お宝探し
突如凶暴化したブタチビを討伐し、またいつもの日常が戻ってきた。結局ブタチビが暴れだした原因は謎のままだが、いずれその原因が発覚されるかもしれないから今はその事を気にするのはやめておこう。
俺はギルドランクを上げる為、ひたすらに依頼をこなしていった。仲間と力を合わせて魔物を倒したり、時には一緒に楽しく笑いあったり。充実した毎日を送っていた。もしかしたら、元の世界に暮らしていた時よりも充実しているかもしれない。ゲームや漫画がないのが寂しいけど、この世界そのものがゲームから飛び出したようなもんだから次第に気にしなくなった。
そして、俺がこの世界に来て一か月後。ついにCランクへとランクアップを果たす事に成功したのであった。
「やっとCランクに昇級したのね、ナオト。お疲れ様」
「昇級おめでとうございます、ナオトさん!一人前の冒険者に近づいてきましたよ♪」
「これも私たちと一緒に頑張った結果ね。これからも頑張りましょ、ナオト君」
ランクアップを果たし、三人が俺の事を褒めてくれた。やはり他人から褒められると気分がいい。
それと、俺がここまで来れたのはフリントの言う通り三人が俺の冒険をしっかりサポートしてくれたおかげだ。三人にもしっかり感謝しないとな。
翌日、俺はギルドに行くと早速Cランクの依頼を受ける事にした。俺はボードに貼ってあるCランクの依頼をじっくりと見る。そして、一つの依頼が俺の目に止まった。
『この町から北の方角にあるヴァイラ山にお宝が眠っているらしいのだが、そこには凶暴な魔物が生息しているとの事だ。私には到底、奴等を追い払う事は不可能だから代わりにお宝を取るのと魔物の討伐をお願いして欲しい』
この依頼人は自分の代わりにお宝を取って来て欲しいそうだ。お宝探しか…。今までにないタイプの依頼だな。何だか面白そうだし、これにしてみようかな。
「みんな、今日はこの依頼にしてもいい?」
「ヴァイラ山にあるお宝を自分の代わりにあたしたちが取って来るって奴ね。あたしは別に構わないわよ。ここ最近はモンスターを倒してばっかだったし、気分転換にはいいんじゃないかしら」
「じゃ、この依頼の紙を受付の人に見せてくるよ!」
俺はこの依頼の紙を受付の人に見せ、許可を得ると早速みんなでヴァイラ山という場所へ行く事にした。一体どんな山なんだろう…。
町から出て数時間後、俺たちはヴァイラ山の近くにたどり着く。山というだけあってかかなり大きく、今まで以上に過酷な道になりそうだ。事前に食料や水筒を買っといて良かった。
「この山のどこかに洞窟があって、そこにお宝と魔物がいるはずよ」
「この山のどこかって…。正確な位置は分からないのか?」
「分からないわ。だってあたしたち、ここに来るの初めてだし。フリントはこの山を登った事はあるの?」
「あるわ。昔、修行でこの山を登った事が何回もあったからここについては結構詳しい方よ。私が案内してあげようか?」
「じゃあ頼むよ、フリント」
俺たちはこの山に詳しいというフリントに、洞窟がある場所を案内して貰う事にした。場所に詳しい人が一緒にいてくれると本当に助かる。
ヴァイラ山をひたすらに登り続ける俺たち。一体どこに洞窟があるんだろう…と思っていたその時、目の前に巨大な岩が現れた。
「これじゃあ先に進めないよ。どうするんだ?」
「この岩を砕くかどっかに放り投げるしかないわね。しょうがない、ここは私が…」
「あ、待ってフリント。岩を放り投げる事が出来る人ならここにいるわよ」
クリムがそう言い、ナラの方を見た。…そういやナラって、大きな岩を持ち上げるほどの力を持っているという話を前に聞いたな。どれだけ力持ちなのか俺も気になる。
「え、ええっ!?わ、私がやるんですか?」
「そうよ。せっかくだし、フリントにナラの馬鹿力を見せてあげようと思ったワケ」
「そ、そんな…。恥ずかしいです」
ナラはとても困惑している様子だ。だがすぐに気持ちを改めたのか、ナラは黙って巨大な岩の所まで向かった。そして、岩の下の部分を手で掴み――
「――そりゃあっ!」
掛け声を上げ、思いっきり巨大な岩を持ち上げた。俺はその光景を見て、ただ茫然とするしかなかった。す、凄い。これが彼女の実力なのか…。思わず背筋がゾクッとした。
「凄いわね、ナラちゃん!私でさえ岩を持ち上げるのがやっとなのに、あんなに涼しい顔で持ち上げる事が出来るなんて…。私よりも力持ちじゃないかしら?」
「は、はうぅ…」
ナラはフリントから褒められて恥ずかしがっていた。本人に失礼だが、恥ずかしがってるナラはとても可愛い。
その後、ナラが持ち上げた巨大な岩は下の方に投げ捨てる事にした。他に人や生き物はいないだろうし大丈夫だろう。多分…。
道を塞いでいた岩もなくなり、俺たちは再び山を登っていく。途中で休憩をはさみながら登り続けて一時間後、俺たちは洞窟と思われる場所を見つけ出した。
「ここが恐らく、お宝が眠っているという洞窟だよな?」
「間違いないわね。魔物もこの中にいると思うから、気を引き締めていくのよ」
俺たちはゆっくりと洞窟の中へと入っていく。前にスライム討伐の時に入った洞窟に比べるとかなり暗く、何も見えない。
これじゃあお宝を見つけ出すどころか満足に進む事すら出来ないぞ…。どうしたらいいんだ?
「なあクリム、洞窟の中を明るくする魔法とかないのか?」
「あるわよ。――ライト!」
クリムが魔法を唱えると、杖から光が出てきた。ま、眩しい!俺は思わず目を閉じてしまった。
「これでしばらくの間は周りがよく見えるはずよ。ただこの魔法は永久に使えるワケではないから、あまりのんびりはしていられないわね」
俺が元の世界にいた時にあった懐中電灯みたいなもんか。…もし俺がその道具を持って皆に見せたら、きっとビックリするだろうな。
俺たちはライトを頼りにしながら、洞窟の奥深くへと進んでいく。途中で物音がするたびにいちいちビクつきながら進んでいると、目の前にキラキラと光っている何かが目に入った。あれはまさか…?
「なあクリム、あれって…」
「間違いないわ。依頼に書いてあったお宝よ」
俺たちはキラキラと光っている物に向かって走り出す。その光っている物の正体が分かると、俺は思わず声が出てしまった。
「わあ…!」
辺り一面に、結晶や宝石がごまんとあったのだ。思わず取るのを躊躇ってしまうくらい美しく輝いており、俺はその綺麗さに見とれていた。
俺は早速、お宝を取る為に近づこうとした。
「――ナオト、ストップ!あれを見て!」
クリムが急に俺に向けて叫んだ。何の事かと思いクリムが指差した方を見ると、思わずギョッとなってしまった。
お宝の近くに、恐竜のような見た目をしたモンスターが数体眠っていたのだ。もしかすると、あれが依頼に書いてあった凶暴なモンスターって奴か…?
お待たせしてすみません!
体調を崩してしまい、続きを投稿するのがすっかり遅くなってしまいました…。