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第二試合・ナラ対ジョン・ドゥ

 第二試合が始まろうとしていた。次に出るのは、ナラと仮面を被った謎の人物ジョン・ドゥだ。

 あのジョン・ドゥという人物は色々と謎が多く、それに全く喋らないのでどこか不気味な印象だった。


「大丈夫かな、ナラ」


 俺はナラの事が心配だった。彼女も相当な実力者とはいえ、戦う相手は全てが未知数の人物だ。こんな事は考えたくないが、もしかしたらナラが負けてしまうかもしれない…。


「そんなにあいつの事が心配なのか、ナオト?大丈夫さ、あいつは力だけは誰にも負けないからな」

「うん…。でも俺、ナラの様子が気になるんだ」

「そうか。じゃ、俺と一緒に試合を見に行こうぜ」


 俺はアルベルトと一緒に、第二試合を観戦する事にした。




『続きまして、第二試合です!第二試合の対戦カードはナラ選手対ジョン・ドゥ選手っ!』


 司会の人がそう言うと、観客たちの盛り上がる声が会場内に響き渡りました。私はこれから、この観客たちに見られながら試合をするんですね。こういうの初めてだから、緊張します…。

 私が戦う相手はジョン・ドゥさんという方です。どんな人なのかは分からないですけど、悪い人じゃなければいいなぁ。


「あ、あの…。自己紹介が遅れましたけど、私はナラって言います!」


 私はジョン・ドゥさんに自己紹介をしました。だけど、さっきと同じように一度も私に喋ってきません。無口な人なのかな…?

 ジョン・ドゥさんは腰に差してある剣を引き抜き、構えの姿勢を取りました。この人はナオトさんと同じ腰に差すタイプの剣を使う人なんですね。私もこの人に続き、背中に背負ってある剣を取り出しました。


『Dブロックを勝ち抜いたジョン・ドゥという選手についてですが、これまでの経歴が一切不明というまさに謎の人物です!ただ一つ分かるのは、かなりの強者だという事です!果たして、この勝負はどちらが勝つのでしょうかっ!』


 私たちは構えを取り、司会の人が開始宣言をするまでじっとしていました。相手は仮面を被っているので、何を考えているのか全く分かりません。…それにしても、どうしてこの人は仮面を被っているのでしょうか?私はそこがちょっとだけ気になりました。


『――それでは、第二試合!始めっ!!』


 私がそんな事を思っていると、司会の人の一声と共にゴングが鳴りだしました。それと同時に、私はジョン・ドゥさんに向かって走り出しました。


「やあああああっ!」


 私は掛け声を上げ、剣を大きく振ります。しかし、ジョン・ドゥさんはそれを持っていた剣で受け止めました。私は負けずに剣を次々と振りましたが、ジョン・ドゥさんはそれを全て受け止めます。

 剣の大きさは違うはずなのに、私の攻撃を容易く受け止めるなんて…。やはりこの人は只者ではなさそうです。もしかすると、ナオトさんよりも強いかも。


「はっ!やあっ!てやあっ!」


 ジョン・ドゥさんに攻撃が効いていない状況でしたが、それでも諦めずに私は剣を振るのを止めませんでした。すると、ジョン・ドゥさんは徐々に後ろへと下がっていきます。少しずつではあるけれど、疲れが見えてきているのでしょうか。

 このまま彼の後ろにある壁の方まで押し込めば、きっと勝利は見えてくるはず…!


「やあっ!」


 私が思い切り剣を振ると、彼の持っていた剣が宙を舞い遠くへ飛んでいきました。


(や、やりましたっ!)


 これで相手は武器を持っていない状態になりました。ジョン・ドゥさんがどんな戦い方をするのか全く分からないけど、武器はもう持っていないから確実に不利になったはずです!

 …だけど、ジョン・ドゥさんは不利な状況なのにも関わらず焦った様子は見られませんでした。もしかしたら、彼にはまだ奥の手が残っているのかもしれません。最後まで油断しないようにしないと。

 私はまた、相手に向かって剣を振りました。しかし――。


「え!?」


 突然、彼の姿が消えてしまいました。さっきまで私の目の前にいたはずなのに…。一体何が起こっているのでしょうか?

 後ろを振り返ると、いつの間にかジョン・ドゥさんがそこにいました。


「あ…ああっ…」


 ジョン・ドゥさんはゆっくりと私の方に寄ってきます。それを見て、私は急に彼の事が怖いと感じるようになってきました。

 仮面を被っているから表情が読めないし、どんな戦い方をしてくるのか全く想像が出来ないし…。それでも、ただ一つ分かった事がありました。

 …今の私では、あの人に勝つどころかダメージを負わせる事すら出来ない…!


「うぐっ!?」


 突然、ジョン・ドゥさんは私の首を片手でぎゅっと掴んできました。く、苦しい…!

 私はそれから逃れようと必死になりながら暴れました。しかし、彼の力が強すぎるせいで何一つも出来ません。

 すると、突然ジョン・ドゥさんの身体から紫色の靄のような物が出てきました。


(こ、この感じ…。前にどこかで見た事があるような…?)


 紫色の靄を見て、私はそんな事を思っていました。確か、前にブタチビが暴れだした時に見た紫色の液体に似ている気が。

 すると、彼のもう片方の腕から刃のような物が出てきました。それも、ただの武器とかではなくまるでエネルギーで作られたみたいな…。

 そして、ジョン・ドゥさんはそれを私のお腹に向けて勢いよく――。


「――これで終わりだ」




『…しょ、勝者はジョン・ドゥ選手!ジョン・ドゥ選手に決まりましたーっ!!』


 一瞬の出来事だった。ジョン・ドゥがナラの首を掴んだかと思うと、突然もう片方の腕からエネルギーのような物が出てきて、それをナラの腹に狙って斬ったのだ。

 ジョン・ドゥは攻撃を止めると、ナラの首を離す。ナラは今の攻撃を食らって力尽きたらしく、動かなくなってしまった。

 …何が起こったのか全然分からないけど、これってヤバい気がする。


「ナ、ナラーっ!!」


 俺は倒れているナラの所へ行くため、会場に行こうとした。しかしアルベルトは俺の腕を掴み、止めようとする。


「何をするんだよ!ナラが倒れたんだ、邪魔しないでくれ!」

「落ち着くんだ、ナオト!確かにナラの事は心配だが、アリーナ内はこの試合に参加する者以外は立ち入り禁止になっているんだぞ!」

「くっ…」


 俺はアルベルトの言う事に従い、会場に行くのを止めた。ナラは数名のスタッフに運ばれていきながら会場から消えていく。ナラ、お願いだから無事でいてくれ…!

 一方、ナラを倒したジョン・ドゥはただ黙って控室の方へと戻っていく。その途中で俺たちに会ったが、興味はないらしく無視していった。


「次が決勝だ。…ナオト、お前の対戦相手は誰になるか分かっているよな?」

「ああ、分かってるよ…。こうなる事は考えたくなかったけど」


 俺の予感は的中した。俺はこの後、あいつと戦う事になる。そう考えただけでも怖くなってきた。俺は果たして、あんな訳の分からない奴に勝つ事が出来るのか?

 …だけど絶対に、あいつを倒してナラの仇を取るんだ。俺はそう決心し、控室へと戻っていった。

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