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後輩と一緒にギルド生活

 ミントのギルド登録を済ませ、彼女の冒険者ギルド生活がスタートした。俺はクリムに頼まれ、ミントを指導するという形で一緒に依頼を受ける事になった。

 まさか俺が先輩になって、後輩に優しく色んな事を教える役割になるなんて思ってもいなかった。何かを教えるのはあまり俺の得意分野ではないので、上手くやれるか不安だが…。まあ、やれるだけやってみよう。


「ミント、まずはどの依頼から受けるんだ?」

「うーんとね…。あ、これやってみたい!」

「ん、どれどれ」


 ミントは『畑を襲うリトルマウスを駆除して欲しい』と書かれた依頼の紙を指差す。リトルマウス…初めて聞く名前のモンスターだな。まあEランクの依頼だしそんなに脅威ではないだろう。俺たちはこの依頼を受ける事にした。




 俺たちは町を出て、目的地へと向かい歩き出す。場所は町から出て東にある畑だとあの紙に書いてあったな。


「ねー、まだ着かないのー?あたしちょっと疲れちゃったよぉ」


 歩いている途中、ミントは地面に座り込みながら俺にそう言ってきた。歩いてまだ30分も経っていないのだが、どうやらミントは早くも疲れが見えてきたらしい。


「あともう少しで着くから、それまで我慢しようぜ」

「もう少しって、あとどれくらいなの?あと何分で到着するの?」

「そ、それは…」


 ミントはムッとした表情をしながら俺に睨みつけてくる。…参ったな、ここは彼女の機嫌を取らないと後で面倒な事になりそうだ。


「と、とりあえずどっか涼しい場所にでも行って休憩でも取ろうか」


 俺はミントに、一旦休憩を取る事を提案した。それを聞いたミントは機嫌が直り、いつもの笑顔に戻る。ふぅ、何とか彼女の機嫌を損ねずに済んだな。

 俺たちは休憩を数分取った後、再び目的地へと向かい歩き出す。すると、向こうに大きな畑と一軒家が見えてきた。どうやらここが目的地のようだ。


「あっ、ナオちゃん!あれが目的地であってるよね?」

「そうだな。場所も一致してるしここで間違いないだろう」

「わーい、やっと着いたー!」


 ミントは大喜びで、畑に向かって勢いよく走り出した。おいおい、俺を置いていくなよ…。さっきまであんなヘトヘトになってたのにすっかり元気になっちゃって、忙しい子だな。俺はそんな事を思いながらミントの後を追いかけた。

 畑に近づくと、麦わら帽子を被っている一人の男性が椅子に座っていた。多分あの人がこの畑を管理している農家だろう。


「おじさーん、こんにちはー!」


 ミントは大声で男性を呼んだ。男性はこちらの方に気づき、顔を俺たちの方へ向ける。穏やかな顔をしており、優しそうな印象だ。


「やあ、こんにちは。私に何か用かね?」

「はい。俺たち、この畑に出没するというリトルマウスを駆除しに来たんです」

「ほう、そうかそうか。君たちが私の依頼を受けに来てくれた冒険者だね。わざわざこんな遠い所へご苦労様」


 男性は俺たちの頭を撫で、温かく迎えてくれた。ミントは頭を撫でられてでれっとした顔になる。こう言ったら本人に失礼だが、ミントは純粋な子供っぽさがあって可愛らしい。


「知っての通り、この畑にはよくリトルマウスと呼ばれる生物が現れてね。私がせっかく育てた農作物を食い荒らしてくるからたまったもんじゃない。本当ならば私があいつ等をやっつけようと思っているんだが、私もそんなに若くはないんだ。…そこで、君たちのような冒険者にそいつらの駆除をお願いしようとしたのさ」


 畑を見ると、彼の育てた野菜などが食い荒らされているのが分かる。よく見ると周りに穴が開いていた。あそこからリトルマウスがやって来るんだろうか。畑を食い荒らす害獣が現れて困る人が出るのは、どの世界に行っても同じなんだな…。とにかく、俺たちが何とかしなければ。


「分かりました。俺たちがそのリトルマウスを駆除します」

「あたしたちが来たからにはもう安心していいよ、おじさん!」

「ほほう、それは頼もしいものだ。それじゃあ、よろしく頼むよ」


 俺たちは畑に行き、バッグから小型害獣駆除用のスプレーを取り出した。これをリトルマウスに向けて発射すれば、奴等はたちまち大人しくなるという訳だ。問題はそいつらが穴から出てきた時にすぐやれるかどうかだが…。逃げ足だけは速そうだもんなぁ。

 とにかく、俺たちはリトルマウスが出てくるまで暫し待機する事になった。…それにしても、今日は暑いな。休憩の時にも飲んだが、事前に水筒を買っといてよかった。


「いつになったら出てくるのかなぁ」

「さあな?ま、待っていればその内出てくるだろ」


 俺たちはそんな事を言いながら、奴等が出てくるのを待っていた。――と、その時。穴から何かがうごめいているのが見えた。


「ナ、ナオちゃん!あれって…!」

「あ、ああ。間違いない」


 穴から出てきた生物。それは、ネズミに似た小さな生き物だった。恐らくこいつがリトルマウスだろう。俺はこの瞬間を見逃さず、すぐ奴にスプレーを向ける。

 だが、リトルマウスはそれに気づいたのか穴から勢いよく飛び出して畑の周りをちょこまかと走り回っていた。


「「ま、待てーっ!」」


 俺たちは畑の作物を踏まないよう気を付けながら、リトルマウスを追っかけて行った。数はそれなりに多く、5~10匹くらいだろうか、俺たちは片っ端からスプレーで奴等を気絶させた。

 俺の予想通り、逃げ足はかなり速い。だが俺もミントも依頼を達成させる為に、一生懸命になって奴等を駆除していた。


「ふぅ、これで全部かな?」

「うん。もう穴から出てこないみたいだからこれで最後だと思うよ。早速、あのおじさんに報告しようよ!」


 俺は動かなくなったリトルマウスの山を見ながらそう言った。10匹目が出てきて以降、穴から奴が出てくる気配は全くない。俺たちは駆除に成功した事を男性に伝えた。


「ほう、そうかそうか。あいつ等を全匹倒す事が出来たんだね。二人とも、ご苦労様。私の代わりにやってくれてありがとう」


 男性は俺たちの頭を撫でながら、感謝の言葉を言ってくれた。ミントは頭を撫でられて嬉しいのか、満面の笑みを浮かべている。…可愛い。

 とにかく、これで依頼達成だ。俺たちはその場から去ろうとすると、男性から呼び止められた。男性はリトルマウスを駆除してくれたお礼にお菓子をご馳走してくれるそうだ。ラッキー、ちょうどお腹が空いてたからありがたく頂いておくとしよう。俺たちは男性の家に行き、楽しく話をしながらお菓子を食べた。




「どうだった?初めての依頼は」

「ナオちゃんが側にいてくれたから、楽しくやる事が出来たよ」


 町に戻る途中、俺はミントに初めての依頼はどうだったかを聞いていた。ミントは俺のおかげで楽しくやる事が出来たそうだ。そう言われると照れるな…。

 最初はミントと一緒にやれるか不安だったけど、今日の調子でいけば問題なく今後もやれそうだ。これからもミントの為に、頑張ろう。

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