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魔物退治と鎧を着た男性との出会い

「よし、それじゃあ皆で魔物を倒しに行こう!」

「――ちょっと待って、ナオト!全員で行こうとすると却って時間がかかるわ。…皆、ここはあたしの提案をよく聞いて」


 俺が行こうとした途端、クリムが止めてきた。何やら提案があるようだが…。


「提案って?」

「各自別々になって、町中にいる魔物たちを倒していくの。こうすれば素早く魔物を退治出来るし、それにさっきの親子のような逃げ遅れた人たちを魔物に襲われる前にたくさん助け出す事が出来るわ」


 なるほど、ばらばらになって行動すればいいんだな。確かにこれなら効率良く行けそうだ。

 皆もクリムの案に賛成し、実行に移す事にした。


「よし、じゃあ早速別々になって行動するわ。あたしとナラは町の東側、アルベルトは西側、フリントとミントは南側、そしてナオトは北側に行って来て。魔物を全員片づけたらここの公園に集合よ。いいわね?」


 俺を含めた皆は分かったというように頷く。全員無事に帰ってくる事を約束し、俺たちは分かれて町の中を走り回った。俺は町の北側へ行き、魔物がいないか、そして逃げ遅れた人はいないかをしっかりと確認しながら移動した。


「――うわああああ!!」


 と、突然二階建ての建物から窓ガラスが割れる音と共に男性が落ちてきた。思わずビクッとなり、窓の方を見上げる。

 すると、窓からトカゲのような形をした黒い魔物が現れた。こいつが今の男性を襲っていたのか?

 魔物は俺の方に気づき、窓から飛び出して外へ出る。俺は剣を抜き、一振りで奴の胴体を真っ二つにさせた。


「ひ、酷すぎる…」


 奴を倒した後、既に動かなくなった男性を見ながら呟く。罪のない人たちを次々と襲うなんて…絶対に奴等を許してはならない。俺は徐々に怒りが湧いてきた。


「きゃああああっ!!」

「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」


 今度は奥から、三匹の魔物に襲われている男女二人組がこっちへ向かってきた。魔物は全員人間にそっくりな形をしており、全速力で彼らを追い回している。

 俺は急いで彼らのいる所へ向かった。


「二人とも、ここは俺に任せて!」


 俺は襲われていた二人にそう言いながら、人型の魔物と対峙する。魔物は飛び上がり、俺に向けて襲ってきた。俺はそれを剣で防ぎそのまま奴を追い払う。

 その後、今度は魔物全員が俺に襲い掛かってきた。俺はそれに怯まず返り討ちにして全員倒す。倒した後、襲われていた二人が俺に近寄ってきた。


「あ、ありがとう!君強いんだね!」

「向こうにも人がたくさん襲われているのを見たわ!お願い、その人たちも助けてあげて!」


 二人は俺にそう言い、向こうへ走っていった。女性が言うにはこの先にも人がたくさん襲われているそうだ。…早く行かないと、さっきの男性みたいに犠牲者が出てしまうかもしれない。急ぐんだ!




 奥に行くと、広場で人がたくさん襲われている光景が見えた。中には武器を持った人たちが魔物と応戦しているのもいる。アルベルトと同じく、ここに住む冒険者が魔物と戦っているんだろう。

 俺もその人たちに加勢すべく近くへ寄る。彼らに近づくと、一人が俺の方に気づいた。


「…あ、君!その恰好はもしかして冒険者かい?」

「はい、そうです!俺も魔物を退治しに来ました!」

「そうか、助かるよ!」


 俺はここにいる冒険者たちと一緒に魔物を次々と倒していく。他の人たちと一緒にやったので、素早く終わらす事が出来た。

 一通り片づけた後、冒険者の一人が俺に話してきた。


「ふぅ、何とか倒したか。…君がいてくれたおかげで本当に助かったよ、ありがとう」

「どういたしまして。この辺りはもう大丈夫でしょうか?」

「それは分からないさ。奴等は突然、色んな場所から現れるからね。最後まで油断しない方が良さそうだ」


 確かにあいつ等は突然現れる事が多いからな…。さっきも森で突然現れて、俺たちを襲おうとしていたし。あいつ等は何故人を襲おうとしているのかは謎のままだ。このまま奴等を追っていれば、いずれ目的や正体を掴める時が来るのだろうか?


