ったり子供たちにプレゼントを贈ったりする風習があるの」

「私たちも以前ここへ来て、お祭りに参加した事があるんですよ~。教会にいた神父さん、優しくていい人だったなぁ」


 へぇ、この世界にもクリスマスみたいなイベントが存在するんだな。何だか楽しそうだ。ミントも今の話を興味津々に聞いている様子だった。


「…そう言えばナオト、あんた確かノーヅァン出身だったわよね?もしかしてこの町に住んでたの?」


 クリム、君もそれを言うのか…。俺はそうじゃないと首を横に振る。


「ふーん、そうなの。ま、その事について今はどうでもいいわね。…それじゃ、早速この町にいる人たちに聞き込みをして情報を収集するわ。もし手がかりが見つかったら、すぐあたしの所へ来て報告するように。いいわね?」


 俺たちはそれぞれに分かれ、町の人に偵察兵の事について聞く事にした。この町もトレラントやフェスティ並に大きな場所だから、途中で道に迷わないようにしないと。俺はそれだけ気を付けながら、色んな人に声をかける。

 通りがかった一般人やお店の店主、この町のギルドに所属している冒険者たち…。しかし、どの人も彼を見た物はいないという。参ったな…。このままだと無駄骨になってしまう。

 俺はうなだれながら、町に設置してあるベンチに座って休憩を取る事にした。


(他の皆はもう手がかりを掴めたのかな…)


 休憩してる途中、俺はそんな事を思っていた。もしかしたら俺がたまたま運が悪かっただけで、他の皆は既に良い情報を得る事が出来たのかもしれない。そう思おう。今は後ろ向きに考えるよりも前向きに考えなきゃ。

 俺はふと向こうを見ると、遠くに冒険者と思われる三人組が歩いているのが見えた。


(一応、あの人たちにも聞いてみるか)


 俺はあの三人組にも声をかけてみる事にした。今までのパターンからしていい情報は得られないだろうが、まあとにかく話しかけよう。分からないからといって何もしないよりはマシだ。

 俺はベンチから立ち上がり、三人組のいる所まで駆け走る。


「すいません、ちょっといいですか?」


 俺の声を聞いて三人組はこっちを向いた。三人組は武器を持ってて、二人の男性と一人の女性といったメンバーで構成されている。やはりこの人たちも俺と同じ冒険者のようだ。


「俺たちに何か用か?」


 男性の一人が俺に声をかける。男性はキリっとした目つきをしており、いかにもクールな印象だ。


「ええと、俺は今フェスティという城下町からそっちの国に向かった偵察兵の一人を探しているんです。銀色の鎧を着た人なんですけど、どっかで見かけませんでしたか?」

「…いや、すまないが見なかったな。マルコ、お前は見た事あるのか?」

「えっ?いやいや、俺もその偵察兵とかいう人は見ませんでしたよ」


 やはりそうなるか…。そう諦めかけていたその時だった。


「――あっ!その銀色の鎧を着た兵の事なら、あたし昨日見かけたっす!」


 …えっ、女の人の方は彼を見た事があるのか!?これは有力な情報が得られるかもしれない、俺は食い気味になりながら彼女に問い詰めた。


「あの、偵察兵の事について何か知っているんですか!?是非俺に教えてください!」

「まあまあ、落ち着いてくださいっすよ。えっと、あれはあたしたちが一仕事終えて解散した後の事なんすけど…。あたしが家に帰る途中、この町にある教会の近くを通ってたら銀色の鎧を着た人がそっちに走っていくのを見かけたっす。何やら急いでいる様子だったけれど、何をやっていたんすかね?」


 教会の方…。もしかしたらそこに何か手がかりがあるかもしれない。よし、早速そこへ行ってみるとしよう。


「情報ありがとうございます!早速、そこへ行って確かめにいきますね」

「あたしの話がお役に立ててくれたなら嬉しいっす。それじゃ、お気を付けて~」


 俺は三人組に感謝の言葉をいい、その場から去る。まずはクリムに有力な情報を得られたという事を報告しなければ。俺は彼女を探しに町を駆け回った。

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