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魔物を使って試し斬り!

 魔物騒動から翌日が経過し、再びいつもの日常に戻っていった。俺はミントと一緒にギルドへ行き、いつものように依頼を受ける。今日の依頼は魔物の討伐だ。

 今回の討伐対象はブラッドラプトルという魔物で、この町から出て西にある岩場に生息しているとの事だ。ブラッドラプトル…前に倒した事のあるコレクトラプトルと似たような奴だろうか。

 早速俺たちは町から出て、西の岩場に向かって歩いていく。歩いて数時間後、奴等が生息していると思われる岩場が見えてきた。


「ナオちゃん、依頼の紙に書いてあった岩場って多分ここじゃないかな?」

「そのようだな。…ミント、決して俺から離れるなよ。魔物に狙われる危険性があるからな」

「うん、分かった!あたし、ナオちゃんにくっついてるね」


 俺とミントは魔物に警戒しながら、ゆっくりと岩場に近づいていく。近づくと、魔物がたくさんその場をうろついているのが見えた。外見はコレクトラプトルに似ているが、体色は赤を基調とした毒々しい感じだ。恐らくあいつがブラッドラプトルだろう。

 俺たちは岩場に隠れ、奴等の様子をうかがう。


「な、何だか危険そうな魔物だね…」


 ミントがブラッドラプトルを見ながらそう呟いた。彼女の言う通り、いかにも危険な匂いが漂っている奴等だ。噛みつかれたらただでは済まないだろう。


「ねえナオちゃん、魔法を使ってあいつ等を一気に倒したりとか出来ないの?」

「魔法?うーん、それは難しいかな。ここは草原と違って足場が不安定だから、上手く奴等に魔法を当てられるか自信がないよ。…それに、俺の魔法は火力が高いから岩場も巻き添えを食らってこっちに崩れ落ちてくるかもしれないし」

「そ、それは危険だね…。だったら魔法は使わないで自分の持ってる武器で攻撃するしかないのかな?」

「そういう事になりそうだ」


 魔法は使えないから、当然ここは武器を使って攻撃するしかない。だが下手に近づけば奴等は群れで俺たちを殺そうとしてくるに違いない。

 うーむ、どうやって効率よく倒すか…。あ、そうだ!


「そう言えばミント、昨日俺に新しい力を見せてって言ってたよな?ちょっとやって見るよ」

「え、本当?見せて見せてー」


 俺は剣を取り出し、それをしっかりと握って心の中で念じる。前に出た時は心の中で魔物を倒す力をくれと願ったから発現したんだろうから、それとまた同じ事をすれば出てくると俺は確信した。

 ひたすらに念じていると、俺の右腕が強く輝き始める。…よし、俺の思っていた通りだ。それにしても凄い輝きぶりだな。


「あ…ナオちゃん!右腕が光ってる!」


 ミントは俺の光っている右腕を見て驚いていた。当然の反応だろう、俺も最初は驚いてたし。

 後はこの状態のまま剣を振ればそこからビームが出てくるはずだ。


「ミントはここで待ってて。あいつ等は俺が片づけてくるから」


 俺はミントにそう言うと、岩場から飛び出してブラッドラプトルの集団に向けて剣を思い切り振った。


「せやあっ!」


 掛け声と共に剣を振ると、そこからビームが勢いよく飛び出してくる。ビームは一直線に飛びそのまま奴の胴体を貫いた。

 ビームに貫かれた一匹のブラッドラプトルは、瞬く間に身体が真っ二つに分かれていく。け、結構グロいな…。


「――ギエエエエエエッ!!」


 倒された個体の仲間は今の攻撃で俺たちの方に気づき、雄叫びをあげながらこっちへ走ってきた。仲間の仇を討たんとばかりに一斉になって襲い掛かって来る。

 だが、そのくらいで俺は怯みはしなかった。俺は剣を連続で振り、そこから放たれたビームを次々と魔物に命中させていく。

 ――そして、俺は一人でブラッドラプトルの群れを全滅させる事に成功した。


「ミント、終わったよ!」


 俺は岩場に隠れていた彼女に呼びかける。ミントは俺の声を聞いてひょっこりと顔を出し、こっちへ近寄ってきた。


「うわっ、これってさっきのあいつ等…だよね?これ全部、ナオちゃんがやったの?」


 ミントは真っ二つになったブラッドラプトル達の死骸を見ながらそう言った。…この子には刺激が強すぎたかな?ごめんよ、ミント。


「あ、ああ。そうだけど…ごめん、やり過ぎちゃったかな?」

「う、ううん!そんな事ないよ!ナオちゃん、今の凄くカッコよかった!さっすが、あたしの王子様だねっ!」


 …苦笑いしながら俺の事を褒めてきたけど、やっぱり無理してないか?嫌なら素直に嫌って言えばいいのに。この子、俺の事を決して否定とかしないからな…。


「…あ!それよりもナオちゃん、後ろ見て!」


 ミントは俺の後ろを指差しながら叫んだ。振り向くと、そこにはブラッドラプトルの一匹が向こうへ逃げていくのが見えた。

 …しまった、一匹倒し損ねた奴がいたか!急いであいつも倒さなければ面倒な事になりそうだ。


「逃がしてたまるか!」

「ナオちゃん、ちょっと待って!ここはあたしがやっつけるよ!――やあっ!」


 俺が奴を追おうとした瞬間、ミントはクロスボウを構えて狙いを定めてそこから矢を放った。矢は魔物に一発で命中し、悲鳴と共に地面に倒れていく。

 ナイスだミント。相変わらず凄い命中率だな、まだ俺たちよりも経験は浅いとはいえ実力はプロ並みといった所か。


「ふぅ、何とか逃げられる前にやっつける事が出来たね。これで全匹倒せたかな?」

「そのようだな。ありがとう、ミント。君がいなかったら最後の一匹を逃がす所だったよ」

「…えへへー、ナオちゃんに褒められちゃった♪うれしいなー」


 ミントは俺に褒められて上機嫌になっていた。いつもの事とは言え、やはりミントの喜ぶ姿はとても可愛らしい。

 その後、俺たちは証拠品としてブラッドラプトルの牙を持ち帰りギルドへと戻っていった。




「今日も無事に依頼完了だね、ナオちゃん!…えへへ、さっきも言ったけど今日のナオちゃんは凄くカッコよかったよ♪」


 一仕事が終わって家に帰る途中、ミントは俺にそう言ってきた。…俺が新たに身に付けた、剣からビームが出てくる能力。あれを上手く使いこなせば魔法以上に強力な代物になりそうだ。

 そうなればどんな魔物が来ても俺の敵ではなくなるはず。勿論、先日戦ったあの未確認の黒い魔物でさえも。…俺、ひょっとしたらこの世界で最強の戦士になれるかもしれないな。

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