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戦いが終わり…

 仲間と力を合わせ、何とかダミアンを倒す事が出来た俺たち。俺は大の字になって倒れ、勝利の余韻に浸っていた。

 何たって、俺と同じ神の力を手に入れた相手に勝ったんだ。そう思うだけで嬉しかった。確実に強くなってきているんだな、俺。


「「「ナオトー!」」」


 一緒に戦ってくれた仲間が、俺の所へ駆けつけてくる。クリム、ナラ、アルベルト。…そして、ここにはいないけどミントもよくやってくれた。間違いなく、俺一人では勝てない相手だったよ。


「ナオトさん、大丈夫ですか?」

「ああ、何とかな。…なあクリム、今俺が放った魔法見たか?凄い威力だっただろ」


 俺は立ち上がると、さっき放った魔法の事をクリムに自慢した。


「確かに凄い威力だったわよ。あんた、いつの間にその魔法も取得していたのね…。あんたの成長の早さにはいつも驚くわ」

「へへっ、だろ?」

「言っとくけど、調子に乗ってその魔法を使い過ぎないようにね。付近にいる人や建物も巻き添えを食らってしまうから」


 俺はクリムから注意を受ける。ま、あの魔法のヤバさは既に知ってるからそこは大丈夫だろう。打つ手が無くなった時の最後の切り札みたいな感じで使うのが一番良さそうだ。

 そんな事を思っていると、俺の前に一人の男性が走ってきた。誰だろう?


「あんたは?」

「はぁ、はぁ…。あ、私はこの大会の司会を務めている者です。いやー、ナオト選手!さっきの戦いぶりは凄かったですよっ!」

「そ、そう?ははは…そう言ってくれるだけで凄く嬉しいですよ」


 俺の前に現れた男性はこの大会の司会者だった。ここへ来たって事は、俺たちに何か用でもあるのかな。


「司会者さん、私たちに用事でもあるんですか?」

「はい。えー、実はこの決勝戦の勝敗についてなんですけど…。ナオト選手、一回戦が始まる前に言ってた事を覚えてますか?」

「え?えーっと…」

「相手を殺してしまえば即失格になってしまうというルールですよ」

「あっ!」


 そういえばそのルールがあったんだった!俺は奴を倒す事に夢中になってたせいで、その事をすっかり忘れてしまっていた。

 どうしよう、これじゃあダミアンと同じ末路を辿ってしまうじゃないか。俺はここに来て優勝を逃してしまうというのか…?


「じゃあ、俺たち失格になってしまうんですか?」

「えー、本来ならばそうなるのですが…。先ほど主催者と協議した結果、主催者側はナオト選手の健闘を見て敬意を表し、更にこのようなケースは前例が無かったという事もあり今回は特例として認める事になりました」

「え…?そ、それじゃあ…」

「はい!本大会の優勝者は、ナオト選手に決まりましたーっ!」


 なんと、今回は特別にという事で見逃してくれるそうだ。最後まで諦めずに戦った甲斐があったな。感謝するよ、主催者の人。

 俺はこの大会に優勝出来たという事に喜び、仲間と一緒にこの喜びを分かち合った。


「やったわね、ナオト!まさかあんたが本当に優勝出来るなんて思ってもいなかったわよ」

「おめでとうございます、ナオトさん♪」

「へへっ、これも俺たちのおかげだな!」


 皆が俺の事を褒めてくれた。やはり人から褒められると本当に嬉しい物だ。…そういえば、俺は昨日会ったあの女の子が言ってた事を思い出した。借り物の力に頼って、人から褒められるのは楽しいかと。結局、あの子が言ってた通りになったな…。そう考えると複雑な気持ちになった。

 とにかく、今は優勝出来たという事を素直に喜ぼう。




 俺は主催者からトロフィーを貰った後、会場から出た。夜の星空が、死闘を繰り広げた俺たちの事を優しく包み込むように綺麗に輝いている。

 今日はもう遅いし、この町にある宿屋に泊まってゆっくり休むとするか。


「「おーい、みんなー!」」


 町を歩いていると、フリントとミントが大きな建物の前に立ちながら手を振っていた。俺たちは二人のいる場所へと向かう。


「お帰りなさい、みんな!試合の方は無事に終わったのね?」

「ああ、無事に終わったよ。これも皆の協力のおかげさ」

「それは良かったわ!これで避難所にいる皆も安心するわね」


 フリントは後ろにある建物を指差しながら言った。どうやらここは避難所のようだ。後でそこに入って、皆を安心させた方が良さそうだな。


「ねえねえ、ナオちゃん!さっきのあたしの活躍見てた?あたしなりに精一杯頑張ったんだよ!」


 ミントが誇らしげに自慢してくる。さっきの活躍というのは、俺がダミアンに掴まっている時にクロスボウで奴の目に命中させた事だろう。あれには本当に助かったよ、ミント。

 俺は彼女にお礼を言うと、ミントは嬉しそうに笑った。


「えへへ、ナオちゃんに褒められちゃった。…あたしね、誰かの役に立ちたくて冒険者になろうって決めたの。だからね、すっごく嬉しいんだ!」

「そっか。良かったな、ミント」

「あーあ、ミントちゃんがあんなに頑張ったというのに私だけ何もいい所見せられなかったわね。せっかく本戦に出場して私の活躍ぶりを皆に知らしめようと思ったのに~」


 ミントが嬉しそうにしている裏で、フリントは悔しそうにしていた。そういやフリントだけあの戦いの時に一切駆けつけなかったけど、何をしていたんだ?


「フリント、そんなに活躍出来なくて悔しいのならさっきの戦いのときに駆けつけてくれればよかったのに。他の皆は来てくれたぞ?」

「出来れば私もナオト君の所へ駆けつけたかったわ。でも、ミントちゃんを避難させるのが優先だったから…」


 なるほど、そっちが忙しくて行けなかったのか。それなら仕方ないな…。フリントがどんな風に戦うのか、ちょっとだけ見てみたかったな。


「それより、そろそろ避難所にいるみんなにダミアンを倒したって事を知らせないとね」


 俺たちはフリントについていき、避難所へと入っていく。中には大勢の人たちが不安そうにガヤガヤと騒いでいる様子だった。

 一人の男性が俺の事に気づき、こっちに向かってくる。


「お、おい…。お前、ナオトだろ?なあ、お前がいるって事はあの化け物はいなくなったんだよな?」

「安心してください、ちゃんと倒しましたよ」

「ほ、本当か…!おーい、みんなー!あの化け物はこの少年が倒したそうだぞー!!」


 男性は安心しきった表情をし、避難所にいる人たちに大声で叫んだ。その声を聞いた人たちも、この男性と同じように歓喜の声を上げる。


「おい、それは本当なんだろうな…!あの少年があいつを倒したとでもいうのか!?」

「信じられないけれど…。でも、私たちは助かったんだわ!」

「あの化け物は退治されたんだ、バンザーイ!」

「すげぇよアンタ!なあ、一体どうやって倒したんだ?教えてくれよ!」


 大勢の人たちが、ダミアンが倒された事により喜んでいた。中には俺の事を尊敬し褒めてくる人もいる。俺は照れ臭くなり、頭をかいた。

 とにかく、これで一件落着だな。今日はぐっすりと眠れそうだ。

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