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クリムの幼馴染

「この人はクリムさんの幼馴染なんですよ。アルベルトさんって言います!」


 ナラの隣にいる男の人は、クリムの幼馴染であるアルベルトという人だった。髪の長さは短めでツンツンしており、俺よりも少しだけ大人っぽい顔立ちをしている。

 背中にナラと同じ大きな剣を背負っているのが見えた。どうやら、この人も俺やナラと同じく剣士を職業にしているようだ。


「よう、お前がナオトだよな?」

「あ、ああ。どうも」

「ナラから聞いたぜ。お前、クリムやナラと一緒にギルドで働いているんだってな」


 アルベルトは気さくな態度で俺に話してきた。誰とでも積極的に仲良くしようとする性格なのかな、この人は。少なくとも悪い奴ではなさそうだ。


「どうだ?お前、クリムと仲良くやってるのか?」

「ああ、まあね。ギルドでの生活とか魔法の教え方などを色々教えてもらってるよ。…時々口うるさい所もあるけどね」

「そっか。あいつ、普段はツンツンしてるけど世話焼きな所があるからな」


 アルベルトはそう言い、軽く笑う。アルベルトはクリムの幼馴染らしいから、彼女の事は俺よりもよく知っているはずだ。


「ところで、ナラはアルベルトと何度か会ってるのか?」

「はい。私も小さい頃に何回かお会いした事があるんですよ。昔はよくクリムさんと一緒に楽しくお話をしていました」

「楽しくお話だって?おいおい、冗談を言うなよ。俺はあいつと喧嘩ばっかしてた事を知らないのか?」

「勿論、知ってますよ。でも、こういうじゃないですか?喧嘩するほど仲がいいって」

「…ははは、言ってくれるじゃないか」


 クリムとアルベルトは喧嘩するほど良い仲って事なのか。何だかアルベルトが羨ましくなってきた。俺、漫画とか見てて異性の幼馴染に憧れを抱いてた事があったからな…。


「それにしても、まさかここでアルベルトさんと再会するなんて思ってもいませんでしたよ。最後にあなたと出会ったの、何年前でしたっけ?」

「そうだな。今からだいたい3年前って所か」

「3年前って事は、私たちが12歳だった頃ですね。覚えてます?アルベルトさんのお別れ会をした事を」

「ああ、今でもしっかりと覚えてるよ」


 …ん、会話から察するにアルベルトはここしばらくクリムやナラと出会っていなかったのかな?俺はそこが少し気になったので、彼に訳を聞いてみる事にした。


「アルベルトって、3年前にクリムと別れたのか?」

「そうさ。親の都合でこの国に引っ越す事になって以降、あいつとはもう出会っていないんだ」

「それで、アルベルトさんとお別れをする前に皆でちょっとしたパーティーをやっていたんです。お友達や近所の人は、皆アルベルトさんがいなくなってしまうのを寂しがっていたんですよ」

「ああ。特に、クリムの奴なんか顔をクシャクシャにしながらもいつものように怒ってたよな。あの時の表情、今でも忘れられないぜ」


 顔をクシャクシャにしていたって事は、あの時は凄く泣いてたのか。クリムの泣き顔なんて想像つかないからちょっとだけ見てみたいかも。


「ナオトくーん!まだそこにいたのー?」


 と、後ろからフリントの声が聞こえてきた。俺がいつまでも会話をしていたから、待ちきれなくてこっちに来たようだ。


「おっ、誰かと思えばさっき俺と戦ったねーちゃんじゃないか。ナオト、お前あのねーちゃんとは知り合いなのか?」

「うん。俺たちと一緒にギルドで働いているんだ」

「へー、そうなのか。いいなぁお前は、あんなスタイルのいいねーちゃんと一緒にいられて。俺なんかずっと一人でギルド生活を送っているからな…。」


 スタイルのいいねーちゃんって…。まあ確かにそうなんだけどさ。しかしアルベルトってちょっと前までのフリントと同じくずっと一人でギルド生活をしていたのか。明るい性格の割に、ずいぶんと寂しそうだ。


「君はさっき、私と戦った人ね。名前は…」

「アルベルトだ」

「そう、アルベルト君って言うのね。さっきの戦いぶりは凄かったわよ。私を打ち負かすなんて、なかなかやるわね」

「へへっ、そうかぁ~?あんたのようなねーちゃんにそう言われると照れるな~」


 アルベルトは頭をポリポリとかきながら照れていた。軽い性格ではあるが、あのフリントを負かしたんだ。かなりの実力者である事には違いない。

 そういや彼はBブロックを勝ち抜いた者だから、本戦だとAブロックを勝ち抜いた俺と戦う事になるのか。…勝てるかな、あいつに。


「ね、話の続きは外に出てからにしない?いつまでもここにいたら関係者に怒られちゃうわよ」

「おっと、そうだったな。よし、みんな外に出ようぜ」


 俺たちはフリントの言う事に従い、ホールから出て外に向かった。外に出ると、辺りはすっかり赤く染まっていた。もう夕方か。

 さっきの話の続きをしながら外を歩いていると、向こうにクリムとミントを見かけた。二人は屋台に行って何か食べ物でも買っているようだ。俺もちょうどお腹空いてたし、この後の本戦に備えて腹ごしらえでもしようかな。


「おっ、あそこの屋台にいる赤髪でツインテールの子は…。まさか、クリムか?」

「はい。…そうだ、せっかくですからクリムさんに会ってみたらどうですか?きっと喜びますよ♪」

「よし、そうするか。どーれ、久しぶりにからかってやろうかな~」


 アルベルトはニヤニヤしながらクリムのいる場所へ向かっていく。ちょっとしたサプライズになりそうだな。クリムがどんな反応をするのか楽しみだ。


「あら、ナオト?おかえ――えっ!?」


 クリムは後ろに誰かが来てる事に気づいたのか、後ろを振り返る。そして、クリムは後ろにいた一人の人物を見てかなり驚いていた。


「ちょっ、あんた…もしかしてアルベルト!?」

「ああ、そうさ。久しぶりだなクリム、元気にしてたか?」

「げ、元気にしてたって…。それよりあんた、ここで何をしているのよ!」

「何をしてるって、大会の予選試合が終わって外を歩いてたらたまたまお前を見つけたんだ。まさかここでお前と再会するなんてな」

「あ、あたしもここであんたと再会するなんて思ってもいなかったわ!出来れば会いたくはなかったけど!」


 クリムはツンツンした態度をとりながらも、嬉しそうに照れていた。まさかここで幼馴染と再会できるなんて微塵も思っていなかっただろう。


「ん?クリム姉ちゃん、この人と知り合いなの?」

「ミント、あんたには関係ないわ。…とりあえずアルベルト、ちょっとあっちの公園まで行かない?そこで色々話を聞かせて貰うわ」

「おいおい、俺はこれから本戦に出なきゃならないんだぞ?話は手短に済ませたいんだけどなぁ」

「本戦が始まるまでまだ時間はあるわ。とにかく、公園まで行くわよ」

「へいへい、分かったよ。…そういう事だからナオト!また後で会おうな」


 アルベルトはそう言い、クリムと一緒にさっき俺たちが行った公園の所へと歩いていった。この後アルベルトがどうなったのか分からないが、まあ楽しく話が出来たんだろう。多分。

 …あ、予選突破した事をクリムに報告するの忘れてた。

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