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神様のミスで、俺はとんでもない力を手に入れてしまったらしい

「――人。直人!」


 誰かが俺を呼んでる声が聞こえる。何者だ?


「直人!――藤崎直人!」


 その声の主は、前に聞いた事がある声だ。少年のような幼い声質だが、それにしては落ち着いた雰囲気がある声。間違いなく、ロゴスだ。…だけど、前に出会った時とは違い何か慌てている様子だ。何があったんだろう?

 俺はすぐ立ち上がると、目の前にロゴスがうっすらと立っていた。


「藤崎直人!僕の事が見えてる?僕の声が聞こえてるかい?」

「え?ああ、うん。しっかりと聞こえてるし、姿も見えてるよ」

「よかった。無事に君の意識と繋がったみたいだね。僕は今、一時的に君の意識に繋いで会話をしているんだ。だから実際に僕がここにいる訳ではないよ」


 ロゴス、そんな事も出来るんだ。そこら辺はさすが神様と言うべきか。

 それしてもここは一体どこなんだ?どこを見ても真っ暗な部屋だが、前に来た真っ白な部屋と何か関連性があるのだろうか。


「ロゴス、ここはどこなんだ?辺り一面真っ暗だけど」

「ここは君の心の中さ」


 こ、心の中?そう言われてもしっくりとこないなぁ。以前見た某ロボットアニメで主人公の内面世界が出てきた事があったけど、あれみたいな物なのか?

 あれもアニメや漫画だけの話だと思っていたから、実際にあるなんて思ってもいなかったよ。


「それよりも直人!僕は君に謝らなければならない事があるんだ。落ち着いて聞いてくれるかい?」

「ああ、分かったよ。それで、謝らなければならない事って?」

「君がさっきこの世界に来たばかりの際、ファングっていう狼のようなモンスターに襲われてただろ?」

「ああ、襲われてた。あの時は本当に死ぬかと思ったよ」

「それで、君が襲われる直前になった時に君の片手からエネルギーが放出されていたのを覚えてるよね?」


 俺の片手から…。あ!さっきから気になってたあの謎の力の事だ!まさかあれってロゴスの仕業だったのか?


「ああ、あれの事か!あれのおかげで助かったけど、あの力って何なんだ?」

「実はね…。君がさっき使ってたその力は、僕が君に能力を授けた際に間違って入れてしまった物なんだ」

「えっ、間違って入れてしまった力だって?」

「君がさっき使ってた力は、本来なら人間は使っていけない『神の力』という奴なんだ。その力は、名の通り僕のような神にしか使う事が出来ない」

「それを間違って、俺に授けてしまったという事なのか?」

「うん。…正直、後で気づいた時にはビックリしてしまったよ。まさか僕とあろうものがあんなミスをしてしまうなんてね」


 さっき放たれた力は、本来なら神様しか使う事の出来ない力だったのか。どうりでクリムやナラは知らない訳だ。というか、そんな物騒な物を間違えて渡してしまうなんて…。ロゴスも案外、おっちょこちょいな所があるんだな。


「じゃあ、ロゴスは俺の持っているその神の力という物を取り返しにきたって事なんだな?」

「本当ならそうしたいんだけど、ここでは無理だよ。一時的に君の意識に繋いで遠くから会話をしているだけだからね。君に直接触れる事は出来ないよ」


 まあ、今のロゴスの体は半透明になっているからな。俺でも何となく分かる。


「…あ!だったらさ、ロゴスがこの世界に直接来ればいいんじゃないか?その時に俺の体にある神の力を返せば一件落着だろ」

「いや、それは駄目だ。神が人間界に直接来る訳にはいかないよ。あくまで僕の役割は、全世界を監視する事だ。そんな僕が席を外してしまったら、その隙に誰かによって悪用される危険性もある」


 そうなのか。神様も色々と大変なんだなぁ。俺が神様だったら間違いなくやってられないな。


「だから君に残された道は一つしかない。もう一度死んで、僕のいる部屋まで来れば…」

「いやいや、また俺に死ねっていうのか!?せっかく別の世界で蘇ったのに!?」

「でも君の持っている神の力を返すにはこうするしかないんだ。言っておくけど、神の力は一人の人間が気軽に扱える物じゃない。下手をすれば、この世界を滅ぼしてしまうかもしれないんだよ」


 …この力を使えば、俺はこの世界を滅ぼしてしまうかもしれない。俺はロゴスの話を聞いて背筋がゾクッとなってしまった。俺のせいで世界が滅んでしまったらたまったもんじゃない。

 でも、だからといって俺は死ぬ訳にはいかない。せっかく蘇って、おまけに可愛い女の子と出会えたんだ。こんなチャンスは絶対に逃したくないというのが本音だ。


「なあロゴス、頼むから俺を死なせるのだけはやめてくれよ。それに、さっきはこの力があったおかげで俺は助かったんだ。だから、間違って手に入れてしまったとしても結果オーライさ」

「うーん…。そこまで言うのなら、君を誘うのだけはやめておこう。ただし、一つだけお願いがある。どうかその力を悪用しないで欲しい」

「悪用って、例えばこの力を使って相手を傷つける事とか?」

「そう。特に君は今、第二次性徴期に入っているから心が不安定な時期だ。色んな悩み事が増え、下手すれば他人と触れ合うのが怖くなって相手を傷つけてしまうかもしれない。…その際に、神の力を使って自分の気に入らない物や人間を傷つけるのだけはやめて欲しいんだ」


 …他人と触れ合う事が怖くなり、神の力を使って相手を傷つけてしまうかもしれない。そんな機会があるのか分からないけど、気を付けておかないとな。

 相手を力で傷つけ、本当に傷ついてしまうのは自分なんだから。


「分かったよ。どんなに辛い事があったとしても、俺は神の力で相手を傷つける事は絶対にしないって約束する」

「僕の約束を守ってくれるんだね。どうもありがとう。君なら出来るって信じてるよ」

「ああ。だからロゴス、安心して向こうから俺を見ていてくれ」


 俺がそう言った途端、ロゴスの体が徐々に消えていく。どうやらこれで話は終わりのようだ。


「それじゃあ、また会おうね。藤崎直人」


 ロゴスがそう言うと、突然目の前が真っ白に輝き始め――。




 ガバッ。


 俺はベッドから飛び起きた。どうやら、俺はいつの間にか眠っていて夢を見ていたらしい。俺はベッドの隣にあった窓から外を見ると、空が赤く染まっていた。もう夕方のようだ。

 ふぁーあ。そんな時間になるまで俺は眠っていたのか。


「ナオトー。晩御飯が出来たわよ!部屋から出て降りて来なさい」


 扉の向こうから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。この声はクリムだ。はは、まるでお母さんみたいだな。

 俺は心の中で笑いながら、自分の部屋から出て一階へと降りて行った。

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