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決勝・ナオト対ジョン・ドゥ

 控室で待機している途中、俺はナラの事が気になって仕方がなかった。あの感じだと相当深い傷を負ったに違いない。

 くそっ、俺が近くにいたらヒーリングですぐ傷を治せたはずなのに…。俺はそれが出来ない事が悔しかった。


「間もなく決勝戦が始まります。ナオト選手、ジョン・ドゥ選手は会場へと移動して下さい」


 控室に係員がやってきた。俺は我慢出来ず、係員にナラがどうなったのかを聞く。


「すいません、ナラは?ナラはどうなったんですか!?」

「ナラ選手の事ですか?ナラ選手なら、傷は深いですが命に別状はないとの事です」


 どうやら俺が思っていたより大変な事にはなっていなかったようだ。命に別状がないというのなら、ひとまず安心だ。

 よし、これでスッキリした気持ちで決勝に挑めるぞ。


「じゃあ行ってくるよ、アルベルト」

「ああ。…あいつに関してはさっきも言ったが、何をしてくるのかさっぱり分からねえ。もしかしたら、第二試合で見せた技は一部分に過ぎないかもしれないぞ。気を付けるんだ、ナオト」

「分かったよ。絶対に勝って、ナラの仇を取って見せるから」


 俺はアルベルトにそう言うと、ジョン・ドゥと一緒に会場へと向かっていった。




『皆さま、大変お待たせしました!これより、闘技大会の決勝戦が始まります!決勝戦に出場する選手は…。ナオト選手と、ジョン・ドゥ選手だーっ!!』


 観客席から大きな歓声が沸く。決勝戦というのもあってか、司会者のテンションはさっきより高めだ。皆の期待に応えるようしっかりと戦わなければ。

 俺は剣を抜き、構えのポーズを取る。しかし、ジョン・ドゥは構えを取らずにただ立っているだけだった。

 …待て、あいつよく見たら武器を持っていないぞ?ナラとの試合の時はちゃんと持っていたはずなのに、どういう事だ?まさか素手で戦うつもりか?


「っ!?」


 俺は疑問に思っていると、突然ジョン・ドゥの両腕から紫色に輝く剣のような物が浮かび上がってきた。これって…もしや、ナラを倒した際に使ったあのエネルギーなのか?

 あんな未知のエネルギーを使えるなんて、あいつは一体何者なんだ?ますます謎は深まるばかりだ。

 ジョン・ドゥはただ微動だにせず俺の事を見つめている。仮面を被っているからあいつがどんな表情をしているのかさっぱり分からない。そこがまた不気味だった。


『――それでは、決勝戦!始めーっ!!』


 ゴングが鳴り始め、試合が始まった。それと同時に、ジョン・ドゥは俺の方に勢いよく突撃し両手に持ってる光の剣を振り回しながら攻撃してきた。

 俺は咄嗟に、持っていた剣で身を守る。剣から鋭い高音が連続で聞こえてきた。音だけでも痛そうだ。

 俺は奴の攻撃からひたすらに身を守っていると、突然ジョン・ドゥが俺の前から消えてしまった。これも、さっきナラが戦っていた時に見せた瞬間移動的な技だ。


「…どこだ!どこに行った!?」


 俺は急いでジョン・ドゥを探す。俺は気を集中させながら、奴がどこに行ったかを探した。

 俺は気を集中させていると、背後に気配を感じた。


「そこかっ!」


 ジョン・ドゥが現れたと同時に、俺は剣を振った。俺の剣がちょうどジョン・ドゥの被っていた仮面に当たり、ヒビが入る。

 僅かではあるが、奴にダメージを与える事が出来た。


「や、やったぞっ!」


 俺は僅かでもジョン・ドゥに攻撃が通った事が嬉しかった。だが、まだ喜ぶには早い。

 ジョン・ドゥは後ろにジャンプすると、また俺に向かって突撃してきた。俺はさっきと同じように剣を使い、攻撃から身を守る。すると、またジョン・ドゥは瞬間移動をした。


(また瞬間移動か!?そんなの、俺には二度と通用しないぞ!)


 だがさっきと違い、今度は瞬間移動を連続で行いながら俺に向かって剣を振り回してきた。…駄目だ、動きが早すぎて追いつかない!

 俺はジョン・ドゥの動きに対応出来ず、奴の攻撃をまともに食らってしまった。俺はその場に倒れてしまう。


(そ、そんな馬鹿な…)


 くそっ、連続で瞬間移動してくるとか冗談じゃないぞ。これじゃあまともに戦っても俺が一方的にやられるだけだ。どうすればいい?やはりここは魔法を使うべきか?俺はどうすればあいつを倒せるのか必死になって考えた。

 ここはさっき使ったタイフーンを使うか?…いや、奴の事だから魔法を出す前に瞬間移動を使って避けられてしまうに違いない。対象をロックオンするライトニングでも同様になるだろう。

 あの瞬間移動さえ何とかなれば…。瞬間移動…そうだ!あれなら行けるかもしれない!俺は立ち上がり、魔法を唱える準備をした。それを見ていたジョン・ドゥは再び俺に向かって突撃してくる。

 奴が近づいてくる前に、俺は急いで魔法を唱え始めた。


『ワープ』


 俺は奴に悟られないよう、小声で魔法を唱えた。その瞬間、俺の身体は異空間へと転送される。俺の目前に見えるモニターにはさっきの会場が映っており、そこではジョン・ドゥが俺の事を探している様子だった。

 よし、俺がどこへ行ったのか分かっていない様子だな。このままそっちへ戻ってきて、この剣で奴の顔を仮面ごとぶっ叩いてやる!

 俺は会場が映っている画面に触れ、再び会場内へと戻った。


「俺はこっちだっ!」


 ジョン・ドゥの目の前に現れ、そのまま剣で奴の顔面を斬った。さすがのジョン・ドゥでもこの攻撃に対応出来なかったのか、俺の攻撃をまともに食らっていった。


 ――パリーン!


 俺の剣が奴の仮面に当たり、仮面は粉々に砕け散った。…やった!奴の仮面を壊す事に成功したぞ!

 仮面を壊されたジョン・ドゥは急いで片手を使い自分の顔を隠す。仮面の中の素顔は一体どんななのか…。それが明かされる時が来た。


「ふっ、ふふっ…。まさかこの私の仮面を壊す者が現れるとは…。やはり、ただの少年ではないな」


 ジョン・ドゥは初めて俺に向かって喋ってきた。声質から察するに、中年の男性だろうか。貫禄のある声をしている。


「あんた、一体何者なんだ?どうして仮面なんか被っていたんだ?」


 俺はジョン・ドゥに二つの質問をした。


「…私の正体をここでばらせば、司会者や観客どもは間違いなく私の事を思い出し、私の事を蔑むだろう。私はそれを避けたくて仮面を付けていたのだが…。それが壊れてしまってはどうしようもない。仮面を壊した褒美として特別に正体を明かしてやろう」


 ジョン・ドゥはそう言い、フードを外して片手を顔から離した。ボサボサとした髪型をしており、無精髭が特徴的な男の人だ。目つきは鋭く、まるで全てを恨んでいるかのような…。

 観客は彼の素顔を見てざわつき始める。


「なあ、あの顔どっかで見た事がないか?」

「私、見覚えがあるわ。確かこの世界で超一流の剣士だったような…」

「ああ思い出したぞ!あいつの名前は…。ダミアンだ!」


 俺の予想通り、どうやらこの世界だと有名な人物のようだ。ダミアン…。それが、仮面を被った謎の選手の本名だった。

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