大会に参加してみよう!
俺たちはミントを助ける事で夢中になってたせいか、闘技大会の事をすっかり忘れていた。早くしないと大会を間近で見れなくなっちゃうぞ。
「皆も闘技大会を見に行くの?」
「うん。俺たち、それが目的でこの町まで来たんだ。悪いけどこれ以上君と話をしている時間はないよ。それじゃあね!」
大会の会場まで行こうとすると、ミントが俺の手を掴んできた。
「何だよ、俺に何か用でもあるのか?」
「待って!実はね、あたしもその大会を観に行くんだ。せっかくだから皆で会場まで行こうよ!」
俺たちはミントを連れて一緒に会場まで行く事にした。あの子を一人にしたら、またさっきの男たちのような悪い奴に襲われるかもしれないしな。
急いで会場の入り口まで向かった俺たちだったが、様子から察するにまだ大会は始まっていないようだ。
「どうやらまだ予選が始まる前のようね。慌てて損した気分」
「えっ、今日はまだ本戦じゃないのか?」
「この闘技大会はね、予選と本戦を一日で行うスケジュールになっているの。予選ではたくさんの参加者たちが集まって、そこで勝ち残った僅かな選手のみが本戦に参加出来るのよ」
予選と本戦を一日で同時に行うのか。何だか慌ただしい大会だなぁ。
…そういや、今フリントが予選ではたくさんの参加者たちが集まるとか言ってたけど、俺たちみたいな冒険者でも参加出来たりするのかな?その事について聞いてみるか。
「フリント、俺たちもその予選に参加する事は出来るのか?」
「そうね。私たちは冒険者だから問題なく入れるわ」
そうなのか。…それを知って、俺も急にその大会に参加したいという欲が湧いてきた。どうせなら、選手の戦いぶりを観るだけじゃなく直接戦ってみたい。無謀な事かもしれないが。
「なあ、せっかくだから皆でこの大会に参加してみようよ!」
「「「えっ?」」」
俺の発言を聞いて、皆が一斉に驚いた。…さすがにこのタイミングで言うのはマズかったか?
「ちょっとあんた、闘技大会に出るつもりなの?」
「ああ。俺も冒険者なんだし、いい経験になりそうだから出てみようと思ったんだ。…駄目かな?」
「言っとくけど、あたしは大会に出ないわよ。あたしはこういう競い合いには興味ないし」
「あ、あたしはクロスボウしか持ってないから出れないよ。クロスボウは大会だと禁止されてるって書いてたもん」
クリムとミントは大会には出ないようだ。うーむ、残りの二人はどうだろうか。
「ナラ、フリント、君たちも大会に出ないのか?」
「わ、私はその…。ちょっと恥ずかしいですけど、出てみようかな…」
「私はオーケーよ。せっかくここまで来たんだから、試合を観るより実際に参加して楽しむってのもいいわね」
どうやらこの二人は一緒に大会に参加してくれるようだ。よし、話は決まった。早速、受付に行って予選に出場しよう。
「それじゃあ俺たち、予選に出場してくるから。本戦に出れるよう一生懸命頑張って来るよ」
「分かったわ。…ナオト、必ず予選を勝ち抜きなさいよね。もし予選落ちしたら許さないわよ!」
俺たちは二人と別れ、大会に参加する俺を含めた三人で予選会場へ向かった。クリムにあそこまで言われたら、絶対に予選を勝ち抜かないといけないな。負けたら絶対に怒られそうだし。
予選会場に着くと、受付の人に参加の申請を行う。それが終わると受付の人が予選のルールについて説明をしてくれた。
予選は屋内で行い、4ブロックに分かれて他の参加選手と戦う事になっている。どのブロックで、そして誰と戦うのかを決めるのはくじ引きで決めるそうだ。
ちなみに予選会場へ入れるのは関係者と出場選手のみで、一般の観客はこの試合を観戦する事は出来ないとの事。という事は、クリムとミントは俺たちの戦いを見れない訳か。それは残念だ…。
俺はルールをしっかりと把握した後、予選が行われるホールへと向かった。ホールはかなり広く、俺の通ってた中学校の体育館並みにある。そこには恐らく70~80人くらいだろうか、ホールの中を埋め尽くさんとばかりにたくさんの選手がいた。
「たくさん人がいますね…」
「何たって、この世界最大のお祭りだしね。自分の力を全世界に知らしめようと参加する人は毎年たくさんいるわ」
予選に参加しているのは、どれも強そうな人ばかりだ。俺、無事に勝ち残る事が出来るのかな…。少しだけ不安になってきた。
会場に入ってしばらく待っていると、ホールの奥から眼鏡をかけた一人の男性がやってきた。
「えー、この度ははるばる遠い所からこの大会へ出場して頂き誠にありがとうございます。私が本大会の主催を務めております、アンジェロと申します」
この人が闘技大会の主催者らしい。思ったより物腰が柔らかそうな人だな。
「それでは早速予選のルールについて説明をさせて頂きます」
予選のルールについてはさっき受付の人が言ってたのと同じだったので、すんなりと頭に入った。説明が終わると、俺たちはくじ引きの箱がある場所へと移動してそこから番号札を引いた。
で、くじ引きの結果はというとフリントがBブロック、ナラがCブロック。そして俺はAブロックに入る事になった。皆バラバラになったな。
「私たちは別々のブロックに移動する事になったわね。という事は、きっとナオト君と戦う機会が来るかもしれないわ」
「仲間同士で戦うのはあまり好きじゃないんですけど…。でも、本気でやらないといけないんですよね」
「そうね。これはあくまでも試合なんだから、もしお互い戦う時が来たら悔いのないよう精一杯頑張りましょ」
うへぇ、場合によってはこの二人のどちらかと戦う可能性があるという訳か。それだけは嫌だなぁ、どっちもパワー系だから殴られたら痛そうだし。本人には悪いが、どっかで脱落してくれる事を祈るしかない。
そう思いながら、俺は二人と別れてAブロックへ移動した。他の選手の移動が終わると、さっきの主催者の声がまた聞こえてきた。
「それでは、これより予選を開始します。悔いのないように正々堂々と戦いましょう。――それでは、始め!」
いよいよ予選試合の始まりだ。必ず本戦に出場できるよう、精一杯頑張るぞ。