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新たな魔法の取得

 神の力を借りて何とかビーストを全匹倒した俺は、真っ先に怪我をしているフリントの所へと向かった。


「フリント、大丈夫か!?」

「え、ええ。そんなに酷い傷じゃないわよ…いつつ!」


 フリントの肩を見ると、そこから血がたらたらと流れているのが分かる。傷は思ったよりも深めだ。恐らく、ビーストに噛まれたか爪で引っかかれたのだろう。

 くそっ、こんな時にクリムがいてくれたらすぐフリントの傷を治してくれるだろうに…。どうしたらいいんだ、俺?


「なあフリント、どう見ても酷い傷だよ。ここは一回安静にしといた方が…」

「大丈夫よ、ナオト君。私の事はいいから、君は討伐の証拠品を取って来て頂戴」

「そんな事言ったって…」


 フリントは肩を押さえながら、苦しそうにしている。何か俺に出来る事はないだろうか…。あ、そうだ!


「フリント、ちょっと君の肩を触ってもいい?」

「え?別にいいけど、何をするつもりなの?」

「試したい事があるんだ」


 ひょっとしたら、俺でもあの魔法が使えるかもしれない。俺はフリントの傷口に触れ、目を閉じて魔法を唱えた。


『ヒーリング!』


 魔法を唱えた途端、フリントの傷口はみるみるうちに塞がっていく。フリントの肩は元通り綺麗になっていった。

 どうやら、ヒーリングを取得する事に成功したようだ。ぶっつけ本番だったけど、何とかなったな。


「…どうかな?傷は無くなったけど、肩は動かせる?」


 俺はフリントに、肩を動かせるかどうか聞いてみる。フリントは試しに肩を大きく動かした。痛がっている様子はなく、怪我は完全に治ったようだ。


「ええ、問題なく動かせるわ。ありがとうナオト君」


 よかった、怪我を治す事が出来て。これでクリムがいなくても傷の手当は出来そうだな。

 俺はフリントの怪我を治した後、討伐の証拠品(今回はビーストの牙)を持ち帰って町の方へと戻った。




 町に戻ってギルドに行くと、ちょうど入り口の方にクリムとナラがいた。二人もギルドを終わらせた所なのかな?


「クリムー、ナラー!ただいま帰ったよー!」


 俺はクリムとナラに向かって大きな声で呼んだ。二人は俺たちの事に気づき、話しかけてきた。


「あら、ナオトにフリントじゃない。お帰りなさい、依頼の方は終わったの?」

「ああ。ばっちり終わらす事が出来たよ。そういう二人も、依頼の方は終わったのか?」

「はい!私たちもばっちり終わらせる事が出来ましたよ♪ナオトさんとフリントさんがいないから少しだけ寂しかったですけど、問題なく行けました」

「そっか、それはよかった」


 クリムとナラも無事に依頼を終わらす事が出来たようだ。俺たちはギルドに入り、いつものように依頼完了の報告をして報酬を貰った。

 用事を済ませギルドから出ると、クリムはこの後の事について話した。


「ね、今日はどんな依頼をしてきたのかお店に行ってゆっくり話し合わない?」

「いいわね、賛成!私、一度でいいから皆で昼ご飯を食べたいなーって思ってたの。行きましょ、みんな!」


 俺は町の中にある飲食店に行き、そこで皆が食べたい物を頼んで食事を取る事にした。クリムとナラはサラダ料理、フリントはフライドチキン、そして俺はから揚げだ。

 クリムが作ったご飯も美味しいが、やはりお店で食べる料理はとてもいい。お店の中は他のお客で賑わっているし、ここにいるだけでも楽しくなってくる。昔、家族で外食に行った事を思い出す。


「――それでね、あたしたちはキャラバンを護衛している途中でごろつきと遭遇したの。この前出会ったのとは違う奴よ」

「へぇ、そいつ等と出会ったんだ。それでどうなったの?」

「問題なく、奴等を追い払う事に成功したわ。今回もナラの馬鹿力が大活躍してたわよ~。ただ、キャラバンの方もナラに怯えちゃったみたいだけどね」

「ク、クリムさんっ!」

「ふふっ、相変わらずナラちゃんは頼もしいのね」


 どうやらクリムとナラの二人は、キャラバンと呼ばれる一団を護衛する依頼をしていたらしい。俺もいつかそういうのをやる機会があったりするのかな。


「ナオトとフリントは今日、どんな依頼をしてきたの?」

「俺たち?まあ、いつものように魔物の討伐をしてきたよ。今日はビーストっていう奴を倒してきたんだ」

「ビーストって、主に森に生息している獣型のモンスターですよね。私たちも一回だけそのビーストを討伐した事があるんですけど…すっごく怖かったんですよぉ~」


 確かにあいつ等は本気で怖かったな。神の力が俺になかったら、あいつ等に食われてしまう所だった。


「…あ!そういえばクリムちゃん、聞いて!私ね、そのビーストって奴に肩を噛みつかれてしまったの。あの時は本当に痛かったわ」

「本気で痛かったとか言ってる割には、ピンピンしてるじゃない。どうやって傷を治したのよ?」

「ふっふっふー。実はね…ナオト君が私の傷を魔法で治してくれたのよ~!」


 フリントの発言を聞いて、クリムの手が止まる。クリムはきょとんとした顔で俺を見つめてきた。


「魔法で治したって…。ナオト、あんたまさかヒーリングも取得したの?」

「ああ、そうだよ。それもぶっつけ本番で」

「…あんた、本気で言ってるの!?あたしでさえも取得するのに何日もかかった魔法を、あんたは練習もせずにいきなり覚えたワケ!?」

「まあ、そんな感じかな」

「そんな感じかなって…。はぁ、あんたにはいつも驚かされてばっかりね。ここまで行くと悔しくなってくるわ」


 クリムは半分呆れている様子だ。…前にも思ったけど、ひょっとしたら俺って天才なのかもしれないな。

 そのうち、俺が世界で一番強い魔術師として君臨する日が来たり…いや、さすがにそれは考え過ぎか。あまり調子に乗っちゃ駄目だ、うん。


「あの時のナオト君、本当にかっこよかったわ~。剣と魔法を同時に使いこなす人ってなかなかいないからね。私、ナオト君に憧れちゃうかも」


 お、俺に憧れちゃうって?人からそんな事を言われるの初めてだな…。なんか、この世界に来てから俺の都合のいいように流れが進んでいってるような気がする。

 女の子の仲間がたくさん出来て、最強の力を(ロゴスのミスではあるが)手に入れて…。この先、俺にどんな未来が待っているんだろう。俺は少しだけ怖くなってきた。

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