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援軍到着

「――そりゃあっ!」


 俺は無数のイレギュラー達と戦っていた。イレギュラーは倒してもすぐに次の奴等が現れるのでキリがない。しかし、どんな物にも必ず終わりはある。俺はそう信じ、諦めず戦い続けた。


「…おっ?倒したのに次の奴が出てこねーな。という事は、今ので終いか?」


 そうしているうちに、いつの間にかイレギュラーは出現しなくなった。…これで終わり、なのか?


(――はっ!?あ、あいつは!)


 と、俺はフリントの後ろにさっきのイレギュラーがいつの間にかいる事に気づく。イレギュラーは持ってる剣を振り下ろし、彼女に襲い掛かろうとしていた。


「お、おい!フリント、後ろに奴がいるぞ!」


 アルベルトも奴の存在に気づき、急いでフリントに声をかける。フリントは今の声で奴の存在に気がつくも、既に攻撃する直前だった。


『ふん、今更気がついた所で遅いわ!死ねいっ!』


 イレギュラーは剣を素早く振り下ろそうとした、その時。


『ぐ、ぐはっ!?』


 突然、一本の矢がイレギュラーに向かって勢いよく飛んできた。矢はイレギュラーに直撃すると一瞬で奴の体が消滅していく。


「うおっ、何だ?誰かがフリントを助けてくれたのか?」

「そ、そのようね。それに、この矢は…」


 フリントは地面に落ちた矢を拾いながら言う。…俺は、この矢が誰の物なのかすぐに分かった。きっとあの子だ。


「ミントー!」


 俺は大声でその子の名を呼んだ。すると、向こうの建物からミントが顔を出しこちらに向けて大きく手を振ってくる。やっぱりあの矢はミントが放った物だったか。今のはナイスだったよ。


「…今のはミントちゃんがやってくれたのね。やっほー、ミントちゃーん!」


 フリントも彼女のいる方へ大きく手を振る。ミントは手を振るのを止めると、俺たちのいる所へ駆け寄ってきた。


「ふーっ。よかった、間に合ったみたいだね!フリント姉ちゃん、怪我はない?」

「ええ、君のおかげであいつにやられずに済んだわ。ありがとう、ミントちゃん」


 フリントはミントの頭を撫でながら礼を言う。ミントは頭を撫でられた事でご機嫌な様子だ。可愛い。


「…にしても、どうしてお前までここに来たんだ?」

「え?だって、せっかくナオちゃんが戻ってきたのにあたしだけ戦いに行かないのも失礼でしょ?あたしだって冒険者だもん、やる時はやるんだから」

「お、おう…。そうか。でもお前がいなかったら今頃フリントはあいつにやられてたし、助かったよ。俺からも礼を言っておくぜ」

「えへへ、ありがとうアルベルト兄ちゃん。…あ、そういえばクリム姉ちゃんとナラ姉ちゃんはどこにいるの?」


 そういや、あの二人の姿が見えないな。どこへ行ったんだろう?


「ああ、あいつ等は先にあの大きな建物の中へ入っていったぜ。俺たちは二人を先へ行かせるよう囮の役をやったんだ」

「そうだったんだね。…凄いなぁ、あんなにたくさんの敵を相手にしていたんでしょ?さっすが~!」

「へへっ、まーな。もっと俺たちの事を褒めていいんだぜ?」


 アルベルトは胸を張って得意げになる。俺たちがいない間、二人であれだけの敵を相手にしていたんだから本当に凄いよ。お疲れ様、二人とも。


「――と、こんな事をしてる場合じゃねぇな。さっさとあいつらに合流して、あのオッサンを止めに行こうぜ」

「ああ、そうだな。早く行こう!」


 ここにいるイレギュラーも全員倒した事だし、後は神父を倒すだけだ。俺たちは目の前にある大きな建物に向かう事にした――その時だった。


「…!?待って皆、あれを見て!」


 突然、フリントが建物の方を指差しながら叫んだ。俺たちは彼女が指差した方を見ると、建物を突き破って何かが落ちてくるのがハッキリと見えた。


「だ、誰か落ちてくるよ!?」

「ちょっと待って、あの姿は――ナラちゃん!?」


 落ちてくる人影の正体は、何とナラだった。もしかして、ナラが敵の攻撃を食らって吹き飛ばされてしまったのか?だとしたら相手はかなりの強敵に違いない。

 ――マズいぞ、あのままだと地面に落ちてしまう。早く助けに行かないと!


