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フリントに会いに行こう!

1月20日追記・文章を少し修正しました。

「そう言えばクリム、フリントって今どこで何をしているのか知ってる?」


 晩ご飯を食べてる途中、俺はクリムにこんな事を話した。最近、俺は彼女に出会う機会が全くない。前に別の用事があるという話をクリムから聞いてたけど、その用事という物が何なのかは未だに分からないままだ。一体何をしているんだろうか?


「ん?急にどうしたの、ナオト?」

「いや、最近フリントに会ってないからどうしているんだろうなーと思ってさ」

「うーん…。そういや、前に偶然フリントと出会った事があったわ。その時にあたしたちは近況について話し合っていたわね」

「本当か!?なあ、フリントが今何をしているのか聞いたんだろ?俺に教えてくれよ」

「落ち着きなさいよ、ナオト。…フリントなら確か、この町から出て東にある森の方で修業をしているとか言ってたわ」


 町から出て東にある森…。確か初めての依頼でルオナグス草という薬草を採りに行った時や、フリントと二人きりでビーストという魔物を討伐した時に行ったのと同じ森だ。


「そうなんだ。一人で大丈夫かなぁ、フリント」

「心配しなくてもいいと思うわ。少なくともあいつはあんたよりもタフで経験持ってると思うから」

「ク、クリムさんっ!」


 クリムの発言を聞き、ナラが彼女を咎める。もはやお決まりの光景だ。


「いいんだ、ナラ。もうこういうのには慣れっこだから」

「そ、そうなんですか…。でもナオトさん、無理しないで怒ってもいいんですよ?」

「まあ、本当ならそうしたい所なんだけどさ。でも今は食事中なんだ、こんなくだらない理由で喧嘩なんかしたらご飯が不味くなるし空気も悪くなるだろ?」

「…ふーん、あんたにしては冷静な判断ね。あんたも少しずつだけど立派になってきているんじゃない」


 "あんたにしては"が余計な気がするが…。まあ、クリムからも認められているようでそこは喜ぶべきか。とにかく、これでフリントがどこで何をしているのか分かったな。

 …そうだ。せっかくだし、明日そこの森に行ってフリントに会ってみるか。きっと彼女も喜んでくれるだろう。




 翌日、俺は支度を済ませて外に出ようとするとミントが俺を呼び止めた。


「ねえナオちゃん、どこへ行くの?」

「ん?ああ、ちょっと別の用事があってね。ミントには関係のない事さ」

「あたしには関係ない事?ねえ、それって何ー?気になるから教えてよー」


 ミントは俺の服を掴みながら、子犬のような目で俺を見つめてきた。その目で俺を見つめるのはやめてくれ、そういうのに弱いから…。仕方ない、素直に話すか。


「昨日晩ご飯食べてる時に、フリントが東の方にある森で修業をしているって話をクリムがしてただろ?今日はその森に行って久しぶりに彼女に会おうと思っていたんだ」

「そうなんだ。…あれ、今日はギルドに行かないの?」

「そうだな、今日の仕事はお休みって事にしといてくれ。毎日ギルド生活っていうのも疲れるだろ?だからミントは家でゆっくりと休みなよ」

「ふーん、今日は休みなんだ。…あ!それじゃああたしもナオちゃんと一緒にフリント姉ちゃんに会いに行く!いいよね?」


 そう来たか…。本当は一人で行きたかったんだけど、まあいいだろう。ここで断ったらミントが怒って面倒な事になりそうだしな。

 俺はミントも一緒に連れて行き、森に向かって出発する事にした。




 俺とミントはフリントを探しに森の中へと入っていく。相変わらず鬱蒼とした雰囲気だ。ミントは怖がっているのか、俺の手を離さずにギュッと握っていた。


「ナオちゃん、本当にこの森の中にフリント姉ちゃんがいるの?」

「ああ、クリムの言ってた事が正しければな」


 かれこれ30分くらい森に入っているが、フリントの姿はどこにも見当たらない。何か痕跡さえあれば掴めるかもしれないのだが…。


「――あっ、ナオちゃん!あれ見て!」


 と、突然ミントが向こうを指差しながら叫んだ。俺は指差した方を見ると、驚きの光景が見えた。


「こ、これは…!?」


 そこには、粉々に砕かれた大きな岩やボロボロになった木が散乱していたのだ。明らかに自然の仕業ではなく、誰かが壊したに違いない。しかし誰がこんな事を…?


「ねえナオちゃん、これってもしかして…」

「…まだそう確信した訳じゃないけど、可能性はあるな。ミント、先に進もう!」

「うん!ひょっとしたらフリント姉ちゃんがいるのかも!」


 俺たちはボロボロになっている岩や木の場所を通り抜け、再び歩き出す。もしかしたらこの先にフリントがいるのかもしれない。少しずつだけど希望が見えてきた。

 フリントがこの先にいる事を信じて歩き続けていると、向こうから水が勢いよく流れる音が聞こえてきた。何の音だろう?

 音がする方に向かっていくと、俺たちの目の前に大きな滝が現れた。


「うわぁ、大きな滝だね」


 ミントは滝を見てそう呟く。俺がこの森に行くのは何度もあったが、こんなのを見るのは初めてだ。

 俺はその光景にただ圧倒されていると、何かの気配を感じ取った。よく見ると向こうに人がいる。水浴びでもしているのだろうか。


「ナオちゃん、あそこに誰かいるよ。ちょっと近づいてみない?」

「駄目だよミント。気づかれてしまったら面倒な事になる」

「えー、行かないの?あたし、あの人が気になるよぉ」


 ミントはまた子犬のような目で俺を見つめてきた。だからそういう目で見つめるのだけはやめてくれ…。しょうがない、あんまりやりたくないけど近づいてみるとするか。

 俺たちは近くにあった草むらに隠れ、そこから水浴びしている人に近づく事にした。のぞきをやってるみたいで少し背徳感があるが、まあバレなきゃ問題はないだろう。…多分。

 バレないように少しずつ近づいていきながら、草むらからチラッと顔を出す。それを見て俺は思わずドキッとした。

 すらっとしたスタイルの身体に、背中まである黒い髪。そして、少し遠くからでも目立つ大きな胸。…間違いなく、この人は女性だ。全裸の女性が水浴びをしている。

 肝心の顔は横を向いててはっきりと分からなかったが、俺はこの人の顔に見覚えがある。まさか、この女の人は…。


「ねえ、もしかしたらあの人、フリント姉ちゃんじゃない?フリント姉ちゃーんっ!」


 突然、ミントが草むらから飛び出して女の人に声をかけた。おいおい、何をやっているんだよ…。いくら女同士とはいえ、そこにいるのが全く知らない赤の他人だったら面倒な事になるぞ。

 俺は草むらに隠れて様子を伺う。頼む、フリント本人でありますように…。


「…あら?誰かと思えばミントちゃんじゃない!やっほー、久しぶりー!」

「やっぱりフリント姉ちゃんだ!わーい!」


 向こうからフリントの明るい声が聞こえてくる。どうやら本人で正解のようだ。…ほっ、よかった。赤の他人とかじゃなくて。


「ミントちゃん、もしかしてここまで一人でやって来たの?」

「ううん、違うよ!ナオちゃんと一緒に来たんだ!」

「あら、そうなの。…ふふっ、じゃあナオト君にも久しぶりに顔を合わせないとね」

「うん、分かった!ナオちゃーん、隠れてないでこっちにおいでよー!フリント姉ちゃんがナオちゃんに会いたいって!」


 …は???何を言っているんだ、この子は???こっちにおいでよだって???

 俺、この状況でどうしたらいいんだ???

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