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同時刻、別の地区にて(後編)

後編はミント視点です。

他のキャラの視点で書くのはなかなか難しい…(特に今回)。

 ――やっほー、あたしミント!あたしね、今フリント姉ちゃんと一緒に町の中にいる皆を助けに行くところなの。一人だと絶対心細いから、姉ちゃんが一緒にいてくれると安心するなぁ。


「ミントちゃん、君はクロスボウを持っているから近くに行って戦うのはやめた方がいいわ。接近戦は私が引き受けるから、君は遠い所にいる魔物を中心に狙って」

「うん、分かった!」


 あたしはフリント姉ちゃんの言う事をしっかり聞いて、町の南側へ向かったよ。…そう言えば、町の南側ってあたしの家がある所なんだよね。お母さんは大丈夫かな…。


「あっ、見て!あそこで人が魔物と戦ってる!」


 南側に着くと、そこにはたくさんの人が武器を持って魔物と戦っている。さっき出会ったアルベルト兄ちゃんみたいに、この町に住む冒険者たちが駆けつけてくれたのかな?だったらあたしたちも頑張らなくちゃ!


「私たちも加勢した方が良さそうね。ミントちゃん、さっきも言ったけど君は遠くにいる魔物を狙って!」


 フリント姉ちゃんはそう言って他の冒険者たちと一緒に戦いに行った。…えっと、あたしは遠くにいる魔物を探さなきゃ。どこにいるのかなー、うーんと、うーんと…。


(あっ、見つけた!)


 よく見ると、建物の上に人間みたいな形をした魔物が一匹いるのが見える。もしかして、上から襲ってあたしたちを驚かそうとするつもりなのかな?そんな事はさせないんだから!


「えーいっ!」


 あたしは魔物に狙いを定めて、クロスボウから矢を放つ。矢は魔物に見事命中!あっという間に消えちゃったよ。ふぅ、何とか倒す事が出来たね。

 丁度、フリント姉ちゃんたちも魔物退治が終わったみたい。


「片づけたわよ、ミントちゃん。思ったよりどうって事は無かったわね」

「うん、あたしもそう思う!」


 姉ちゃんの言う通り、確かに魔物はあたし一人でも倒す事が出来たよ。見た目は怖いからちょっとだけ拍子抜けしちゃったかも。


「いやーっ、誰か助けてー!」


 すっかり安心していると、向こうから女の人の悲鳴が聞こえてきた。…あれ、この声あたしがよく知ってる人と似てる!もしかして…。


「フリント姉ちゃん、あっちで声が聞こえたよ!行ってみようよ!」

「分かったわ、奴等に襲われる前に早く助けに行かないとね!」


 あたしたちは悲鳴の聞こえてきた方に向かって、急いで走った。早くしなきゃ、間に合わなくなっちゃう…!


「…見つけたわよ!あの人がさっきの声の主ね!」


 向こうには女の人が、大きいクモのような魔物に襲われそうになっているのが見えた。よく見るとあの人、あたしと同じ髪の色で髪型も一緒。

 …あたしの予想は間違ってなかったみたい。やっぱり、あの人はあたしのお母さんだ!


(――待っててお母さん、今すぐあたしが助けるからね!)


 あたしは魔物に向かって矢を放つ。矢はまたまた魔物の身体に命中!…したのはいいんだけど…。


「…あ、あれっ!?全然効いてない?」


 この魔物、矢が直撃したくらいで倒れてくれないの!おかしいよ、さっきの奴は一発で倒せたのに!もしかして、この町に現れた魔物の中でも強い奴だったりするの?

 魔物は今当たった矢であたしの事に気づいて、こっちに向かってくる。あわわ、虫みたいな動きで襲ってきて凄く気持ち悪いよぉ…!

 どうしよう、こんなのあたし一人じゃ勝てる訳ないよ!お願いフリント姉ちゃん、あたしを助けて――!