「皆、ナラちゃんを助けに行くわよ!」

「「「分かった!」」」


 俺たちは急いで走り、ナラを助けに向かった。しかし、ナラが落ちるスピードは思ったよりも速くあと少しで地面に激突しそうだ。くっ、間に合うか!?


「フリント!もう少し速く走れないか!?」

「ナオト君、悪いけどこれ以上は無理よ!――駄目、もう間に合わないわ!」


 どうやらここが限界らしい。くそっ、俺たちじゃもうどうする事も出来ないのか!?大切な仲間が死んでしまうかもしれないってのに…!


 "――ヒヒーンッ!!"


 そう諦めかけていた時、突然馬の嘶きが聞こえてきた。それと同時に一匹の白馬が俺たちの頭上を飛び越える。


「うおっ!?なんだあいつは?」


 俺たちはその白い馬に気を取られ、思わず立ち止まった。白馬は俺たちを飛び越えると、そのまま落ちてくるナラの方へ真っ直ぐ走る。

 馬の上には鎧を着た一人の男性が乗っていた。あの鎧、どこかで見覚えがあるような…?


「…あっ!みんな、見て!」


 白馬はナラが落ちてくる丁度の位置で止まり、上に乗っている鎧の人はナラを抱くように両手でキャッチした。彼女を助けてくれたって事は、どうやら俺たちの敵ではなさそうだな。


「あの人、ナラ姉ちゃんを助けてくれたんだ!」

「そのようね。あっ、こっちに向かってくるみたいよ」


 白馬に乗っている人はナラを抱いたまま、俺たちのいる方へ近づいてくる。


「…ねえ、あの人ってシャルル王子じゃない?」

「おっ、本当だ!いいタイミングで来てくれたなオイ!」


 仲間が白馬に乗った人を見て嬉しそうに声を上げた。…え、シャルル?どうしてここに来たんだ??皆はあんなに喜んでいるけど、俺は何も知らないから置いてけぼりな気分。


「王子様、本当に来てくれたんだね!それにナラ姉ちゃんも助けてくれてありがとう!今のすっごくかっこよかったよ!」

「どういたしまして。…しかし、急にこの子があの建物から落ちてきた時は驚いたよ。何とか間に合って良かった」


 シャルルは馬から降りると、両腕で抱きかかえているナラをそっと地面に置く。ナラのお腹には殴られた跡があった。一体誰がこんな事を…?まさか神父の仕業か?


「ねえ、ナラちゃんは大丈夫なの?死んでないわよね?」

「――ああ、気を失っているだけで命に別状はないよ。しばらく経てば起きるだろう」


 ナラの左胸の箇所に触れながら彼はそう言った。…ふぅ、よかった。死んではいないみたいだ。

 よし、ナラがいつ起きてもすぐ動けるよう今のうちに回復させておこう。俺は彼女の体に手を触れ、ヒーリングを唱えた。


「…おや?誰かと思えば、君はナオトじゃないか!どうしてここへ?」


 シャルルが俺の事に気づき声をかけてきた。俺はシャルルが何故ここにいるのか逆に気になるんだけど、そんなの今はどうでもいいか。まずはこっちから説明しないとな。


「や、やあシャルル。俺がここにいる理由なんだけど――」

「…おい、ナオト!周りを見て見ろ!」


 俺が説明を始めようとした瞬間、突然アルベルトが声を上げた。周りを見るといつの間にかさっきのイレギュラー達がまた出現している。


「おいおい、さっきので終わりじゃなかったのか!?どんだけ湧いてくるんだよ!」

『――ふん、我々を侮っていては困るな。ロレンツォ様がいる限り、我々は何度でも蘇るのだ』


 神父の方を倒さないと、こいつらは何回でも復活するって訳か。くそっ、これじゃあ本当にキリがないぞ。早くあの建物に行きたいのに!


