新たな力
2月21日追記・話の後半部分を書き直しました。大幅に変わってます。
『い、いてェェェェェ!!お、俺様の腕がァァァァァ!!!』
ケージは左腕を丸ごと切断されて苦しんでいた。腕はいくらでも復活させる事が出来るとはいえ、かなり痛がっている様子だ。さっきアルベルトに腕を切断された時は痛がっていなかったのに…。これもあのビームのおかげだろうか。
突然、俺の腕に宿った謎の力。…もしかしたら、この力で奴を倒す事が出来るかもしれない。今度こそ希望が見えてきた。
「はああああっ!」
俺は再び剣を振ると、そこからまたビームが放出された。今度は右腕の方に向かって一直線に飛び、左腕の時と同じようにバッサリと切断した。
『ぎゃあああああっ!!右腕がァァァァァ!!!』
右腕を切断するとケージはまた絶叫する。この様子だとかなり効いてるようだ。よし、次はこの部分を狙うぞ!
今度は奴の上半身に狙いを定め、俺は再び剣を振ってビームを放つ。
『ググ…。ぬ、させるかあっ!!』
ケージは俺の放ったビームに気づき、急いで身体を後ろへ回転させる。だが、俺の攻撃にそんな物は通用しなかった。ビームは奴の上半身を貫き、ケージの身体がパックリと横に割れた。
『な…なにぃぃぃぃぃ!?』
奴の上半身と下半身が分離され、地面に落ちていく。ベアトリスが閉じ込められていた方の下半身はゆっくりとうつ伏せに倒れていき、その衝撃で姫は外へ放り出される。
「きゃっ!」
「い、一体何が起こって…。はっ!ひ、姫!」
ケージの左腕から解放されたシャルルは起き上がると、向こうにベアトリスが倒れているのを見てすぐ駆けつけた。
「姫、ベアトリス姫!大丈夫か!?」
「うっ…。シャ、シャルル?そこにいるのはシャルルなのね?」
「そうだ、私だ。…姫、無事で良かった!」
「ああっ、シャルル!」
シャルルとベアトリスは無事に再開出来た事を喜び、抱きしめあう。…一応、姫を助けたのは俺なんだけどな。
まあとにかく、姫を無事に助け出す事が出来て良かった。さあ、後はあいつを倒すだけだ。
『ぐううっ…。お、おのれェェェェェ!!よくもこの俺様をコケにしやがったなァァァァァ!!もう絶対に許さん、貴様らまとめて一気に食い殺してやる!!』
ケージはバラバラになった身体をくっつき合わせ、元の姿に戻っていく。身体は修復されたものの、奴のプライドはもう既にズタズタになっている。
ここまで来たら、もう負ける気はしない。
「みんな、ここから離れて!とどめは俺がさすよ!」
俺は皆に後ろへ避難するよう呼びかけた。シャルルはダメージを受けて動けなくなっていたアルベルトを抱えながら後ろに避難していった。
よし、これで準備は整ったな。俺は剣を前に突き出し、魔法を唱えた。
『バーストっ!!』
魔法を唱えた途端、剣の先端から赤い球が勢いよく放たれる。反動で俺が後ずさりしてしまうくらい、相変わらず衝撃が強い魔法だ。
俺が放ったバーストは奴の身体に命中し、そのまま激しい爆発を起こした。
『こ、この俺様が…。この俺様が人間ごときにィィィィィ――!!!』
ケージは断末魔を上げ、爆発と共に粉々に砕け散った。
「や、やったのか…?」
爆発で起きた煙が消えると、ケージの姿はもうどこにもなかった。やっぱりさっき奴が言ってた通り、全身を粉々にすれば倒す事が出来るようだ。
…勝った。俺、勝ったんだな。あの化け物に!俺はあの魔物を倒せた事に安心すると、たちまち全身の力が抜けてその場にへたり込んだ。
「す、凄い…!君は魔術師の中でも相当な実力を持っているみたいだな。君がいてくれて本当に助かったよ」
後ろに避難してたシャルルたちが俺の近くに寄って来る。シャルルは俺の実力に関心しているようだ。へへっ、王子様からそう言われると何だか照れるな。
「さっき私をあの化け物から解放してくれたのは貴方ね?貴方、シャルルと同じくらい勇敢で素敵だったわ!」
同じくベアトリスが俺の事を褒めてくる。王子様とお姫様の両方から褒められるなんて、夢でも見ているかのような気分だ。そのうち王様か女王様からも褒められる時が来るのかも…。
「私の名前は既にシャルルから聞いてると思うけど、改めて自己紹介するわね。私の名前はベアトリス、この国の王女よ」
ベアトリスは俺に自己紹介をしてくる。遠くから見ても十分綺麗な人だと分かっていたが、こうして間近で見ると本当に美しい。お姫様と言うだけあって、俺が今まで出会った女の人の中でもとびっきり上品な印象だ。
シャルルはこんなに美しいお姫様といつも一緒にいるのか…。何だか彼が羨ましく感じるな。
「ええと、貴方の名前は…」
「ナオトって言います。イースタン地方にあるトレラントって町から来ました」
「あら、そうだったの。そんなに遠い所からここまで来てくれたのね。ご苦労様」
まあ、ワープを使ったから一瞬で着いたんだけどな。
「おいナオト、お話し中の所悪いけど先に俺の怪我を治してくれないか?さっき壁に叩きつけられたせいで身体が思うように動けないんだ」
「ああ、今から治すよ」
俺はアルベルトに近づき、彼の肩に触れてヒーリングを唱える。魔法を唱え終わるとアルベルトはすっかり元気になった。
その後、俺はアルベルトからそろそろクリム達がいる公園まで戻ろうと催促してくる。もっと二人と話をしたかったが、いつまでも彼女らを待たせる訳には行かないしな。
俺たちはシャルルとベアトリスにさよならをし、闘技場から出ようとすると――。
「ナオトー、アルベルトー!あんたたち、そこにいたのね!」
向こうからクリム達がやってきた。げげっ、俺たちがいつまでも戻ってこないからわざわざ探しに来たのか?何だか気まずいなぁ…。
「ク、クリム?どうしてここへ」
「そんなの決まってるでしょ!あんたたちがいつまでも公園に戻らないから心配して探したのよ!一体そこで何をしてたの――」
「…あれ?クリム姉ちゃん、ちょっと待って!ナオちゃんとアルベルト兄ちゃんの側にいるあの二人、どこかで見た事がある気がする!」
「ん?あんた、その二人について何か知ってるの?」
「うん。昔ね、この町で大きなお祭りがあった時に見かけたよ。確かこの国の王子様とお姫様だったかな…?」
「「お、王子様とお姫様!?」」
ミントの発言を聞いてクリムとナラが仰天していた。まさか俺が偉い人と一緒にいるだなんて思ってもいなかっただろう。
「ナオト、あんたどうしてそんなに偉い人と一緒にいるワケ?詳しく教えて」
俺はクリム達に、どうしてこの二人と一緒にいるのか訳を話す事になった。