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二人っきりのギルド生活

「そういえばナオト、一つあんたに言いたい事があるの」


 家で朝ご飯を食べてる途中、クリムが突然俺に話しかけた。言いたい事って何なんだろう?


「急にどうしたんだ?」

「あんたがギルドに入ってからだいぶ経つでしょ?もうあんたはCランクになって駆け出しの冒険者を卒業したから、そろそろ一人でもやって行けるんじゃないかって思ったのよ」


 …これからは俺一人で依頼を受けろと?そう言われると不安になるからやめて欲しいなぁ。依頼は一人より皆でやった方が楽しいってナラも言ってたし。


「あたしたちもそろそろ自分のギルドランクを上げたいから、いつまでもあんたと一緒にやるワケには行かないわ。そこら辺は分かって頂戴」

「そう言われても…。なあ、ナラはどうなんだ?」

「私は、出来ればナオトさんとこれからも一緒にやれたらいいなと思っているんですけど…。でも、私も正直に言うとクリムさんと同じくギルドランクを上げたいと思っていますので」


 そうか、それは残念だ…。いつもナラが俺を励ましてくれたから、今後はそういうのが無いのかと思うと寂しくなるな。


「そういう事だから。悪いけど、今後は一人で頑張ってよね。ナオト」

「俺、一人で頑張れるかなぁ」

「大丈夫ですよ、ナオトさん!剣の扱い方も確実に上手になって来てますし、それにあなたの持つ魔法があればどんな困難でも乗り越えられるって信じてますから」


 俺の持つ魔法と言っても、その殆どが神の力なんだけどな。確かにあの力は凄いけど、気軽に使えるような代物じゃないし…。


「不安そうな顔をしてるわね、ナオト。あんた男でしょ?男だったら一人でもやれるって根性を見せなさいよ。いつまでもあたしたちのような女の子に頼ってばかりじゃかっこ悪いわよ」

「クリムさん、それは言い過ぎですよ…。あの、ナオトさん?もし一人でやるのに自信がないのなら、フリントさんと一緒に依頼をやって見たらどうですか?あの人もナオトさんと同じように、仲間と一緒に依頼を受けるのを毎日楽しみにしているみたいですし」


 そういやフリント、そんな事を言ってたな。だったら今後はフリントと一緒に行動するとしようか。せっかく他に仲間がいるんだから、誰かと一緒にやった方がずっといい。俺が困ったときにすぐ助けてくれるし。


「分かったよ。後でフリントに会ったらその事を伝えておくから」

「決まりね。じゃ、あたしのお話はこれでおしまい」




 俺は朝ご飯を食べ終えると支度を整え、一人でギルドへと向かう。ギルド入り口にはいつもと同じくフリントが立っていた。

 早速、彼女に話をしなくちゃ。


「おっはよー、ナオト君!…あれ、クリムちゃんとナラちゃんは?」

「ああ、それなんだけど――」


 俺はフリントに、クリムとナラはギルドランクを上げるために今日から俺と離れて別行動をする事と、これからはフリントと一緒に二人だけで依頼を受けるという事を話した。


「…そうなの。今日から君と私だけで依頼を受ける事になったのね。それは残念だわ、あの子たちと一緒にいるだけでも楽しかったのに」

「ああ、俺も残念だと思ってるよ。だけどクリムとナラも各自やりたい事があるって言ってたんだ」

「ま、ギルドランクを上げるためなら仕方がないわね。今まで駆け出しの冒険者だったナオト君に付き合ってあげただけでも十分偉いと思うわ」

「二人にはとても感謝してるよ。…それじゃあ、今日も一日頑張ろうか」

「ええ!今日も頑張ろうね、ナオト君!」


 その後、俺はフリントと一緒に依頼を受ける事になった。今日やったのはいつもの魔物討伐で、ビーストとかいう奴を倒すのが目的だ。ビーストっていうくらいだから、多分ファングみたいな奴なんだろう。

