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ブタチビが暴れだした原因って?

(タイトルをこっそり変更しました。)

 さっきまで暴れまわっていた巨大なブタチビは、俺の放ったブリザードを食らって氷漬けになっていた。動く気配は全くない。

 …やったぞ。俺は一人で、こいつを止める事が出来たんだ。


「す、すっげぇ…。あんなヤバそうな奴を一人でやるなんて…」

「あの少年、僕の魔法とは比べ物にならないくらい強かったぞ。何者なんだ?」

「私たち、やったの?あの化け物を倒す事が出来たのね!?」


 遠くへ避難していた冒険者たちは次々と氷漬けになったブタチビの所へ寄ってくる。何名かは俺の放った魔法を見て唖然としている様子だ。


「…いや、喜ぶにはまだ早いわよ。氷が溶けてしまったらまた暴れまわる危険性が十分あるわ。トドメは私に任せて」


 フリントはそう言うと、氷漬けになったブタチビの所まで行く。トドメは私に任せるって…。いくら格闘家とはいえ、あれを一人で倒す事が出来るのか?

 俺は少し不安になりながら彼女を見守る。フリントは息を深く吸いこみ、構えのポーズを取った。


「はあっ!」


 フリントは掛け声を上げ、拳を勢いよくブタチビにぶつける。すると、氷漬けになったブタチビは瞬く間に粉々に砕かれていった。

 な、なんて馬鹿力なんだ。一体どんな鍛え方をしたら出来るようになったんだろう…。


「…勝った、勝ったんだな!?俺たち!」

「ああ、間違いない!我々の勝利だ!」


 冒険者たちはブタチビを倒せた事を喜び、あちこちで歓声が沸いていた。…本当に、これで終わったんだな。

 俺はホッと一安心し、その場にへたり込んだ。トドメをさしてくれたフリントも凄いが、あの巨大な生き物を俺の魔法で倒せた事が一番信じられない。やはり凄いんだな、神の力って。

 ロゴス、もし今の光景を見ていても許してくれ。本気でやられる所だったんだから。


「何とか終わったわね。お疲れ様、ナオト君」

「ああ、フリントもよくやってくれたよ。あんなにデカい氷を拳一発で砕くなんて、凄いや」

「ふふーん。これも厳しい修行の成果って所ね」


 修行の成果って凄いんだなぁ。それを聞いて、俺も負けていられないという気持ちが湧いてきた。


(…あれ?)


 俺は向こうに、黒い服を着た髪の長い女の子が立っている事に気づいた。後ろを向いてるから顔は見えないが、前にどこかで見た覚えがあるような…。

 あっ!まさか、俺が最初の依頼を受けた際に出会ったあの子か?服装や髪型も一致してるし、もしかしたらそうに違いない!

 俺はあの子に色々聞きたい事があったんだ、またどこかへ消えてしまう前に行かなきゃ…。


「なあ、あんただろ!?あのデカいブタチビを魔法使って凍らせたの!まだ若いのにすげぇな!」

「同じ魔術師として、君の魔法は実に興味深い。詳しく聞かせて貰えないかな?」

「凄いですー。師匠って呼んでもいいですかー?」


 あの子の所まで行こうとした瞬間、冒険者たちが次々と俺の所に集まってきた。ああもう、今はそれどころじゃないってのに。

 …でも、皆からちやほやされるのって滅多にないから反面嬉しいという気持ちもあったり。


「ごめん、今は君たちの相手をしている場合じゃないんだ。そこをどいてくれるかな」


 俺は集まってきた冒険者たちから離れ、再び黒い服を着た女の子の所へと向かおうとした。…ところが、いつの間にかいなくなっていた。

 またこのパターンかよ、もやもやするなぁ。意外と恥ずかしがり屋さんなのか、あの子?


「ナオトー、どこへ行くの?そっちには何もないわよー!」


 後ろからクリムが俺を呼ぶ声がする。これ以上はどうしようもないので、とりあえず三人のいる所へ戻る事にした。


「ナオト、急に向こうへ走ってどうしたの?」

「ううん、何でもないよ。気にしないでくれ」

「ふーん…。ま、いいわ。とりあえず緊急依頼も無事に終わった事だし、さっさと町に戻りましょ」


 俺たちは今回の依頼を報告しに行くため、町に向かって歩き出した。




「それにしても、どうして急にブタチビが暴れだしたんでしょうか?」


 歩いている途中、俺たちは今回の依頼の疑問点について話し合っていた。ブタチビが暴れだすなんて今までに前例がないというのだから、皆が不審に思うのも無理はないだろう。

 それに、倒した際にブタチビの身体が液体状に溶けていきそれが一つに集まっていったのも気になる。ブタチビってああいう生き物なのか?


「なあ、ブタチビって死ぬとさっきのように溶けてしまうのか?」

「そんなワケないでしょ。スライムじゃないんだから」


 やはり、普通のブタチビはそんな事は全くしないらしい。じゃあ、あれは何だったんだろうか…。謎は深まるばかりだ。


「あたしの予想だけど、ブタチビが暴れだした原因って何者かによる陰謀じゃないかって思ったのよ」

「陰謀?」

「そ。何者かが魔法か何かを使ってブタチビを暴れさせ、あたしたち人間や町を襲おうとしてたワケ」


 俺が疑問に思っていると、クリムがそう言ってきた。なるほど…。それならある程度納得は行きそうだ。

 魔法という概念がある世界なんだから、生き物を凶暴化させる奴があってもおかしくはない。何故弱そうなブタチビを使おうとしたのかが謎だが。


「それならさ、どうしてブタチビを使おうとしたんだ?もっと大きくて強そうな生き物とかじゃ駄目だったのかな?」

「人を襲わない生き物だからこそ、そいつを狙おうとしていたんじゃないかしら?普段滅多に怒らない人が急に怒りだしたら、誰だって怖いと思うでしょ。それと同じで、奴は普段大人しい生き物を暴れるようにさせてあたしたちを恐怖に陥れようとしていたんじゃないの」


 確かに。ファングのような普段から凶暴なモンスターならそういう奴だからで済ませるけど、ブタチビのような大人しい生き物が急に暴れだしたら誰でも不安になるだろう。


「ま、これはあたしの考えた予想だから本気に思わない方がいいわよ。真実は誰にも分からないんだから」


 真実は誰にも分からない、か。いずれその真実が分かる日が来ればいいんだけど…。まあそう言うのはあまり期待しない方がいいかもな。

 …あ、そうだ。話は変わるけど、フリントにちょっとこの事について聞いてみようか。


「なあフリント、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

「どうしたの?ナオト君」

「フリントって黒い服を着てて、髪が長い女の子を見かけた事はある?」

「…うーん、ごめんなさい。そんな子は見た事も無いわ」


 やはり見た事はないのか、残念。俺意外にあの子を見かけた事がある人っていないのかなぁ。

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