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第二十九話「初日の終わり」

 楽しんで頂ければ幸いです。

 「どうです? 順調ですか?」

 

 声を掛けるとクラスタは頭を上げ、ため息混じりに応答した。

 

 「いや、お手上げだよ。算術なんてやって来なかったからね」

 

 「では教えますね。一緒に頑張りましょう」

 

 「助かるよ」

 

 さて、教えるとは言ったものの、足し算引き算を教えるのか……何か無いかな……

 

 ……これでいいか。

 

 「まず(1)を説明しますね。じゃあ、この鉛筆を見て下さい。今、鉛筆は何本ありますか?」

 

 「え? 一本だけど……」

 

 「じゃあここに五本足しますね。鉛筆は何本ありますか?」

 

 「六本……て、ああ! そういう事か!」

 

 「(1)は解けましたね。(2)も容量は同じです。やってみて下さい」

 

 「ああ!」

 

 クラスタは目を輝かせながら問題を解いている。どうやらさっきまで出来なかった事が出来るのが楽しくて仕方がないようだ。

 

 「今後も、〇+〇=という形で書かれている問題は同じ考えで解いてみて下さい」

 

 「分かったよ。それで、(3)は-と書いてあるけれど、これはどうすれば良いんだい?」

 

 「また鉛筆を使って表しますね。ではまず、鉛筆は何本ありますか?」

 

 「七本だね」

 

 「では四本抜きます。今鉛筆は何本ありますか?」

 

 「三本……なるほど! -も理解出来たよ!」

 

 「良かったです。〇-〇=という形で表現されている問題は全て同じ考えで大丈夫です。出題されている問題は+と-のみなので、後は解けると思います。頑張って下さい」

 

 「ああ! どうもありがとう」

 

 クラスタは目を更に輝かせながら問題に取り掛かった。もう躓くことも無いだろう。さて、いつまでもクラスタの席に居座っても仕方が無いな。他の人にも教えに行こう。

 

 そんな感じで、一人、また一人と教えると、段々問題を理解出来ない生徒も居なくなっていった。

 

 ……しかし長いな。やっぱり非日常的な授業は楽しくて短く感じるけど慣れた授業は長く感じるなぁ。

 

 そんな事を考えながら手遊びだったりをして時間を潰していると……

 

 ――キーンコーンカーンコーン

 

 待ちに待った鐘が鳴った。

 

 「はい! 皆さん授業はおしまいです。よく協力出来ていた様で。満点です」

 

 そう言って先生は教室を出ていった。

 

 「シルフィード。後はもう帰るだけだよな?」

 

 「そうね。担任の先生から少し話を聞いて終わりらしいわ」

 

 「そっか。帰ったら疲れの取れるもの食べよう。今日はなんか疲れたからさあ」

 

 「フフ、そうね。そうしましょうか」

 

 ――ガラガラッ

 

 ……おっと、ガドー・ザルド先生が入ってきた。

 

 「おっしお前ら。まずは初日の授業お疲れ様。初日から問題を起こすような馬鹿が俺のクラスには居なかったようで嬉しいぞ。この後は下校になる。怪我の無いように気を付けて帰れよ」

 

 俺のクラスは……ってことは他のクラスには居たのか。怖っ。

 

 「さ、風人。帰りましょう」

 

 「だな。帰ろう」

 

 日の沈みきらない内にその日は宿に帰り、手早く夕食を済ませ、寝た。

 さて、そろそろテストとかぶっ込んで、思いっ切り日本チートしていきたいですね!

 ……まぁ、武道のテストはどうなるか分かりませんが。

 次回もお楽しみに。

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