『例えお前達がどんなに強かろうと、数は我々の方が圧倒的に上。…ふふふ、それでもお前達は我々に挑むつもりか?』

「ああ、そうだ。私たちはお前のような悪をのさばらせる訳には行かない。それに、一つお前は勘違いをしている」

『勘違い…?それは一体何だ?』

「向こうを見てみろ」


 シャルルが後ろを振り返ると、向こうから馬が走ってくる音が聞こえてきた。しかし今度はその音がたくさん聞こえてくる。


『むっ、あいつらはまさか――!』

「そうだ。あそこにいるのは私の部下たち。お前のような悪と戦う為、私と共にここへ来たんだ」


 向こうからやって来たのは、馬に乗ったたくさんの兵士たちだった。その数は正確には分からないが、恐らく100人以上はいるだろう。


「凄いわ…!あの人達も一緒に戦ってくれるのね!」

「でもいいのか、王子?あんたは前に誰かが死ぬのは見たくないって言ってただろ?」

「その考えはもう捨てたよ。この世界を救うという意志があるならば、心を鬼にしてでも戦え。――父上は、迷っていた私にそう助言してくれたんだ」

「それで、以前までの考えを変えたって訳か」

「ああ。それに私の部下たちは、世界を救えるならばこの命を捧げても構わないと言っていた。彼らの覚悟を無駄にする訳には行かない」


 シャルルの部下たちも覚悟を決め、俺たちと共にイレギュラーと戦ってくれるようだ。だったら俺たちも尚更頑張らないとな。


『ぬうっ、人間の分際で我々に敵うとでも思っているのか!――行くぞ、人間共を一人残らず殺すのだ!!』


 イレギュラーが一斉にシャルルの部下たちがいる所へと一直線に突き進んでいく。それに対し兵士たちは剣を抜き、戦闘態勢に入った。

 ――人類とイレギュラー、二つの種族による激しい戦の始まりだ。


「すっげぇ…まるで戦争だぜ」

「ああ。だが、これは今までの戦争とは違う。この世界を支配するのはどちらか、その命運をかけた聖戦だ」


 彼の言う通り、この戦いにどちらかが勝利すればこの世界を支配する者が決まる。もしイレギュラー側が勝利すれば、この世界にいる全ての生物は死んでしまうか、または強制的にイレギュラーに変身されてしまうだろう。それだけは絶対に避けねばならない。


「私も彼らと共に、イレギュラーを討伐しに向かうよ。君たちは先にあそこの建物へ向かっててくれ。まだあの中で君たちの仲間が戦っているんだろう?」


 仲間…そういや、クリムがここにいないな。ナラと一緒にあの建物の中に入っていったんだろうか。だったら急いで助けに行かないと、クリムまでもがやられてしまうかもしれない。


「分かった、シャルル。俺たちも頑張るから、絶対にやられたりするなよ」

「ああ、約束だ。この戦い、絶対に勝利しよう」


 この戦いに勝つ事を約束し、シャルルは部下たちのいる所へ馬に乗って走った。イレギュラーはシャルルたちに任せておけばしばらくは大丈夫だろう。


「うしっ、さっさとクリムの奴を助けに行こうぜ!…あ、そういやナラはどうすんだ?まだ眠ったまんまだけどよ」

「それだったら、私がこの子を抱いていくわ。このまま放っておいたら可哀想だしね。――よっこらしょっと」


 フリントはナラを背負うと、そのまま立ち上がる。ナラは未だに意識を失っているままだ。…早く起きてくれるといいな。


「…うん、これでもう安心だね。じゃあ皆、早くクリム姉ちゃんを助けに行こ!」

「ああ、そして神父を倒そう!」


 俺たちはクリムを助けに、そして神父を止める為に建物の中へ入っていった。俺たちが来るまでに待っててくれよ…!

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