「ミントちゃん、危ないっ!はああああっ!!」


 あたしが助けを求めた時、フリント姉ちゃんの声が聞こえてきた。気が付くと姉ちゃんは魔物の上空にいて――。


 ――バッコォォォォォン!!


 フリント姉ちゃんの放った拳が魔物の身体に勢いよくぶつかり、そのまま潰れて消えちゃった。…す、凄い威力。フリント姉ちゃんの拳をこんなに間近で見たのは初めてかも。あたしもあれくらい強くなりたいなぁ。


「ふぅ、危なかったわね。怪我はしてない?」

「…う、うん。あたしは大丈夫だよ。助けてくれてありがとう、フリント姉ちゃん!」

「言ったでしょ、接近戦はあたしが引き受けるって。…どうやらこの騒ぎ、簡単に収まる訳は行かなさそうね。気を引き締めて行きましょ」

「うん、分かった!…あ、それよりもお母さんは大丈夫かな?」

「お母さん?ひょっとして、私の後ろにいるあの人の事?…言われてみれば、確かに君そっくりね」


 そ、そうかな?何だか照れちゃうな。あたしが言うのも何だけど、お母さんは綺麗な人だから…。


「ミントちゃん、今のうちにお母さんに会ってきたら?今なら魔物は出ていないから大丈夫よ」

「うん!…すぐ戻って来るから、待っててね」


 あたしはお母さんの所へ近づく。お母さんは体を震わせていて、まだ殆ど安心しきっていないみたい。あたしが声をかけて安心させなくちゃ。


「だ、誰なの…?さっきの怪物の仲間じゃないわよね!?」

「お母さん、あたしだよ。ミントだよ!」

「そ、その声は…。ミント?ミントなのね!」


 お母さんは安心した表情になって、あたしに抱きついてきたよ。…えへへ、お母さんに抱かれるのって何年ぶりになるんだろ。あたし、こんな一大事なのに何だか安心しちゃった。


「ミント、元気そうで良かったわ。私、あなたが家を出てからずっと心配していたのよ。あなたの事だから怖い人か魔物に襲われているんじゃないかって…」

「…えへへ、心配かけちゃってごめんね。でもね、今はとっても頼りになる仲間たちがいるから大丈夫だよ」


 そう言えばお母さん、あたしが冒険者になるって決めた時に凄く反対してたっけ。冒険者は危険な職業だから、あたしのような友達のいない人が軽々しくなってはいけないって。

 最初は大げさだと思っていたけど、今ならお母さんの言ってた事が分かる気がする。


「そう、あなたにも立派なお友達が出来たのね。…だったら、もう私が心配する事もないわね」

「どうして?」

「あなたが私の元から離れてもこうして元気でいてくれるのは、お友達があなたの事を支えてくれるからだと思ったのよ。あなたはお友達に恵まれているわね」


 確かに、仲間はあたしの事を大切にしてくれている。クリム姉ちゃんにナラ姉ちゃん、フリント姉ちゃんに、――そしてギルドでの生活を一から教えてくれたナオちゃん。

 みんな、初心者である私の事を支えてくれる大切なお友達。そんなお友達と一緒にいるからこそ、今の自分がここにいる。


「…うん!あたし、もうお母さんがいなくても平気だよ。みんながあたしの事を大切にしてくれるから。だからお母さん、安心してね」


 あたしはお母さんにそう言って立ち上がる。そろそろ戻らないと、姉ちゃんを待たせてしまうからね。…本当は、お母さんともっと一緒にいたいけど。


「もう行くの?」

「うん。そろそろ行かないと、あたしの友達が心配しちゃうから。…それじゃあお母さん、またねー!」

「いってらっしゃい、ミント。また会いましょう」


 あたしはお母さんに別れを言い、フリント姉ちゃんの所へ戻る。久しぶりにお母さんと出会えて嬉しかったよ。またいつか、会えるといいな…。

次回から再びナオト視点に戻ります。

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