「僕たちはこれからここにいる人を避難所に連れて行くけど、君はどうするんだ?」

「俺はしばらくここにいます。まだ魔物や避難出来てない人達もいるかもしれませんから」

「そうか。じゃあ、くれぐれも気を付けるんだよ」


 俺は冒険者たちと別れ、町の中を探索していった。北側の方は殆ど魔物や人はいないようだ。やはりここはもう大丈夫そうかな?

 そんな事を思っていると、前方からアルベルトがやってきた。


「おっ、ナオトじゃないか!そっちはもうあらかた片付いたのか?」

「ああ、終わったよ。そういうアルベルトも、西側にいる魔物は全部倒してきたんだな?」

「そんな所さ。…じゃ、そろそろ公園に戻ろうぜ。クリムたちを待たせてるかもしれないからな」


 俺はアルベルトと一緒に公園に戻ろうとした時、路地裏の方から人の気配を感じ取った。まだ逃げ遅れた人でもいるのだろうか。俺は気になったので、そっちに向かう事にした。


「お、おいナオト!どこへ行くんだ?そっちには何もないと思うぞ」

「ごめん、アルベルト!先に戻っててくれるかな?」


 アルベルトに一言謝り、俺は路地裏の方へ向かう。路地裏に入ると、そこには鎧を着た一人の男性が右の肩を押さえながらうずくまっている。どうやらこの人は怪我をしているようだ。

 俺は男性に声をかける。


「あ、あの…大丈夫ですか?」

「――っ!?だ、誰だ!お前もあいつ等の味方か?」

「ち、違いますよ!俺はただ、動けなくなってる人がいるみたいだから助けてあげようと思って…」

「…そうか、敵ではないんだな」


 男性は俺を見るなり敵だと思い込んでいたようだ。俺の説得ですぐ味方側だと分かってくれたが。

 彼の足元を見ると、剣と盾が落ちている。恐らく俺と同じ冒険者の一人だろうか。


「俺はあなたの敵ではありませんので、安心して下さい。…ところで、どうしてこんな所にいるんですか?」

「…町に見た事のない魔物が暴れ出したという報を聞いて、真っ先にそいつ等を倒しに行ったんだ。だけどその時に油断して、肩を噛みつかれてしまってね…」


 それで、この人気のない場所で身を隠していたという事なのか。俺は納得した。…とにかく、ここは彼の傷を癒してあげないとな。


「ちょっとだけ失礼します」

「え?君、何をするつもりなんだ――」


 俺は男性の肩に触れ、ヒーリングの魔法で傷を癒す。傷は一瞬のうちに消えていき、元の綺麗な肌に戻っていった。


「これでもう肩は動かせるはずです」

「ん?…おお、もう全然痛くないぞ!ありがとう、助かったよ。回復魔法を使えるという事は、君は魔術師なのかい?」

「まあ、そんな所ですね」

「そうか。…さて、怪我も治った事だしもう一仕事やらないとな」


 男性はすっかり元気になり、足元に落ちてた剣と盾を拾い立ち上がる。その姿はまさに勇者といった感じだ。彼は一体何者なのだろうか。


「おーい、ナオトー!そこで何をしていたんだよ?」


 路地裏から出ると、アルベルトが俺の事を待っていた。先に戻っててくれって言ったのに…。


「…路地裏に怪我をしている人がいたから、俺が助けてあげたんだ」

「そういう事だったのか。…ん?この人、どこかで見た事があるような…」


 アルベルトは俺の側にいる男性を見ながらそう言った。彼はこの人の事を知っているようだ。

 俺は気になったので、男性に質問をしてみた。


「あの、あなたは一体?」

「…ふむ、君たちに自己紹介をしなければならないようだね。――私の名前はシャルル。この国の王子だ」


 彼がそう言い、俺とアルベルトは顔を見合わせる。そして…。


「「ええーっ!?」」


 二人揃って仰天した。

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