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同時刻、別の地区にて(前編)

今回は前編と後編の二本立てでお送りします。

前編はナラ視点です。

 ナオトが町に現れた魔物を退治していた頃、他の仲間たちも町中を駆け回り精一杯励んでいた――。




 ――ナラです。私たちはクリムさんの提案で、手分けしながら魔物を退治する事になりました。私はクリムさんと一緒に町の東側を探索しています。

 町の被害は私たちが思っていたよりもずっと深刻な状況で、建物から火が出ていたり、中には完全に崩壊しているのもありました。


「…こいつは酷い惨状ね。あたしたちが以前ここに来た時とは考えられない変わり様になってるわ」


 クリムさんは町の様子を見て言いました。…確かに、あんなに賑やかだった場所とは思えないくらいにこの町は変わり果ててしまっています。私はそれを見て、胸の奥が痛くなってしまいました。どうしてこんな事に…。


「ナラ、大丈夫?あんた顔色が悪いわよ」

「だ、大丈夫です…。ちょっとショックが大きくて、つい」


 クリムさんは私の顔を見て心配している様子でした。そう言ってくれるだけでも嬉しいですよ、クリムさん。

 そんな事をしている間に、私たちの目の前に魔物が現れました。魔物は人の形のした真っ黒な見た目をしていて、たくさんいます。

 

「出たわよ、ナラ!気を引き締めて!」

「は、はいっ!」


 私は背中に背負っている大剣を取り出し、それを使って魔物たちを倒していきました。一匹一匹はそこまで強くはありませんでしたが、数が多いせいで私の動きが追いつかない…!はわわ、目が回りそうですっ。

 それでも何とか魔物を倒していると、スキを突かれてしまい私の後ろに魔物が一匹襲い掛かってきました。駄目、間に合わない――!


「ナラ、危ない!『サンダー』!」


 私が襲われそうになった直前、魔物の頭上から雷が落ちてきました。クリムさんが咄嗟に魔法を放ったおかげで、私は助かったのです。ほっ、良かったぁ。やっぱりクリムさんは私と違って動きが早くて素敵だなぁ。


「間一髪だったわね。ナラ、怪我はしていない?」

「はい、私は大丈夫ですよ!」

「それは良かったわ。…それじゃ、気を取り直して魔物を退治するわよ!」


 私たちは町の東側を駆け回りながら、そこに現れた魔物たちを次々と倒していきました。途中でその魔物に襲われている人もいたので、その人たちも助けていきながら行動しました。

 …そんな中、どこからか助けを求める声が聞こえてきます。私は周りを見ましたが、そこには完全に崩壊している建物があちこちに散らばっているだけです。一体どこに…あっ!

 よく見ると、建物の瓦礫の中に人が数名挟まっていました。崩れていく建物から脱出するのに間に合わず、そのまま生き埋めになってしまったのでしょうか。急いで助けに行かないと、取り返しのつかない事になりそう…!


「ナラ、何を探しているの?魔物がまた現れたわよ!」


 しかし、私たちの周りにまた魔物がたくさん現れます。どうしよう、魔物を倒していたらあの人たちが途中で力尽きてしまうかもしれないというのに。

 …こうなったら、クリムさんには申し訳ないですがこうするしか他に方法は無さそうです。


「あの、クリムさん!少しだけここから離れてもいいですか?」

「急にどうしたのよ、ナラ?」

「あそこにたくさんの人が壊れた建物の中に挟まっているのが見えたんです。私、その人たちを助けに行きたいんです!お願いしてもいいですか?」

「…しょうがないわね、ナラ。ほら、早く行って来なさい!こんな奴等はあたしの魔法だけでも十分行けるわ!」


 クリムさんは私の説得を聞き、一人で魔物を倒してくれる事になりました。急なお願いでも快く聞いてくれてありがとうございます、クリムさん!

 私はクリムさんにお礼を言い、急いで瓦礫の中にいる人たちを救出しに向かいました。


「皆さん、大丈夫ですか!?」


 私は瓦礫の側に近寄り、埋まっている人たちに声を掛けました。


「お、お嬢さん、わしらを助けに来てくれたのかい?」

「はい、皆さんを救出しに来ました!…待ってて下さい、今から助けますからね」


 幸いにもまだ死者は出ていないようです。ですが、自由に身動きが取れず苦しんでいる様子でした。早く助けてあげないと…!


「む、無茶だ!女の子一人の力でこの建物をどかすなんて出来る訳がない!」

「…そんな事はありません!はああああっ!!」


 私は力を振り絞り、瓦礫をどかす事に成功しました。ふぅ、これで一安心ですね。

 瓦礫に挟まっていた人たちは自由になり、ゆっくりと立ち上がりました。


「あ、あんた女の子なのに俺よりも力が強いんだな…。あんたを見た目だけで誤解していた、許してくれ」

「いえ、大丈夫ですよ。…さあ、早く避難所へ向かって下さい!」

「分かった、ありがとう!あんたは俺たちの命の恩人だよ!」


 皆が私に感謝の言葉を言った後、急いでその場から立ち去りました。私はクリムさんのいる所へ戻ると、魔物は既にいなくなっていました。

 私の読み通り、クリムさん一人でも問題なかったようです。


「ナラ、用事は終わったの?あたしなら丁度魔物を全部片づけた所よ」

「はい、全員救出してきました。…瓦礫が重かったから、少し時間はかかりましたけど」

「それなら良かったわ。ナラ、相変わらずあんたの馬鹿力は役に立つわね。力だけなら誰にも負けないんじゃないかしら?」


 クリムさんは私を半分からかうように言いました。そ、そう言われるとやっぱり恥ずかしいなぁ…。でも私の力が役に立てたようで嬉しいです。


「とりあえず、ここら辺はもう魔物は現れないし、人もいないようね。それじゃあ公園に戻るわよ」


 町の東側はもう大丈夫そうなので、私たちは公園へと戻る事になりました。

 …それにしても、皆は大丈夫なのかな。魔物に襲われて怪我でもしていなければいいんだけど…。私は戻る途中、そんな事を思っていました。

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