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第二十八話「算術の授業②」

 楽しんで頂ければ幸いです

 小学校の、問題じゃないか……。

 

 教科書の問題を凝視する。そこに書かれた問題は……

 

 ①次の問題を解きなさい

 (1)1+5=

 (2)6+8=

 (3)7-4=

 (4)9-3=

  …………

  ………………


 のような、一桁の足し算、引き算の問題だった。

 

 周りから漏れる「難しい」の声。俺から見たら逆立ちしても間違えないような問題にそう評価が下るのが不思議でならない。

 

 ……いや?

 

 「シルフィード。習い事をしてたって言ってたよな」

 

 「ん? えぇ。そうよ」

 

 「習い事以外で、この学校のような学べる場所っていうのはある?」

 

 「いや、無いわよ。習い事をしてない者はこの学校で一から学ぶのよ」

 

 なるほど。そういう事か。この世界の人からすれば、ここが小学校なんだ。

 

 このレベルの問題が「難しい」と評価されるのも頷ける訳だ。

 

 「それでは皆さん。①〜③の問題全てを授業の終わりの鐘までに力を合わせて解いて下さい。解き方のヒントは一応教科書に書いてありますが、分かる者が居ればその者を頼りに解くように。では、始め」

 

 周りから、「この記号ってなんだっけ?」とか「これなんて数字?」とか「数ってどういう並びだっけ?」とか聞こえる。そもそも字自体が読めず、問題が理解出来ない奴も居るみたいだ。

 

 「風人はどう? 解けそう? 解けるようなら私は教えに行くけれど」

 

 「あぁ。大丈夫」

 

 そう言うとシルフィードは他の席まで教えに行った。俺もパッと解き、教えに行くことにした。

 

 最初に向かったのはサードス・カルトの所だ。魔術の授業で世話になったからな。

 

 「どうです? 解けてますか?」

 

 話しかけると、サードス・カルトは此方を向き

 

 「……まぁ、ボチボチってところだな。お前は……教えに来たってことはもう解けたのか。早いな」

 

 「僕の出身地でずっと前に習いまして」

 

 そう言うと、サードス・カルトは驚いて……そして納得したようだった。

 

 「ふむ……。お前は何処かいい所の坊ちゃんだったか。意外だな」

 

 一瞬間を置いた後、サードス・カルトはそう言った。いい所……つまり貴族なのが意外と言われるのはちょっと遺憾だが、違うので訂正する。

 

 「いえ、僕は坊ちゃんとかじゃありませんよ。僕の出身地では年に合わせて二〜四ステップの工程を踏んで学ぶんです」

 

 「ほう……坊ちゃんじゃないってことは、平民や貧民なんかでも学べるのか?」

 

 「そうですね。二ステップまでは富豪も貧民も強制で学びを受けなければいけません。貧民には、国からお金の援助が出るようになっているので、その中から必要な金を支払うようになっています」

 

 「そんな国があるのか。良い国じゃないか。卒業したら行ってみたいくらいだ」

 

 「いえ……今は帰れない……んです」 

 

 「……すまん。悪いことを聞いたな」

 

 少しバツが悪そうに俯いた後、サードス・カルトはそう言い、さらにもう一言付け加えた。

 

 「さて。お前もいつまでも俺に構っていては駄目だろう。他の奴に教えに行ってやれ」

 

 「はい。分かりました」

 

 俺はサードス・カルト席を立ち去った。彼の言う通り、教えなきゃいけない奴は沢山居るだろう。次は……クラスタの所にでも行ってみようかな。

 チート成分の欲しかった皆さん。お待たせしました!日本チート(?)です!

 次回もお楽しみに

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