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謎の魔物と遭遇!

 俺たちはフリントと別れ、昼ご飯を食べるため町まで戻る事にした。ミントはもう既にお腹を空かせているらしく腹の音が鳴っている。これは寄り道しないで真っ直ぐ戻らなきゃ、彼女の機嫌を損ねてしまうな。


「…あれ?見てナオちゃん、地面に何かあるよ」

「ん?」


 道を歩いている途中、突然ミントが地面を指差しながらそう言った。彼女が指差した方を見ると、地面に黒い影のような物がいくつもある。上に誰かいるのか?と思ったが、そうでもない。見くみると、影は実体を持っているかのように気味悪くうごめいている。な、何なんだこれは?


 ――グワッ!!


 俺が疑問に思いながら眺めていると、突然その影が勢いよく飛び出してきた。影は球体の形をしており、鬼のような二つの角に鋭く光る牙が目立つ口、そして不気味で大きな一つ目。俺たちが今まで見てきた魔物の中でも明らかに異様だ。


「な、何なんだこいつは…!?ミント、こいつ等の事何か知ってるか?」

「わ、分からないよ!あたし、こんな奴見るの初めてだもん」


 ミントはこの謎の魔物を目にして怯え、急いで俺の後ろに隠れた。球体の形をした影は俺たちの事を不気味にニヤつきながら見ている。奴等は口を大きく開け、今にも襲い掛かろうとしていた。…何者かは知らないが、ここはとにかく奴を倒すしか道は無さそうだな。

 俺は剣を抜き、奴等が襲い掛かってきたと同時に剣を振った。


「やあっ!たあっ!でやあっ!!」


 俺は魔物を一匹一匹確実に仕留めていく。幸いこいつ等はさほど強いという訳ではなく、神の力を使わなくとも剣一振りだけで問題なく倒す事が出来た。

 影たちは俺に倒されると、一瞬で霧状になり消滅していく。


「…ふぅ、これで全匹倒したかな。もう前に出てきても大丈夫だよ、ミント」


 俺は後ろに隠れていたミントに呼びかけると、彼女はまだ怯えた様子ながらも前に出てきた。

 …しかし、今現れた奴等は一体何者だったんだ?もしかしたら普段は滅多に見かける事のないレアな魔物とかだったりするんだろうか。帰ったらクリムにその事について聞いてみようかな。


「――きゃーっ!」


 魔物を倒して安心しきっていると、突然向こうから悲鳴が聞こえてきた。今度は一体何だ?


「ねえナオちゃん、あっちで女の人の声が聞こえてきたよ!」

「ああ、行ってみよう!」


 俺たちは悲鳴の聞こえてきた方に向かい急いで走り出した。悲鳴が聞こえてきたのは森を抜けた先の草原だった。向こうを見ると俺たちと同じ冒険者だと思われる三人組が数体の魔物に襲われているのが見える。魔物の数は5匹くらいといった所か。

 彼らを襲っている魔物をよく見ると、なんとさっき俺が倒した球体の影と同じ奴だった。あいつ等、こんな草原にも出没しているのか?


「ナオちゃん、早くあの人たちを助けに行かないと!」

「分かってるよ!…ミント、君はここで待ってて!」


 謎は多いが、今はとにかくあの三人を助ける事だけを考えねば!俺は急いで彼らのいる所へ駆け寄った。


「あの、大丈夫ですか!?」

「き、君は…?もしかして俺たちを助けに来てくれたのか?」

「そういう事!ここは俺に任せといて下さい!」


 俺は三人を襲っているモンスター達をまた一匹ずつ確実に倒していった。さっきより数は多いがどうってことはない。何の問題もなく全匹倒す事に成功した。…が。


「うわっ!?」

「う、嘘でしょ…?」


 倒して安心したのも束の間、地面からまた球体の魔物がたくさん飛び出して来た。しかも今度は明らかに数が増えており、その数は10、20…30匹!?いくら何でも出過ぎだろ!


「わ、私は悪夢でも見ているのか…!?」

「冗談じゃないわ!あんなの倒せる訳ないじゃない!」

「まずいぞ、このままでは俺たちあいつ等に食い殺されてしまう!どうすればいいんだ!?」


 三人の冒険者はこの光景を見て絶望している様子だった。無理もないだろう、あんなにたくさんの異形の化け物が目の前に現れたら誰だって絶望する。…こうなったら、あの力を使うしかない。

 俺は剣を上にあげ、魔法を出す態勢に入る。


「おい君、何をやっているんだ?」

「も…もしかして、魔法であいつ等を倒すつもりなの?」

「おいガキ、いくらなんでもムチャだ!魔法を使った所であいつ等を全員倒せる保証はどこにもないぜ!?」


 三人は魔法を使おうとする俺を見て困惑しているようだ。確かに普通の魔法だったら、あの魔物たちを一気に倒す事は不可能に近いだろう。…だが、『神の力』が入った魔法を使えば――!


『ライトニングっ!!』


 俺が魔法を唱えた途端、魔物たちの頭上に強い雷が落ちてきた。雷は魔物たち全員に直撃し、小気味よく消滅していく。相変わらず俺の放つ魔法は凄い威力だ。そのおかげもあり、さっきまであんなにたくさんいた魔物たちは一瞬にして全滅した。

 影の魔物はしばらく経っても地面からまた飛び出してくる気配がしない。どうやらこれで全匹のようだ。


「す、凄いわ…。あんな奴等を一瞬で倒すなんて!あなた、まだ若いのに只者ではないわね」

「ああ。私の使う魔法とは桁違いの威力だ。おかげで助かったよ、ありがとう」


 ふぅ、何とかこの人たちを助ける事が出来たな。怪我はしていないようだし、さっさとミントの所へ戻るとするか。俺はそう思いこの場から立ち去ろうとすると…。


「…おい、ガキ!誰かと思ったら思い出したぞ!お前、確か前に巨大化したブタチビを魔法で倒した奴だよな?」


 一人の大柄の男性が俺を呼び止めてきた。…この人、俺の事を知っているのか。


「へ?ああ、そうですけど」

「やっぱりな!さっきの魔法の威力を見てたらそれを思い出したんだよ。やっぱりあの時のガキで合ってたみたいだぜ!」

「…なるほど、あの時の君だったのか。道理で桁違いの威力だった訳だ」

「あなた凄いわね~!うちのリーダーよりやるじゃないの!」


 冒険者たちが俺の事を褒めまくってきた。…うぅ、さっさと戻りたいのに別な意味で面倒な腰になっちゃったなぁ。他人から褒められるのは嬉しいけどさ。

 …あ、そうだ。ついでだし今の魔物について聞いてみようか。


「あの、すいません。さっき現れた丸い形をした黒い魔物について何か知っていますか?」

「黒い魔物についての事か?…すまない、残念ながら私もそいつについては何一つ知らないんだ。何せ初めてそいつ等に遭遇したからな」


 ふむ、どうやらこの人たちも俺と同じく遭遇するのは初めてだったようだ。やはりレアな魔物なんだろうか…。とにかく、帰ったらクリムにもその事について聞いてみよう。

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