 俺たちは早速ビーストが生息しているという森の方へと向かう。相変わらず鬱蒼とした雰囲気だ。俺に緊張が走る。


「二人っきりで歩くのは初めてだから、何だか新鮮ね」

「ああ、そうだな」


 フリントと一緒に外を歩くのはこれが初めてになる。年上で美人な女性と一緒に歩くのって何だかドキドキするな。俺が元いた世界ではこういうのは絶対になかったから。


「そういえばナオト君、クリムちゃんとナラちゃんとは今の所どういう関係なの?」


 えっ、今の所どういう関係だって?そんな事を急に言われても、どう答えればいいのか分からないよ。


「もしかして…。結構、いい関係を築いていたりする?」

「それってどういう意味?」

「恋人みたいな関係になっていたりとか」


 ちょっ、恋人みたいな関係って何だよ!?確かにあの二人は可愛いと思った事は何回もあるけど、そこまでは思ってもいないぞ。

 俺はフリントの発言を聞いて顔を真っ赤にしながら慌てた。それを見ていたフリントはくすくすと笑いだす。


「ふふっ、顔が真っ赤になっているわよ。ナオト君」

「だ、だって急にこのタイミングで言うなんて思ってもいなかったからさ。今はビーストを探している途中なんだから気が散るような事を言うのやめてくれないかなぁ」

「ごめんなさいね、ナオト君。でもせっかく仲間と一緒にいるんだから楽しくやった方がいいでしょ?」

「…まぁ、確かにそうだけど」


 確かに、フリントの言う通りだ。それに今の発言のおかげで緊張が少しだけほぐれたような気がする。

 そんな事を思いながら森の中を歩いていると、向こうに広場が見えた。よく見ると、ライオンのような生き物が何匹かうろついている。


「あ、ナオト君!あれが依頼に書いてあったビーストって奴よ。依頼の紙に描いてあった絵と同じだわ!」

「という事は、あいつを全部倒せばいいんだな。…よし、フリント。準備は出来た?」

「もちろん、いつでもオーケーよ!」


 俺たちはビーストを討伐するため、奴等の所に向かって走り出した。広場にいたビーストは俺たちに気づき、真っ先に襲いかかってくる。

 一匹は大きな口を開けて俺に噛みつこうとしていた。俺は咄嗟になってそれをかわす。…それにしても、鋭い牙だ。噛みつかれたらとても痛いだろうな。

 その後、攻撃をかわされてすっかり油断しているビーストに剣を振りかざす。ビーストは胴体から血しぶきをあげ、地面に倒れて行った。


「よし、まずは一匹だ!」


 この調子で他の奴も倒そう…とした瞬間、後ろからフリントの悲鳴が聞こえてきた。


「きゃあっ!」

「フリントっ!?」


 後ろを振り向くと、フリントが肩を押さえながらうずくまっているのが見える。どうやらあいつに襲われてしまったらしい。


「今そっちに行くよ、フリント!」


 俺はフリントのいる場所へと駆け付けようとする。が、その途中で無数のビーストに取り囲まれてしまった。ここから先へは行かせないと言わんばかりに俺を睨みつけてくる。間近で見ると、凄い迫力だ…。

 くそっ、こんなにたくさんいたら一匹を剣で倒そうとしても別の奴に襲われてしまう。ならば…、あれを使うしか方法はない!


「フリント!その場から離れて!」


 俺はフリントに、ここから離れるよう大声で叫んだ。フリントは分かったわ!と言い、肩を押さえながら向こうへと避難していく。

 よし、これで準備は整った。これで…あの力が使える!


『ライトニング!!』


 俺は剣を上にあげ、魔法を唱える。すると、ビースト全匹の真上に雷が激しく落ちてきた。相変わらず凄い威力だ、フリントを向こうへ避難させるよう伝えたのは正解だったな。

 雷をまともに食らって黒焦げになったビーストたちは、一斉に地面に倒れて行った。


「…よし。何とか倒せたぞ」


 俺はビーストを全匹倒せた事に安心し、その場にへたり込んだ。やはりこの力を上手く扱うのは難しい。いずれ、時間がある時に神の力を制御出来るよう修行したいな。

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