第九話「覚悟」
楽しんで頂ければ幸いです。
一週間が経った。今日も変わらず冒険者の仕事をしている。変わったことと言えば、剣を買ったことと、彼女を見かけなくなったことぐらいだな。さ、あともう少しで依頼達成だ。頑張ろう。
「――これで依頼は完了となります! こちらは報酬の一万二千円です」
「ありがとうございます」
報酬を懐にしまっていると、声を掛けられた。
「よぉ、坊主。相変わらず草ばっか採ってんのか」
この人は最近仲良くなった冒険者さんだ。薬草キノコの依頼を受け、冒険者ギルドの入口で彼女に絡まれたときに「反魔法のシルフィード」のことを教えてくれた人でもある。名前はガルド・ライザーと言うらしい。渋いおじさんだ。
「俺が出来るのなんて草の採取くらいですよ。魔物なんかと戦ったらすぐ殺されちゃいますよ」
「自分を過信しないのは才能だ。だからこそ勿体無い。次の依頼、魔物の討伐を受けてこい。俺も一緒に行ってやるから、弱い魔物くらいは討伐出来るようになれよ。怪我は絶対にしないよう守ってやるから」
やだ……このおじさんイケメン。俺が女だったら惚れちゃう! 惚れ惚れしちゃう! とはいえ、やっぱり怖いなぁ。でも、おじさんが守ってくれるらしいし、頑張ってみるか。
「――坊主! そうじゃねぇ! オイオイ! だから逃げるなって!」
「無理いいいいいいいいいい!」
今なにをしてるかって? ゴブリンから逃走中です。いや、無理無理。だって怖いもん。なんで少し前の俺は行けると思ったの? 無理に決まってんだろ……。あいつらの顔がまず怖い。それに動きの一つ一つが怖い。俺を殺しにきてるんだから当たり前だよね。むしろ怖くない方がおかしいよ……。
「坊主……。なんとかならねぇのかその根性無しは」
「無理! 無理ですよ! あんなのと戦う気が知れません!」
「そうは言っても……なぁ、坊主。お前好きな人が出来たことはあるか?」
「えっ? 何ですか唐突に。まぁ、そりゃ好きな人くらい出来たことはありますけど……」
「魔物の討伐ってのはな、出来るかどうかでその冒険者が一人前であるかどうかが決まる。何故だか分かるか」
「……それだけの力があるっていう証明になる……からかな?」
「半分正解だ。魔物を狩れるってのは力があることの証明。それと、「殺す覚悟」と「殺される覚悟」を持ったている証でもある。これが大事なんだ。この二つの覚悟を持つか持たないかで、本当に変わる。覚悟を持たない奴は誰も守れない。誰かを守ろうとしても殺される覚悟が出来てないから中途半端にしか庇えない。殺す覚悟が出来てないから相手に決定打を与えられない。そんな男に、お前はなりたいか?」
……そんなの、なりたくないに決まってるじゃないか。
「一つ、聞いていいですか?」
「何だ」
「ガルドさんは、どうやって魔物と対峙する恐怖を克服しましたか」
「それは人に聞くもんじゃない。どうやって恐怖に抗うかは自分で決めるんだ。他人の入れ知恵で抗うと、それを失ったとき、恐怖を取り戻し覚悟を失う。自分で考え、自分の経験から、恐怖を克服し、覚悟を得るんだ」
自分の経験から……
――キャアアアアア!
突然、森に悲鳴が響き渡った。俺とおじさんはアイコンタクトをとった後、悲鳴がした方向へ向かう。するとそこには、魔物に囲まれた彼女が居た。
さぁ、見せ場ですよぉー! 書きますよぉー!
次回の更新は明日の夜です。




