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戦友との再会

 俺たちは準備をしっかりと行い、フェスティに向かって出発する事にした。俺と一緒に来てくれるのはクリム、ナラ、ミント、そしてフェスティからはるばる俺を探しに来た一人の男の子だ。

 フリントはまだ森で修行をしているので、俺たちと一緒に行くのは難しいだろう。本当は彼女も入れたかったが仕方ない。


 ――がちゃっ。


 そんな事を思っていた時、玄関の扉が開く音がした。玄関の方を見ると、そこにはさっき俺たちと別れたばかりのフリントがいた。フリントは急いで町まで来たのか、息を切らしている。どうしたんだろう?


「フリント!どうしてここへ?」

「はあ、はあ…。ナオト君、大変なのよ!さっき森で修行をしてた時、見た事のない魔物に遭遇したの!」

「見た事のない魔物って…もしかして、そいつは黒い色で形は丸くなかったか?」

「そう、それよ!急に襲ってきたもんだから倒したんだけど、何か嫌な予感がして…。それで、修行をやめてこの町へ戻ってきたの」


 どうやらフリントも例の魔物に遭遇したらしい。突然目の前に現れては人を襲おうとする、異形の化け物…。一体何が目的なのか?


「あの、お姉さんもその魔物に会ったんですか?」

「そうだけど…。ナオト君、この男の子は?」


 俺はフリントに、これまでの経緯を話した。


「嘘、君が住んでる町の方にもその魔物がいるの…。どうやら状況は私が思ってたよりも深刻になってるみたいね」

「はい。このままでは僕たちの住む町があいつ等によって無くなってしまうかもしれないんです」

「…それなら、私も一緒に行った方が良さそうね。皆、私もついていくわ!」


 フリントも一緒に来てくれる事になった。ナイスタイミングだ、これで戦力はグッと上がるだろう。…さあ、早くフェスティに行かねば!


「これで準備は万端ね。さあ皆、馬車に乗ってフェスティまで向かうわよ」


 クリムが皆にそう言い、外へ出ようとしたその時――俺はふと、ある事を思い出した。


「――あ、ちょっと待って!馬車に乗るよりずっと早い移動手段があるんだ!」

「移動手段?ナオちゃん、そんな方法があるの?」

「それなんだけど…。皆、とりあえず俺の手を掴んで」


 皆は少し困惑しながらも、俺の両手を掴んだ。何故俺がこんな事をしようとしたのか。それは、大勢連れた状態でもあの魔法が使えるかもしれないと確信したからだ。


『ワープ』


 俺がそう呟くと、異空間に飛ばされる。俺の読み通り、ちゃんと皆も転送出来たようだ。


「ナオトさん、いつの間にこんな魔法まで取得していたんですか?」

「すごーい、なにこれ!周りに色んな景色が映ってるー!」

「あたしもこんなの見るのは初めてよ。…まさか、あたしよりも先にワープを取得していたなんてね」


 異空間に飛ばされた皆は色んなリアクションを見せる。特に男の子はこの空間を見て怖がっている様子だった。当然の反応と言うべきか。


「あ、あわわ…。ナ、ナオトさん、ここは一体どこなんですか?」

「ここはワープっていう魔法を唱えたら自動的に飛ばされる空間だよ。心配しないで、俺たちの周りにたくさんの風景が映ってるだろ?それに触れれば一瞬で目的地へ着くようになっているから」

「そ、そうなんですか…。魔法って凄いんだなぁ」


 俺は前方に映っているいくつかの映像からフェスティを探す。城下町だからすぐ見つけられるはず…あ、あった!俺はフェスティの町並みが映っている映像を見つけ、そこに手を触れる。その瞬間、俺たちはフェスティの入り口へと飛ばされた。

 よし、転送完了だ。相変わらず便利な魔法だな、これ。


「わわっ!こ、ここは僕の住んでる町だ!」

「言っただろ?一瞬で目的地に着くって。…よし、行くぞ!」


 俺たちは入り口に向かって走り、町内に入る。町の中はまるで悪夢のような光景だった。黒い色をした魔物に襲われ悲鳴を上げながら逃げる町の人々、火に包まれる建物…。俺たちはその光景を見て恐怖した。


「そ、そんな…。僕の町がいつの間にかこんな事になっているなんて…」


 男の子はショックのあまりに膝を落とす。無理もないだろう、自分の生まれ育った故郷がこんな悲惨な目に遭っているんだから…。

 彼が悲しんでいたその時、向こうから男性と女性の悲鳴が聞こえてきた。


「あ、今の声は…お父さんとお母さんだ!」


 男の子はそう言うと、俺たちを置いていき悲鳴が聞こえてきた方に向かって走り出した。


「ちょっ、あんた!一人で行ったら危ないわよ!」

「俺たちも追いかけよう!」


 俺たちも男の子を追いかける。彼が向かった先は、以前俺たちが訪れた事のある大きな公園だった。公園には男の子の両親と思われる人物が、魔物に襲われそうになって身動きが取れないでいる。魔物は今にも彼らを襲おうとしている様子だ。

 急いで二人のいる場所へ向かおうとするも、距離があまりにも遠くとても間に合わない。…くそっ、俺たちはこの家族を救う事は出来ないのか?

 ――そう諦めかけていたその時だった。


 ズバッ!!


 突然、魔物が巨大な剣に斬られて消滅した。俺たちの代わりに魔物をやっつけてくれたようだ。一体誰だろう?俺は目を凝らすと、そこにいたのは俺が以前会った事のあるあの人物だった。


「あ、あんたは…アルベルト!」


 そう、そこにいたのは以前大会で俺と戦ったアルベルトという人物だったのだ。彼は剣を背中にしまい、俺たちの方を見る。


「おっ、誰かと思えばナオトじゃないか!久しぶりだな」

「ああ、前に俺たちがこの町へ来たぶりだな。アルベルト、あんたも魔物を退治していたのか?」

「そんな所だな。何せ、この城下町は今最大の危機に瀕しているんだ。それをほっといたら戦士失格だからな」

「そっか。…ありがとな、俺たちの代わりにあの人を助けてくれて」


 このタイミングでアルベルトが助けに来てくれて本当に良かった。もし来てくれなかったら、今頃あの家族はどうなっていたか…。そう考えただけでも恐ろしい。


「た、助けてくれてありがとうございます!おかげで助かりました!」

「なーに、いいってもんよ。…さ、早く避難所へ行くんだ。またあいつ等に襲われる前にな」

「は、はい!」


 家族はアルベルトにお礼を言い、その場から去っていった。とにかく、彼らが無事で一安心といった所か。


「ところで、お前たちも魔物を退治しにきたのか?」

「ああ。さっきあんたが助けた男の子が俺たちの住む町に来て、この町を助けて欲しいって言われたんだ」

「そういう事か。…よし、だったら俺と一緒に魔物を倒そうぜ。いいよな?」

「ああ、勿論だ!」


 俺たちはアルベルトと一緒に、この町に現れた魔物たちを倒す事にした。彼も一緒に戦ってくれるというのならとても心強い。

 …さあ、俺たちでフェスティを救うんだ!

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