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コピースライムとの戦い

 スライムを全部倒して安心したのもつかの間、俺たちの前にオレンジ色のスライムらしき物体が現れた。さっきの奴より結構大きい。恐らく、俺と同じくらいの大きさはあるぞ。

 こいつは一体何者なんだ…!?


「気を付けて、ナオト!そいつはスライムの亜種、コピースライムよ!」

「コピースライム!?何だよ、それ!」

「取り込んだ対象物を文字通りコピーする能力があるの!あいつに取り込まれる前に片を付けて!」


 名前の通り、相手をコピーする能力を持っているのか。どうやらこの依頼、簡単に終わらせてくれなさそうだ。

 とは言え、動きはさっきのスライムと同じく遅めだ。取り込まれる前に奴を倒せば何とかなりそう。よし、さっさとあいつを倒して…。


「う、うわぁっ!?」


 俺があいつに近寄ろうとした瞬間、突然コピースライムの身体が伸びて俺を捕らえた。こいつ、身体を自在に伸ばす事が出来るのか。まずいな、たかがスライムだと思ってすっかり油断してた…!

 俺はコピースライムから逃れる事が出来ず、そのまま奴に取り込まれてしまう。


(くそっ、体が自由に動かない!)


 俺は奴の体内から脱出しようとしたが、思ったより体全体を動かす事が出来ない。このまま俺はどうなってしまうんだ?頼む二人とも、俺を助けてくれ!


「クリムさん、このままではナオトさんが危険です!私たちが助けましょう!」

「しょうがないわね…!よし、ここはあたしに任せて!――『アイス』!」


 クリムが持ってた杖の先端から冷気の弾が放たれ、コピースライムに直撃した。俺はその衝撃で奴の身体から脱出する事に成功する。助かったよクリム、ありがとう。

 しかし、コピースライムは魔法を食らってもピンピンしている様子。やはり普通のスライムとは耐久力が違うようだ。


「気を付けてナオト、奴の身体が変化するわ!」


 クリムがそう言った途端、奴の身体が変化する。そして変化した奴の身体を見て俺は仰天した。

 色はコピースライムまんまだが、見た目は俺のシルエットにそっくりだったのだ。まさか俺自身(?)と戦う事になるなんて…。だがここでうろたえてはいけない。

 俺はコピースライムに向けて思い切り剣を振りかざした。


「な、何っ!?」


 しかしコピースライムは、俺の振りかざした剣を真剣白刃取りのように両手で受け止めた。何て奴だ、切れ味が鋭い剣を躊躇いもなく受け止めるなんて。

 俺の剣を両手で受け止めたコピースライムは、その後片方の足で俺の腹を思い切り蹴り飛ばした。


「ぐはっ…!」

「ナオトさん、大丈夫ですか!?」


 スライムの身体で蹴られたからそんなに痛みはなかったものの、今までの人生で腹を蹴られた経験はなかったので衝撃は強い。

 くそっ、やはり俺一人では奴を倒す事は出来ないのか…?


「今のあんたでは奴を倒す事は不可能に近いわ。ここはあたしたちも加勢するから、あんたはその間にコアを回収して!」

「…いや、その必要はない」

「はぁっ!?どういう意味よ!」


 俺一人では奴を倒す事は出来ない…と思っていたが、一つだけ手はあった。だが、俺はそれを使いこなす事がまだ完全に出来ていない。

 だからこれだけは使いたくなかったけど…。でも、今はやるしかない!俺は剣を上にあげ、気を集中させる。


「まさか…!あんた、魔法を使うつもり!?」

「ナオトさん、危険すぎます!ここは私たちに任せて下さい!」


 二人は俺が今からやる事を止めようとしている様子だ。二人が止めようとする気持ちはよく分かる。だけど、今はこれしか奴を倒せる方法がない。

 俺が使うのをためらっていた魔法を…。『神の力』の影響で強大になった、俺の魔法を奴にぶつける!


『バーニング!!』


 俺は掛け声と共に、剣を思い切り前に振る。そして剣の先端から勢いよく火炎放射が放たれた。


 ――ボォォォォォォォッ!!!


 相変わらず凄い火力だ。周りにも被害が及ばないよう、しっかりとこの力をコントロールしなければ…!

 コピースライムは火炎放射に飲み込まれ、一瞬にして蒸発された。さすがにこれで耐えきる事は出来ないだろう。


「はぁ、はぁ…。やったか?」


 炎が消えると、俺の目の前には奴の残骸と思われる大きなコアだけが残っていた。…間違いない。あいつを倒せたんだ。


「よっしゃー!」


 俺は嬉しさのあまりに大声を上げ、ガッツポーズをとった。神の力に頼ったとはいえ、一人であの強敵を倒す事が出来たんだ。もしかしたら俺、天才かもしれない。


「し、信じられないわ。あいつ一人で強敵と言われるコピースライムを倒す事が出来たなんて…」

「本当ですね。ナオトさん、私たちが思っている以上に凄い人なのかもしれません」


 二人は俺の活躍を見て信じられないと茫然としている様子だ。そう言われると、何だか照れちゃうな。

 とにかく、これでスライムは全匹討伐出来た。さっさとコアを回収してこの洞窟から出よう。…あ、そうだ。


「なあ、このコアも回収していい?」

「それって…、コピースライムのコアじゃないの。それも持って帰るつもり?」

「せっかく倒せたんだし、それに同じスライムなんだろ?だから持ち帰っても文句は言われないかなと思ってさ」

「まあ、あたしは別にいいけど…。ナラはどう思う?」

「私もクリムさんと同じ意見です」


 俺はコピースライムのコアも持って帰る事にした。これを受付の人に見せたら、きっとビックリするだろうなぁ。

 バッグの中にスライムとコピースライムのコアを入れ、俺たちは洞窟の中から出た。外に出ると、心地よい風が俺たちを迎えてくれた。うーん、やはり外の空気は美味しい!さっきまで激しい戦いを繰り広げていたからとてもスッキリする。

 早くギルドでの用事も終わらせて、美味しい物を食べたいな。


「…あれ?」


 俺は爽やかな気持ちで草原を歩いていると、遠くに誰かがいる事に気づいた。


「どうしたのよナオト、急に止まって」

「クリム、ナラ。ほら、あそこを見てよ」

「ん…、もしかしてあれ?」


 俺は向こうを指差す。そこには、一人の女性がモンスターの群れと戦っている様子だった。そのモンスターは、俺がこの世界に来たばかりの頃に襲われたあの憎きファングだ。

 女性は武器を持っておらず、拳や蹴り技を使ってファングを次々と倒していく。なかなかのやり手のようだ。


「あっ!」


 しばらく様子を見ていると、ファングの一匹が女性の足に噛みついた。女性は片足を痛めたショックでその場に倒れてしまう。ファングの方は今にも女性に勢いよく襲いかかろうとしている直前だ。

 まずい、このままではあの女性がファングに襲われてしまう!


「ちょっ、ナオト!?」


 俺は急いで女性がいる場所まで全速力で走った。頼む、間に合ってくれ――!

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