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囚われのお姫様

 俺とアルベルトは仰天した。俺たちの目の前にいる人物は、なんとこの国の王子様だというのだ。確かにこの人は気品溢れる雰囲気が出ていたが、まさか偉い人だったとは思ってもいなかったので完全に面を食らった。


「「こ、これは失礼しました、王子様!」」


 俺たちは背筋をピンと伸ばし、気を付けの姿勢になる。相手は王子様なので、無礼な行為をしてしまえば痛い目に遭うかもしれないからだ。

 そんな俺たちの行動を見て、シャルルの口から笑いが漏れる。


「ははは、そんな礼儀正しくしなくても大丈夫だよ。私はそこまで傲慢な性格ではないからね。…あ、それと私の事は呼び捨てで呼んでも構わないよ」


 シャルルにそう言われ、俺たちはまたいつもの姿勢に戻った。…呼び捨てで呼んでもいいとは、随分と謙虚な王子様だな。それじゃあお言葉に甘えて。


「えっと…シャルル?ここにいる魔物は全て片付いたので、俺たちはそろそろ仲間のいる公園に戻ります」

「そうか。もう君たちとはここで別れてしまうんだな…。せっかく出会えたのに残念だ」

「まあ、あんまり仲間を待たせてしまうのも良くないっすからね。クリムの奴にまた怒られるかもしれないし。…じゃ、戻ろうぜナオト」


 俺たちはシャルルと別れ、クリムたちが先で待っているであろう公園に戻ろうとした。と、その時…。


「シャルル王子ー!」


 向こうからシャルルを呼ぶ声がした。声が聞こえた方を見ると、シャルルとは異なる銀色の鎧を着た兵士と思われる人物がこっちに向かってくる。ここは城下町だから、そこにいる兵士の一人だろうか。


「どうした、何があったんだ?」

「も…申し上げますっ!ベアトリス王女が、巨大な魔物に連れ去られてしまいました!」

「な、なんだって!?姫が!」


 どうやらベアトリスという名前のお姫様が魔物に攫われてしまったらしい。お姫様が魔物に攫われるというのはこれもゲームとかでよくある話だが、まさか実際にもそういうケースがあるなんてな…。


「姫は今どこにいるんだ!?」

「ベ、ベアトリス王女は魔物と共に闘技場の方へいる模様!」

「分かった、闘技場だな!…待っててくれ、姫!私が今助けに向かう!」


 シャルルは急いで闘技場へと向かう。この国の王子というだけあって実力はかなりの物だろうが、相手は正体不明の魔物だ。そんな奴を倒しに一人で行こうとするのはあまりにも危険すぎる。

 …こうなったら、俺もそっちへ向かうしかなさそうだ。


「待ってください、シャルル!俺も一緒に戦います!」

「何、君も共に戦ってくれるのか?」

「はい!あの魔物についてなら俺の方が少しだけ詳しいし、それに俺は以前にも似たような奴を倒した経験があるので」

「…そうか、君がそこまで言うのであれば頼りにさせて貰うとしよう。よし、行くぞ!」


 シャルルは俺のお願いを快く引き受け、彼と一緒に戦う事になった。だが、アルベルトはそれをよしとしていない様子だ。


「おい、急に何を言い出すんだナオト!皆が俺たちの事を待っているというのに、そんな事をしてる時間はないだろうが!」


 …確かに、今はあまり時間がない。町中にいる魔物を全部片付いたら公園に戻るってクリムが言ってたしな。


「だけど、アルベルト。一人で戦うより誰かと一緒に戦った方が安心して戦えるだろ?それにナラが言ってたんだ、困ったときはお互いに助け合うって」

「…」

「だからさ、ごめん!アルベルトは先に皆のいる場所に戻ってて!…大丈夫、俺はそう簡単に奴にやられたりはしないよ」


 俺はアルベルトにそう言って、シャルルと一緒に闘技場へ向かおうとした。しかし…。


「おい、待てナオト!」


 アルベルトが俺をまた止めようとする。何だよ、どうしても俺を行かせないつもりなのか?


「…しょうがねぇ、俺も一緒にその魔物を倒しに行ってやるよ。この状況で俺だけ戦いに参加しないってのも何だかカッコ悪いしな」

「アルベルト…!でもいいのか?クリムに怒られるのは嫌なんだろ?」

「確かにそうだが、まああいつに怒られるのはもう慣れっこだからな。そんなお前だってクリムに怒られる覚悟は出来ているんだろ?」

「…ああ、とっくに出来てるよ」

「よし、決まりだな。…さあて、俺たち三人でお姫様を救出しに向かうとしますか!」


 アルベルトも一緒に戦ってくれる事になり、俺たち三人で王女を助けに向かった。これだけの戦力ならばどんな敵が来ようとも絶対に勝てるはずだ。俺はそう確信した。




 闘技場に行くと、そこには10メートルもあるであろう巨大な魔物が立ちふさがっていた。あいつがさっきの兵士が言ってた魔物らしいな。

 魔物は鳥かごのような身体から手足と頭部が出ているという奇怪な見た目をしており、不気味な印象だ。


「…あっ、姫!そこにいるのか!?」


 シャルルは奴の胴体部分を見てそう叫んだ。よく見ると、その中には綺麗なドレスを着た一人の女性が閉じ込められている。どうやらあの人がベアトリスという名前のお姫様のようだ。


「そ、その声はシャルルなの?シャルルー!私はここよー!」


 ベアトリスはシャルルの呼び声に気づき、大きな声で叫ぶ。とにかく、目的のお姫様を見つけ出す事は出来た。後は彼女をどうやって助け出すか、だが…。


『グッグッグッ…。貴様、この俺様の中にいるこの女を助けたいようだな?』


 どうやって助けるか考えていると、突然魔物が喋り出した。…こいつ、喋る事が出来るのか。喋る魔物を見るのは初めてだったので俺はビックリした。


「ああ、そうだ!姫は返して貰うぞ!」

『ふん!そいつは出来ない相談だ。俺様はこの女を気に入ってね、後でじっくりと取り込んでやろうと思っていたのさ。せっかくのお楽しみを邪魔しないでもらおうか』


 この魔物はベアトリスを取り込もうとしているようだ。当然、そんな事をさせる訳には行かない。

 俺たちは一斉に剣を抜き、戦闘態勢に入る。


『…ほう、どうしても俺様と戦うつもりのようだな。ならば仕方ない、お楽しみは後で取っておくとしよう。さあ覚悟しろ人間ども!!』


 魔物は雄叫びを上げ、俺たちを威嚇してくる。あまりの迫力に思わず怯んでしまいそうになった。

 …だけどここで怯む訳には行かない。俺たちがあの魔物を倒して、ベアトリスを救出するんだ!

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