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事件収束

 俺はクリム達にこれまでの経緯について話した。まず、皆のいる公園に戻ろうとした時に路地裏で動けなくなっていたシャルルを助けた事。彼を助けた後、城の兵士からベアトリスが魔物に攫われてしまったという報告を聞きシャルルやアルベルトと一緒に彼女を助けに行った事。

 魔物との戦いはほぼこっちが不利な状況だったけど、突然俺に宿った新たな力によって一気に形勢が逆転し、姫を助けて魔物も倒す事に成功した事だ。


「あんたたち、魔物の親玉と戦っていたのね。なんでそれをあたしたちに話さなかったのよ?一言言っとけばあたしたちも加勢してたのに」

「ごめんよ、クリム。あの時は時間がなかったからさ…」

「まったく…。ま、あんたたちが無事なようで安心したわ。でも今度手ごわい魔物と戦う時にはあたしたちも誘うのよ、分かった?」

「「はーい」」


 俺とアルベルトは揃って返事をする。その様子を見て皆は大笑いしていた。な、何だか恥ずかしいな…。だけどこういう雰囲気は嫌いじゃないかも。

 とにかく、これで魔物の親玉を倒した事で町の騒ぎも収まりそうだ。


「これから私たちは避難所に行って、皆に魔物は全ていなくなったという事を伝えに行くよ。だから君たちとはここでお別れだ」

「えぇ、もう皆と別れちゃうの?私、まだこの人たちとたくさんお話したいのになぁ」

「君の気持ちは分かるけど、今は町の皆を安心させる事が最優先だ。…それじゃあ皆、お元気で!」


 シャルルとベアトリスは別の用事がある為、ここで俺たちと別れる事になった。二人はこの城下町の王子と姫だから、この後が忙しくなりそうだな。大変だろうけど頑張ってくれ、二人とも。

 俺たちは二人にさよならをし、闘技場から出る。気が付くと空は赤く綺麗に染まっており、まるで激しい戦いを乗り越えた俺たちを優しく迎えてくれているようだった。


「うーんっ、事件も解決したしこれでゆっくりと休めそうね。それにしても今日は色んな出来事があったわねぇ」


 フリントが背伸びをしながらそう言う。確かに今日は色んな出来事があったな。午前中はミントと一緒にフリントに会いに行って、帰る途中で謎の魔物に遭遇して、午後からはフェスティに行って魔物を全員倒して…。久しぶりに充実した一日を送っていたと思う。

 正直、充実し過ぎてもうくたくたになるくらいだ。だから早く帰ってゆっくり休みたい。


「本当だな。この町で魔物が出るなんて前例は無かったから尚更だよ。まったく、あいつ等は一体どこから来たんだ?」


 アルベルトはあの魔物がどこからやって来たのか疑問に思っている様子だった。結局、あの魔物が何者なのかは分からずじまいだったな…。ただ一つ分かったのは、魔物は『あの方』の命令で動いているという事だ。

 …そもそも『あの方』って、一体誰なんだ?名前は教えてくれなかったからその人物について分かるはずがない。何か手掛かりを掴む事が出来ればいいんだけど…。


「アルベルトもあの魔物の事は何も知らないのか?」

「ああ、一つもな。さっきあいつ等が現れた際に急いで本で調べてみたんだが、その魔物については全然書かれていなかったんだ。…なあ、これって奇妙だろ?」


 確かに奇妙な話だ。本にも載っていないなんてな…。果たして、その魔物について知ってる人物は『あの方』を除いているのだろうか。


「あたしもそいつ等について気になる所はあるけれど…。でも、分からない事をいつまでも気にしてたら余計に疲れるだけよ。魔物についてはそのうちどっかの学者が解明してくれるだろうし、あたしたちは今まで通りの生活を送った方がいいわ」

「ま、それもそうだな。…んじゃ、俺はそろそろ腹減ったから飯でも食うとするか。皆はこれからどうするんだ?」

「自分の家に帰ってゆっくり休む事にするよ。今日はもう疲れたしな」

「そっか。じゃ、機会があったらまた会おうぜ」


 俺たちはアルベルトと別れ、自分達の住む町へと戻った(勿論、ワープを使って)。トレラントに戻ると、いつもと変わらない賑やかな町並みが俺たちを出迎えてくれた。どうやらこの町には魔物は出没していないようだ。そこは一安心。


「それじゃあ、私はこの辺で失礼するわね。今日は久しぶりに皆と会えて楽しかったわ」

「うんっ!あたしも久しぶりにフリント姉ちゃんと会って楽しかったよ!…それと、さっきはあたしの事を助けてくれてありがとう」

「ふふっ、どういたしまして」


 俺たちはフリントとも別れ、家に帰る。今日の晩御飯は久しぶりに俺の大好物であるから揚げだった。やっぱり、たくさん動いた後の食事はとても美味しい。俺たちは今日の出来事を振り返りながら、楽しく食事をした。


「そう言えば、さっきあんたが言ってた新たな力って奴なんだけど」


 その途中、クリムが俺にその事について聞いてきた。


「ああ、あれか?あの力なんだけど、俺ががむしゃらに剣を振ってたら突然出てきたんだ。どうして急に出てきたのか、俺にもよく分からないけど…」

「ふーん、不思議な事がある物ね。魔法の件といい、あんたって生まれつきどういう素質を持っているのかしら?」


 そんな事言われてもな…。俺、何度も言ってるけど元々は別の世界から来た訳だし。魔法で俺だけやたらと火力が強いのは、『神の力』が間違って俺の体に入り込んでしまったのが原因なんだけど…。

 …待てよ。これは俺の勝手な予想だが、ひょっとして剣からビームが出たのもその『神の力』による影響だったりするのか?


「ねえねえ、ナオちゃんが新しく手に入れたその力、どんな感じなのか見てみたいな!明日ギルドで仕事する時に見せてくれる?」

「え?…ああ、覚えていたらね」


 ミントはその力について興味津々のようだ。あまり他人に気安く見せていい物ではないような気がするが…。まあ、使いどころを間違えなければ問題はないか。

 よし、明日ギルドで仕事をする時にその力が出せるかどうか試してみる事にしよう。

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